不安定な魔力12
「シエルちゃん。この男の言う事は嘘だから耳を貸さなくていいよ。誰がどう見ても僕の方がシエルちゃんの心配していたんだから」
「何言うてんねん!アホか!俺の方が心配してたっちゅーに!この二重人格野郎が、適当なこと言うなや!」
「聞き捨てならないな。どのあたりが二重人格か教えてもらおうか?」
「は?お前自分で分かってへんかったんかい!さっさと自覚せぇ!」
いがみ合うアランとローレンを見て、キョトンとしてしまう私にメイが言う。
「あの二人、シエルが眠ってる間にシエルの事でモメたりして、結局仲良くなったみたいでさ……」
まだ話し終わってないのにアランとローレンが間髪入れずに
「仲良くなって無い!」
と声を揃えてくるから、思わず吹き出してしまう。
「ふふ……なんだかおかしい……」
私の顔を見たアランは、後頭部を掻いて困ったように苦笑いを浮かべた。
「シエル。だからね、こういう時は『ごめん』じゃなくて『ありがとう』って言うんだよ」
その言葉を聞いて、確かにそうだと思った。
「……みんな」
そう言うと、男性陣がピタっと止まってこちらを向く。
「本当に私の事を心配してくれて、本当にありがとう……」
微笑みながら言うと、メイとルイーゼやクラスメイトの女子達が思いっきり抱き着いて来た。
「そうだよ!すっごく心配したんだから!シエル、おかえり!」
「うん、ただいま!」
その時、窓から風が吹いてフワリと白に近い金色の筋が目の前に現れた。
その筋に焦点を合わせると、気を失う前に見た、あの光り輝く筋のようなものがあった。
抱きしめられながら片手でそれを掴むと、地肌が引っ張られる感覚が走った。
その瞬間、脳裏に気を失う前に見た自分の姿が浮かんでくると同時に、授業で習ったことを思い出した。
『色味は属性によるのでまちまちですが、だいたいの魔法使いは、魔力が高ければ高いほど髪色や目の色は明るい色になります。
それは、魔力が光を吸収しやすい性質というのもありますが、魔力は特に黒の色素に反応しやすく、NIHON人は特に見た目に変化が現れやすく……』
……やっぱり、お父さんがくれたお守りは魔道具だったんだ。
この髪色と、体感でも分かる程に溢れる魔力。
それが何よりの証拠だ。




