4カ月遅れの誕生日2
初めは、人を取り巻く靄が何なのか分からなかった。
お見舞いに来てくれていたメイに聞いても、『何言ってるの?』と首を傾げられただけだった。
だから、これが魔力だと気付くまで、幻覚でも見ているんじゃないかと不安に思った。
ディオンの魔力は驚くほど強大で、世に名を馳せる学園長よりも桁違いに多かった。
でも、ディオンはそれを明らかに隠している。
だから、魔力が見えることをディオンに言わない方がいいだろうと思っている。
本当は、安定しない私の魔力を密かに整えてくれていたことも知っているから、その事についてもちゃんとお礼を言いたいのに……
突然、ディオンに眉間を突かれて「ぎゃ!」という驚きの声が出てしまう。
「何すんのよ!」
突かれた場所を手で押さえながら叫ぶ。
「何さっきから険しい顔してんだよ」
「え……っ、そんな顔してた?」
「してた」
この際、実は魔力が見えてるって、バラしちゃう?
でも……絶対嫌がりそうだよね。
隠してた事にも怒りそうだし……
「……人生って難しいし、分からない事だらけだなぁ~って思って」
「は?なんだそれ」
謎だらけで気持ち悪いって言ってたディオンの気持ちが、今なら少し分かる気がする。
「なに人生語ってんだよ。まだ17年しか生きてねぇのに」
「……17……?」
その数字に違和感を感じて、目をパチクリとさせる。
「あっ!そっか!私もう17歳になってるんだね!」
寝込んでいる間に誕生日を超えてしまったんだ。
「……私もう17歳なんだ……」
この世界に来て17年も経って、結局なんの復讐の進歩もしていなくてガックリと肩を落とす。
すると、ディオンがため息を落としてきた。
「……しゃーねぇ。誕生日を祝ってやる」
突然出て来たディオンの言葉に、数秒考えてから首を傾げる。
「誕生日って……誰の?」
「お前、俺の話聞いてたか?」
「聞いてたよ。だから誰の誕生日かって聞いたんだよ」
「お前に決まってるだろ。話の流れを読め!」
「えっ……」
ディオンは、私の誕生日を勘違いしてるんだろうか。
「私の誕生日は12月だよ?そして今は4月で……」
「俺を馬鹿にしてんのか?」
私の誕生日月を伝えたのに機嫌が悪くなるディオンに、余計分からなくなる。
「こんな事になったのは俺の読みが甘かったせいだ。そのせいでお前の誕生日をすっ飛ばしてしまった。だから、せめてもの償いをしてやるって言ってんだよ。分かるだろ!」
『償い』なんて言葉が、ディオンの口から出てくること自体に物凄い違和感を覚えた。
そんな中、続くディオンの言葉に耳を傾けた。
「やりたいことや欲しい物、なんでも言え。俺ならだいたいの事は叶えてやれる」
なんでも……
叶えてくれる……?
そう思った瞬時に、『復讐』という文字が大きく浮かんできた。




