4カ月遅れの誕生日12
「ん。魔力が減ったからだろ」
黒くなった前髪を摘まんで言うディオンの言葉に、授業で習った事を思い出す。
「あっ……、そっか、そうだよね。魔力の影響で髪とかが明るく見えてるだけ、だもんね」
今見えているのはディオンの髪色は実際の色ではない。私の髪の色もそう。
そうは分かっていても、黒髪のディオンなんて想像すると違和感しかない。
「ディオン」
「ん」
「今日はありがとう」
「んー」
私の勘違いかもしれないけど、私の言葉を聞いた後にそっぽ向いたディオンは、どこか照れているように見えた。
「本っ当に、素敵な誕生日になったよ!」
「あー、良かったな」
ダルそうに言われる。
「うん。ディオンのお陰だよ」
へへっ、と満面の笑みを向けても、ディオンは口を歪めるだけで視線は戻ってこない。
それどころか、「ウザっ」と言われてしまう。
いつもならウザイなんて言われるとムカついていたのに、今は全くムカつかない。
だって――ディオンの照れ隠しに見えたから。
「ふふっ」
「なに笑ってんだよ」
時々感じる事があった。
ディオンは人付き合いが苦手なだけなのかもしれないって。
そう思うと、サイコパスで怖くて顔も見たくなかったはずのディオンが、少しだけ可愛く見えてくるから不思議だ。
「なんでもなーい」
「何ニヤニヤしてんだよ。殺すぞ」
そう言って頬を強く掴まれる。
「ひぇ……」




