不安定な魔力13
知りたくなかった事実に、今はまだしっかりと向き合うのは難しいと感じた私は、いったん心に頑丈な蓋をした。
その時、じっと私の様子を見守るディオンと再び目が合った。
肘置きに肘をついて頬杖をつくディオンを見て、さっきの言葉が脳裏に浮かび上がった。
『そのデけぇ目は何を見るためについてんだ?
俺と違ってお前の事を必要としてる奴は五万といるだろうが。
その証拠にみんな待ってんだよ。お前が戻ってくる日を』
ディオンの言う事は間違いなんかじゃなかった。
私は感謝の気持ちを込めて満面の笑顔を送る。
すると、ディオンの口角がゆっくりと上がり、目を優しく細めた。
その瞬間、息が止まった。
……っ!!
初めて見た、ディオンが微笑む姿。
それは恐ろしいほどに美しくて、思わず見とれてしまった。
出窓から差し込む温かい日差しも相まって、余計に綺麗に見えたのかもしれない。
こんな、全てを持っていかれそうな程に魅力的な笑みを浮かべている人がすぐそこにいるのに、きっと私以外の誰も気付いていない。
でも……
その事実に、なぜかとてもホッとしてしまった。
私が倒れてしまった事で、沢山の人に心配をかけてしまった。
そのことを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
でも、今回の出来事のおかげで気づけたことがある。
私には、こんなにも心配をしてくれる友人がいるんだ、ということ。
そう気づけたことで、私は少しだけ強くなれた気がした。
そして――
ディオンが私を助けに来てくれたこと。
それが、本当に嬉しかった。




