4カ月遅れの誕生日3
『俺はお前に恨みはないが……今すぐ死んでもらう』
そんな台詞と共に、ディオンの顔に返り血が飛び散る。
残虐な光景が浮かび上がって、ハッと我に返る。
いやいや、私はなんてことを考えているの!?というか、今の状況だと犯人の元に行くことすらできないのに!
慌てて頭を振り、そのイメージをかき消した。
気を取り直して顎に手を当てて考え込む。
「欲しいもの、やりたい事……」
次に浮かんだのは、『両親に会わせてほしい』という望みだった。
でも、それもすぐに却下する。
もし何か問題が起きてバレたら、両親にまで迷惑がかかるかもしれないから。
こういう事は、関わる人数が多いほどリスクも高くなる。
それに、こんな気持ちでどんな顔をして会っていいのかも分からない……
その望みは諦めて他の事を考えようとすると、またもや『復讐』が頭に浮かんでくる。
復讐は、生まれ変わった私の使命みたいなものだから、仕方ないのかもしれない。
でも、考えても同じ結論に行き着いてしまう。
犯人の元にいけるようにならないと話にならないんだよね……
……あっ!そうだ!
「決まった!」
「なんだ?」
「私……もう1回、魔書資料室に入りたい!」
私の言葉を聞いたディオンは、豆鉄砲を食らったような顔に変わる。
「は?マジで言ってんのか?」
まぁ、そうなるよね。
私の事情を知らない人からすると、『なんでも好きな願いを言え』なんて言われて、『資料室に入りたい』って言い出すなんて、ある意味変人の発言だろう。
もし前世の記憶がなかったら、私はなんて答えたんだろうか。
「うん、マジだよ!」
「他にいくらでもあるだろ?綺麗な服が欲しいとか、ネズミーランド行きたいとか」
口を歪めて言ったディオンの言葉に、思わず目をパチクリさせてしまう。
「……へ?今、なんて?」
「だーかーら!服が欲しいとかネズミーランドに行きたいとか……うわっ!」
ディオンが言い終わるより先に、私は勢いよくベッドから飛び降りてディオンの腕を思いっきり掴んだ。
「そ、それって、もしかして、私がどこか行きたいって行ったら今すぐ連れてってくれるって事!?」
私は、壁側に立つディオンを挟み込むように近付く。
「卒業してからの話じゃなくて?」
信じられない気持ちで、至近距離のディオンの顔を覗き込むように見上げる。
「あっ……ああ。そのつもりだけど……」
私はディオンのその言葉に、目を大きくした。
だって、その発言は、私をこの学園から一時的であっても出させてくれるという意味だからだ。
「ってか……近けぇな」
そう言われて気付くと、私はディオンと完全に体が密着していた。
慌てて離れようとした瞬間、ディオンは顎で何処かを差した。
「また、俺の忠告忘れたのかよ。そこで思い出させてやろうか?」
差した方向を辿るように、恐る恐る首を振る。
すると、私のベッドにぶつかって、ぶわっと体が熱くなるのを感じた。
「で、一生忘れれないくらいに、その体に刻んでやろうか?」
ディオンは背中に手を回し、私の体のラインに沿って腰まで手を伝うと、体がビクっと震えた。




