1000~2000人に1人の存在7
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「すごーい」
中に入ると、ヨーロッパのお城を思わせる大きな吹き抜けが現れた。
目の前には、存在感たっぷりの螺旋階段がそびえている。
まるでヨーロッパ旅行でも来たかのようだと密かに目を輝かせる私に、クリフオジサンは女子用食堂や女子用大浴場などの施設を案内していく。
その後、沢山のドアが並ぶ長い廊下を進み、クリフオジサンが一つのドアの前で足を止めた。
「ここが君の部屋だ。5歳から個室が与えられているけど、一人で生活が難しい場合は世話係を付けることもできる。必要なら言ってくれ」
そう言うと、ポケットから黄土色で年季の入った鍵を取り出し、ドアを開けた。
クリフオジサンに続いて部屋に足を踏み入れる。
左手の奥側には簡易なベット、正面には大きな出窓、その右手には小さな勉強机が配置されている。
広さは、小さめのワンルームくらいだろうか?
前世で一人暮らしをしていた部屋よりは少し狭いけど、清潔感があって快適そうだ。
「寮は男子寮と女子寮で分かれてる。何歳であっても女子生徒は男子寮に入ることはできないし、その逆も同じだ。ちなみにトイレとシャワーはここ」
クリフオジサンは、入ってすぐ左手のドアを開け、小さなユニットバスを見せてくれた。
「俺からの説明は以上だ。ざっと一気に説明したけど、分からない事はないか?」
「さっき少し話に出たことなんですけど……もし、学園から出ようとしたら、どうなるんですか?」
「出ようとした程度なら軽い謹慎か、ちょっとした罰で済むことが多い。でも本当に出てしまったら……塔入りになってしまう」
「塔入り……?」
「魔力を持つ罪人がだけが入る牢屋のような所だよ。俺は行ったことはないけど、近くを通るだけで耳を塞ぎたくなるほどの呻き声が聞こえるらしいぜ。死にたくなるような酷い拷問を延々と受けさせられるとか、なんとか……」
その話を聞いて、思わず自分の二の腕を擦った。
明日にでもここから逃げ出そうと安易に考えていた事に、ゾッとした。
「ま、あんな別れ方したから両親に会いたいのは分かる。でも、ここから逃げ出そうなんて事は考えない方がいい。
まだ字は書けないだろうが、親に手紙なら書ける。絵でも書いて送ってやったらいい。そして頑張って卒業を目指せ」
励ますように笑顔を向けてくると、突然ポンと頭に手を置かれ、ビクっとしてしまう。
「俺はだいたい管理事務所にいる。だからもし気になる事があったら、遠慮なくいつでも聞きに来たらいい」
私はこれから、ここで何年も生活しないといけないんだ。
歩けるようになったら、すぐにでも復讐計画を立てる予定だったのに……その計画が、大きく狂ってしまった。
どうやら私は、今世も運が悪いようだ。
「……ありがとう。クリフオジサン」
「オジサンじゃない!お兄さんだ!」
腕を組んでプン!っと怒るフリをするクリフオジサンにフッと笑ってしまう。
でも魔法が使える世界なんだったら、バレないように脱出できる方法だってあるかもしれない。
今日、初めて笑みをこぼした私を見て、クリフオジサンは目を緩めてこう言った。
「ま、これからよろしくな。国立日本魔法学園へようこそ」
初めて小説家に初めてなろうに登録、投稿させて頂きました。
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