不安定な魔力2
視線の先には、キリッとした端正な顔立ちの男性と、圧倒的な美貌を誇る女性が肩を並べて歩いてくる。
その2人は、遠くからでもわかるほどの存在感とオーラに満ちていて、まるでドラマのワンシーンのような美しさで、私は思わず息を呑んだ。
2人は建物の前に待機していた大きなリムジンに乗り込んでいく。
受付嬢たちは、ほっとした表情で口々に感嘆の声を漏らした。
「はぁー、あのお二人を間近で見られるなんて、今日はついてるわね」
「ほんとに……どちらもあの若さで、次々プロジェクトを成功させてるっていうし」
「奥さんの方もバリバリ仕事が出来るらしいわよね。美男美女でお仕事もできて……まさに理想のご夫婦よね」
彼女たちの話を聞きながら、私は改めてリムジンの中で親しげに話す2人に目を向けた。
まるで、本当に心が通じ合っているようなその姿が、なんだか眩しくて羨ましく思えた。
私も、結婚したらあんなふうに……
……なれるのかな……?
なんだか、なれないような気がする。
そもそも私は婚約者の事をあまり知らない。
遊ぶ時間も与えられず、学校もまともに行かせてもらえなかった私は、この年になっても男女の経験はないし、よく分からない。
ああ、これがマリッジブルーというやつなのかな?
私は頭を抱えて溜息をついた。
その日の午後は、親の電話のせいで全然仕事に集中できなかった。
そして今日もサービス残業。
さすがブラック企業。
でも、不況の時代になんの取り柄もない中卒の私を拾ってくれたんだ。
だからブラックだとか文句は言ってられない。給料だけは悪くないし。
でも、せめて高校を出ていたら……もう少し選択肢があったのかもしれない。
そうと思うと、やっぱり両親を恨まずにはいられない。
時計を見ると、終電に間に合う時間を指していた。
「今日は帰れる……」
その嬉しさがこみ上げた瞬間、頭の中にまた、もう思い出したくもない両親との会話が巡り始める。
やっぱり、いくら考えてもおかしいよね。
私のことなんて、ずっとお金を稼ぐサンドバック兼家政婦くらいにしか思っていなかったはずなのに。
どうしてあそこまで結婚式への参列に執着しているんだろう?
それに、参列者の数なんて聞いて……
参列者は多い方らしいけど、そのほとんどは婚約者側の人たちだ。
そういえば、両親は私に一切お金をかけてこなかったけど、ご祝儀なんて持って来るつもりなのか、な……………………
あっ!
まさか……っ!!
ご祝儀狙い!!??
絶対そうだ!
それしか考えられない!
ど、どうしよう……っ!
私だけのご祝儀じゃないのに!
もし両親が貰っていくって聞かなかったら……
いや、この際半分あげて帰ってもらう?手切れ金だと思えば安いような……
でも半分で許してくれなかったら……
ああ!もうどうしていいのか分からない!
婚約者であるあの人は、そんな私の親を見てどう思うんだろう。
親と縁を切ってるっていう話は伝えてるけど……詳しく話した事はない。
友人の紹介で知り合った一回り上の彼。
正直、何度かしか顔を合わせてないけど、世間を知らず、どこに行っても右も左も分からない私を『幸せにしたい』と言ってくれた唯一の人。
だから絶対に迷惑なんてかけたくないのに。
はぁー。
きっと、こんな状態で縁が切れてるなんて言えなかったんだ。
そこが間違いだったんだ。
じゃあ、私はいま、何のために身を粉にして働いているんだろうか。
普通の家に生まれたかった……
親ガチャ運が悪すぎだよ……
キリキリと痛む胃を押さえながら会社の建物を出ると、まるで待っていたかのように声をかけられた。
「やっと終わったか。どんだけ働くんだよ」
振り返ると、大理石の壁にもたれかかっている、とんでもなく美しい美男子が目に飛び込んで来た。
長めの前髪のショートカットで、背も高く、その姿はまるでテレビから抜け出たイケメン俳優のよう。
初めて見た時は、なぜか女の子みたいに髪が長かったけど、今はすっかり短くなっている。
この人とは、数日前に出会ったばかりだ。
帰り道の公園で、この人が倒れていたこの彼を、偶然介抱しただけなんだけど……
今日もいたんだ。
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