ついに進級試験17
そしてディオンは、手にしていたネックレスを見せつけるようにして、私が最も聞きたくなかった言葉を放った。
「お前は、やっぱりこの魔道具のせいで……ずっと魔力を封じ込められていたんだ」
「……っ!!」
「外しただけでその姿になったという事が、なによりの証拠だ。 やっぱりこれは、塔で魔法封印をするのと同じ、闇魔法で作られたもので間違いないだろうな」
言葉が、私の心に突き刺さる。
慌てて耳を塞いだものの、もう遅い。
「や、やだ!やめて!き、聞きたくない……っ!!」
私の手は大きく震えている。
飲み込むことの出来ない現実を突きつけられ、消えたいと思うほどの絶望感が押し寄せる。
「嘘よ……そんなの、嘘だわ!!」
ずっと不安だった。
両親が笑いかけてくれた記憶が、遠い昔のことになればなるほど、その不安は強くなっていった。
友達が誕生日を迎えるたびに、心の奥で羨ましくて、悲しい気持ちが膨らんだ。
入っているわけないのに、毎年誕生日になると学園口座を確認して、肩を落とした。
たった4歳の私に、誰かの命を犠牲にして作られた魔道具をつけさせ、『絶対に外すな』と言った両親。
そんなのに愛があるはずがない。
愛があれば、そんな恐ろしい物を付けさせるはずない。
私を愛してくれる人なんて、どこにもいないの……?
「うっ……」
その時、さっきまで感じていた体の芯の熱が、まるで炎が燃え広がるかのように一気に強まった。
胸の奥深くから、波打つように力が湧き上がり、息が詰まるほどの圧力を感じる。
「はぁ……はぁ……」
「来たか。くっ……」
ディオンの声が、意識が朦朧とする中、微かに耳に入ってくる。
冷や汗が額を伝い、薄く目を開けると、ディオンが何かの魔法をかけているように見えた。
何をしているのかなんて聞く余裕もない。
今はただ、この溢れ出しそうな力を必死で抑えることに精一杯だった。
「嘘だろ……こんなっ!!」
ディオンの顔がだんだん青ざめていく様子が見える。
体中の細胞が活性化し、エネルギーが体の内側から破裂しそうな感覚に、ついに耐えきれず叫び声が口を突いて出た。
「あぁっ……!」
その瞬間、突然、立っていられないほどの強烈な眩暈に襲われる。
「えっ、おい!」
ディオンの声が遠く響き、私の視界は一瞬で真っ暗に包まれた。
その後、ディオンが私の名前を呼ぶ声が、どこか遠くからぼんやりと聞こえてくる。
その声に、なぜか妙な既視感を覚えた。
この声……どこかで……?
でも、記憶の中からその声を探し当てるより先に、私の意識がプツっと消えてしまった。
…………
……
「結婚なんてしてみろ。すぐにお前をぶっ殺してやるからな」
なんだっけ……
遠い昔に聞いた台詞が、突然頭の中に浮かんできた。




