不安定な魔力7
「どうしよう……」
「……が、そいつをシエルから離せば死にはしないと思う」
「え!?離す……!?」
「ああ」
「ってどれくらいですか?」
「明確な距離とかは分からない。でも出来る限り離した方がいい。学園内の建物で言うと……」
顎に手を添えて園内図を思い浮かべる。
「……男子寮か?」
俺がポツリと呟いた言葉を聞きとったメイは、
「男子寮ですね!分かりました!ありがとうございます!すぐに連れて行きます!」
と頭を下げて、飛ぶようにこの部屋から出て行った。
あんな酷い状態で、学園内で大丈夫だろうか。
「シエルがどれだけ悲しむか……
……か…………」
そっと自分の前髪をかきあげ、ため息をついて再びロッキングチェアに背を預ける。
その時――シエルの口が微かに動いた気がした。
俺は慌てて立ち上がる。
「シエル!?」
するとその時、薄く口が開いて消えそうな声が鼓膜に飛び込んで来た。
「ママ…………パ……パ……」
突然シエルの目元から滲み出して来た涙が一瞬で水たまりを作って、溢れた涙がスッと線を描くように横に流れた。
その瞬間、俺の中である推測が浮かんだ。
「……まさか、目を覚まさねぇのって……」
…………
……
「そのネックレスは、お前を守るためなんかじゃなかった。お前を、苦しめる為に付けたのさ」
「そんな年まで信じてつけていただたんて、なんて馬鹿なの」
「あんたなんて産まなければよかった。本当に人生の汚点よ」
「愛?なにそれ、そんなの、あんたに与えた覚えは一度もないわ」
「……お前なんて、一度も愛した事なんて無い……」
私を本気で愛してくれていると思っていた両親からの冷たい言葉の数々。
裏切られて、心は驚くほどに凍り付いていく。
ズタズタに心を切り裂かれた私は、真っ暗な中で膝を抱えてしゃがみ込んで、動けない。
この場所には何もない。
ここは、一方的に私がどれだけ駄目な人間で、どれほど私が愛される資格がないのかを叩きこまれる、断罪の場のよう。
心が……滅入る。
……疲れた……
生きるという事に……
「もう……生きていたくない」
耳を塞ぎ、頭を抱え込んだ。
「私は、なんの為に生きているの?……愛される事も、誰にも必要とされていない私なんて……生きる価値なんてない……。なら……いっそのこと、死んでしまいたい……」
震える声でつぶやき、涙が頬を伝う。
すると――私と両親しかいないはずのこの場に、突然、知らない声が響いた。
「こんな所にいたのかよ」
驚いて辺りを見回しても誰の姿も見えない。そう思った瞬間、空から突然、美しい男性が現れた。
なんとなく見覚えのあるその男性を見上げると、彼は私を見下ろして、馬鹿にするように口元を歪めた。
「プッ。なんだよ、その恰好」
「……誰?」
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