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不安定な魔力6


音のした方を見ると、ラブがドングリの欠片かけららしきものを吐き出して、倒れ込んでいる姿が目に映った。


「ど、どうしたの!?ラブ!」

慌ててラブの身を起こすメイ。

でも、ラブはグッタリして力が入っていない様子。



こいつ、前から思っていたけど、明らかに生命力が弱まってるな。


……原因は多分……



「こいつ、いつから調子が悪いんだ?」

「シエルが目を覚まさなくなった時にはもう悪くて……。でも最初はシエルが心配だからだと思っていたんだけど……」


やっぱり。


「……保健室で診せても原因は分からないって……」

「まぁ、このままだと死ぬだろうな」

「え!?死んじゃうんですか!?」

「多分な」


死ぬと言うのは、多少の語弊がある。

でも、詳しく知らない奴に話すには、そう言った方が分かりやすいだろう。


召喚獣はもともと魔力で出来た生き物。

それが自然に帰るだけだ。


魔法で熊野郎が吐いたものを片付けながらそんな事を考えていると、メイは泣きそうな顔でラブを抱きしめる。


「どうしよう……。目を覚ました時、ラブが死んだなんてシエルが聞いたら……どれだけ悲しむか……」

震える声で言ったメイの言葉が、突然、俺の胸に刺さった。



『シエルがどれだけ悲しむか……』



目覚めた時、熊野郎を失ったと知ったシエルはどんな顔をするだろう。

また、あのしみったれた顔をして、泣きはらすんだろうか。


そんな様子を想像するだけで、胸の奥がしぼり取られるような痛みを感じた。



最近思う。


俺は――

()()()()()んじゃないかと。



そう仮定すると、こんな訳の分からない感情の乱れも意外とすんなりと納得できる。


転校生と盛っていたシエルを見た時の苛立いらだちや、泣きはらしたシエルをここに運んで来た時の、理解不能な自分の行動さえも……



いつか、このくだらねぇ呪いを掛けた奴を見つけたら――


ただじゃおかねぇ!



呪いかけた奴の思惑おもわく通りに動くのはしゃくさわるが、これまでのことを振り返ると、従わざるを得ないんだろう。

どうせ、強制的に意向通りに動かされるだろうから。



「熊野郎がこんな調子なのは……多分、シエルの魔力が安定しないからだ」

「魔力が、安定しない?」


「ああ。普通、魔力は心臓あたりを中心に落ち着いた状態でとどまっているものだ。なのに今のシエルは、自分の体の中に魔力を抑え込む力もコントロールも利いていない状態で、渦巻うずまいている。まるで本格的な嵐状態だ」

メイは、俺の言葉にゴクリとのどを鳴らす。


「ラブはシエルの魔力で生まれた。だから主人の不安定な魔力に当てられると体がおかしくなるのは当たり前だ」

俺は面倒くさいと思いながら、ため息をついて続ける。


「だからこのままだと、死ぬ可能性が高い」

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