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【大賞受賞作】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?~あなたがくれた幸せの呪い~  作者: 花澄そう


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4カ月遅れの誕生日8


…………


……


無事に明かりの元に降り立つことが出来た私がホッとしたのもつかの間、鼓膜こまくにドンと大きな音が飛び込んできた。


驚いて顔を上げると、目の前にはグラウンドのような広場が広がり、そこでは和服を着た人たちが大太鼓を力強く叩いていた。


その太鼓の周りには、リズムに合わせて楽しそうに踊る人たちが円を描いている。

誰もが笑顔で、楽しげな雰囲気に包まれていて、見ているだけで私の胸の中にもワクワクとした気持ちが膨らんでいく。


さらに、辺りには赤い提灯ちょうちんが所々に飾られていて、屋台や夜店がずらりと並んでいた。

香ばしい食べ物の匂いや、甘い香りが風に乗って漂い、私の鼻先まで届いてくる。


頭にお面をつけた人や、浴衣姿の人々が通りを行き交い、レトロでおもむきのある雰囲気に、私はますます引き込まれていった。



「あー。建国祭か」

「建国祭……?」

前世では建国記念日はあったけど、建国祭なんてあったっけ?


りんごあめをかじりながら、綺麗な浴衣を着て通り過ぎていく人たちを興味津々な目で見ていると、なぜか私は残念そうな顔を向けられた。

頭の上にハテナマークが浮かばせながら、自分の姿をそっと確認してみる。


その瞬間、私は思いっきりその場にしゃがみ込み、膝を抱えた。


「ひゃっ」


そんな私に、ディオンは怪訝けげんな顔をして見下ろしてくる。


「何やってんだ?」



「ディオン……わ、私、パジャマのままなんだけど!」

「は?今更いまさらか?」


確かに、ディオンからすると今更だろう。

スカイツリーの時だって、ずっと学園のパジャマだったんだから。

でもどうしてか、私は今の今まで、自分の格好の事を忘れていたようだ。


「恥ずかしいから着替えに戻りたい。でも、その後もう1回出てこれないよね?」


「なんでそんな面倒な事をしないといけないんだよ」

そう言われて、ガックリと肩を落とすして泣きそうな気持ちになる。


「そうだよね……」


「そんな事しなくても、こうしたらいいだけだろ?」

と言った瞬間、目の前のディオンはなぜか黒を基調とした大人っぽい浴衣姿になっていて、私は思わず目をパチクリさせた。



「なんで……ディオンが浴衣に?」



その完璧な容姿に、その浴衣姿はズルいくらい似合いすぎていて、目のやり場に困る。しかも少し胸元が見えてるし……


「お前に合わせたんだろ。てか立て」

「え?私……?」

手を引かれて無理やり立たされた私は、すぐに自分の姿を確認する。



次の瞬間、私は大きく口を開けた。

なぜなら、いつの間にか青い花柄が映える華やかな浴衣を着てたからだ。



「かっ……可愛っ!!何これ!これ、まさかディオンが!?」


目を見開き驚いていると、視界の端に何かがチラリと映った。

なんなんだろうと、手で確かめると耳元でチリンと可愛らしい鈴の音が鳴った。

どうやら、髪飾りのようなものも付いているようだ。


そのことに驚きながら視線を足元に移すと、そこには下駄を履いている自分の足があった。



下駄げただぁ!凄い、凄い!初めて履いた!」

初めて履く下駄に興奮して、トントンと地面を踏み、思わずくるりと回った。

そでをつまみ、浴衣の感触を確かめながら、喜びがこみ上げてくる。



魔法で着替えなんて出来るんだ。

あれ?じゃあ、前に私が展望台で泣いて寝てしまって、起きたらパジャマだったあの日も、こんな感じで着せ替えてくれたのかな?


危なかった……

聞かなくてよかった……

無駄に、貧乳なのに自信過剰だとか言われるところだったよ。



「こんなので騒いで、子供かよ」

普段ならムッと来るところだけど、気分が良すぎた私は、思い切って開き直ることにした。


「子供だもん」

すると、ディオンは少し驚いたように片眉を上げた。


「ディオンが言ったんでしょ?100歳位までは子供だって!」

腰に手を当ててドヤと覗き込むと、少し不機嫌になったディオンが私の手を引っ張った。


「チッ。ほら、さっさと行くぞ」

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