4カ月遅れの誕生日7
これくらいの距離……?
浮けるようになったばかりの私に、あんな数キロ先まで一人で移動しろだなんて……
米粒よりも小さくなったディオンの姿に、怒りよりも焦りが湧いてくる。
でも……なんとかして追いかけないと!
迷子になっちゃう!
「浮くのがイメージなら進むのもイメージ?……だよね?」
そう呟きながら、必死に進むイメージを頭に描いてみる。
すると、体がユラユラと揺れ始めた。けれど、前には全然進まない。
ふと足元に視線を落とすと、すくむほどの高さが目に飛び込んできた。
万が一、何かが間違って落下し始めたらどうしよう、という恐怖が襲う。
もうディオンの姿はどこにも見当たらない。
「酷い……。やっぱ鬼畜講師だ」
涙で滲む視界の中、そう呟いた時、真後ろから声が飛んできた。
「誰が鬼畜講師だ?」
驚いて首だけ振り返ると、そこには不機嫌そうな顔をしたディオンがいた。
「にしても魔力が高けぇクセに下手くそだな。センスがねぇんだな」
ライオンを描こうとしてあの猫だったしな、と言われてぐうの音も出ない。
「うっ……」
「ちゃんと進みたい方向に向かうイメージを持て」
「そんなのやったよ」
「いいや。お前が持つイメージは中途半端なんだよ」
私が持つイメージなんて、どうやってディオンに分かるのよ!
すると、突然ディオンは私と顔を並べた。
お互いの耳が触れるほどの至近距離に、心臓が高鳴る。
するとディオンは、私がさっき指した明るい場所を指差した。
「『飛ぶ』事だけをイメージするんじゃなくて、『どこ』に向かって『飛ぶ』のかをしっかり明確にイメージしろ」
どこに向かって、飛ぶのか……
なるほど。ようはイメージは具体的にっていう事ことね。
「わかったなら、やれ」
「う、うん」
私は、あの賑やかで明かりの集まる場所をじっと見つめる。
そして目を閉じて、そこに向かうイメージした。
すると……
「す、進んでる!!」
超ゆっくりだけど!
「見てみて!ディオン!ちゃんと進んでるよ!」
嬉しくなって言った言葉に、ディオンは「当たり前だ」と返してくる。
ちょっと……っ!!
『凄いな』とか『おめでとう』とかないの!?と心の中で盛大な文句を言ってのけながら振り返る。
すると、目に映ったディオンの姿に、そんな文句も一瞬で消えた。
言葉こそ悪いけど、ディオンの目は、その言葉にそぐわない位にとても温かくて、まるで私を見守ってくれているかのように見えたから。
……そんな目をされると、調子が狂う。
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