手紙の謎6
「え?どうして?」
「学園長とかの様子が、明らかに変だったから」
「隕石が落ちてきたからでしょ?」
「ううん。それにしては必要以上に隠したがってるように見えたし、冷静沈着な学園長がひどく慌ててたじゃない?」
「……確かに」
「修復は大変かもしれないけど。なんかそれだけじゃなさそうな……」
そんな話をしていると、気付けばアリスちゃんは今にも泣きそうな顔に変わっていて……
「怖いよぉ……隕石じゃないならなんなの!?またあんなのが落ちて来たらどうしよう……」
私は安心させるように、まだ少し小さい手を優しく握った。
「だ、大丈夫よ!あんなの、もう落ちてくるわけないよ!」
「でも……」
「ほら、あの学園長もいるんだし、今回のことがあったから、次はすっごく警戒するはずよ。だから怖がらないで、ね」
私は微笑んで、アリスちゃんの赤くなった頬にそっと手を添えた。
アリスちゃんを安心させるために言ったその言葉が、実はずっと胸騒ぎがしている自分自身への言い聞かせのようにも感じた。
…………
……
翌日、「現場検証の結果、あれは隕石でした。なので安心して学業に励むように」という内容の放送が流れた。
それから嘘みたいに、みんな平常の生活を取り戻している。
でも、私の心の中は不安でいっぱいだった。
それは、あぶり出しで出て来たメッセージのせいで、私が学園に不信感を抱き始めているからだ。
手紙の事を誰かに相談したい。
でも、そんな事をしたら、相談相手をただ不安にさせてしまうだけの結果になりそうで、言えない。
こんな時、ディオンが居ればなぁ……
「あー、カミヅキ講師に会いたい~」
ぽーっと天井を見上げ、ぽつりと呟いたメイの言葉に目をパチクリとさせる。
出た!最近のメイはずっとこんな調子だ。
そしてメイがディオンの話をするたびに、何故か気分が悪くなりそうになる。
「明後日来るでしょ!」
放課後、私の部屋に遊びに来たメイが、勉強机の椅子に座りながら口を膨らませる。
「前はほぼ毎日会えていたのになぁ!カミヅキ講師が恋しい……明後日とかまで待てないよぉー!」
やっぱりいい気分のしない話に、なんとか苦笑いを返す。
すると、講師から聞いたお知らせを思い出した。
「あっ、明後日じゃないよ。次会えるのは……1か月後らしいよ?」
「ええ~~!?なんで!?」
メイは慌てて立ち上がる。
「1か月間休みになったんだって」
「何その情報!知らないんだけど!」
メイは驚きのあまり立ち上がる。
「私もさっき終わりの会で聞いたとこだし。学園の予算を訓練場の修繕に使う関係で、休みになるんだって……」
「きー!!意味わかんない―!!」
悔しそうに怒りを露わにするメイは、ドスンと勢いよく座った。
ディオンに会える日を指折り数えて楽しみにしていたメイにとって、これはかなり辛い話なんだろう。
私はそんなメイを横目に見ながら、彼女が深いため息をつくのを聞いていた。
「私…………、やっぱカミヅキ講師が好きかも」
メイがポツリと呟く。
「……え?」




