4カ月遅れの誕生日9
そう言って手を引かれる。
繋がれた手に視線を落とすと、心臓がだんだんドキドキしてくるのが分かる。
その手に意識が集中して……
なんだかむずがゆいような感覚がする……
でも、それはあっという間に無くなって行った――
甘い匂いに釣られて綿菓子を食べ、呼び込みに誘われるまま、やったことも見たこともないゲームで遊んだ。
香ばしい醤油の香りに惹かれてイカ焼きを頬張っていたら、次の瞬間、ディオンに盆踊りのステージに投げ入れられ、見様見真似に踊ってみたら笑われる。
そんなハプニングも含め、意識どころか、何もかも忘れてしまうほど楽しすぎる時間は驚くほど早く過ぎていった。
「痛っ……」
突然足元に痛みが走り、下駄に手を伸ばそうとした時、ディオンが立ち止まって私の足元を見た。
「どうした?」
「多分……靴擦れかも?」
そう言うと、ディオンは周りの人目を全く気にせず、いきなり私を抱き上げた。
一瞬で戻ってくる意識。
顔を赤くする私を、そのまま人気の少ないベンチに降ろた。
「いつからだ?」
「えっと……」
どう答えようか迷っている間に、ディオンはすっと私の前にしゃがみ込んで、足元をじっと見つめた。
「これ、結構前からだな」
図星を突かれてドキっとする。
目を泳がす私を見たディオンは小さくため息をつく。
「……馬鹿だな」
そう呟いたディオンが私の足元に手をかざすと、ふわりと暖かい光が足先を包み込んだ。
傷みは驚くほどにすぐ消えた。
「ありがとう……」
空では置いてけぼりになったけど、今日のディオンは優しい。
ずっと、ディオンとこんな感じで居れたら幸せなのにな……
そう思った時、ふと呪いの事を思い出してしまった。
呪いの事を初めて聞いた時、ディオンは『それはお前が……』と言った。
だから私に関する呪いなんだろうと思う。
展望台で泣いてしまった日の翌日、ディオンは私を避けようとしていたように見えた。
思い返すと、あの日からディオンの態度にムラがあるように思う。
優しいと思えば、急に無視してきたり……機嫌が戻ったと思えば、私が少し触れただけで不機嫌になることもあった。
という事は……もしかして、あの頃に呪いをかけられたのかもしれない。
一体どんな呪いなんだろう……?
私に出来ることはないのかな?
引きこもりを余儀なくされた時期に聞いてみたけれど、ディオンは何も教えてくれなかった。
このままずっと教えてくれないのかな?
そんな事を考えながら隣に座ったディオンを見ると、バチっと目が合って、つい逸らしてしまう。
「んだよ」
ディオンはすぐに、私の顎を掴んで強制的に向き戻し、覗き込んで来た。




