ついに進級試験16
しかも胸の先端なんて、お情け程度の布でかろうじて隠れている状態だ。
「クッ。まさか忘れてたのかよ?相変わらず馬鹿だな」
ディオンはネックレスを持っていない方の手で、下乳にある隙間に引っかくように指をかけた。
「き、きゃぁっ!!」
慌てて半歩下がった私は、胸元を隠しながら、余った手を勢いよくディオンの頬に向かわせた。
でも――
「バーカ。何度も同じ手ぇ通用するかよ」
その手はディオンの手に捕まれ、呆気なく止められてしまった。
「お、変わって来たな」
ディオンは、何かに気付いたように言う。
「何が」
私は、捕まれた手を振り払って数歩後ろに下がった。
その瞬間、視界の端に金色の光が走った。
「……え?」
その金色の光に目をやると、それは自分の胸元から頭にかけて伸びる光の筋だった。
不思議な気持ちで、私はそっとその光の筋を掴む。
まるで細い糸のようなそれを引っ張ってみた瞬間、鋭い痛みが頭皮に走った。
「痛っ!」
この感覚はよく知ってる感覚。
まさかこの光る糸って……自分の髪!?
嘘っ……髪の毛が……光っている?
慌てて部屋の姿見に駆け寄ると――
目の前に映った自分の姿は、見たこともない姿だった。
私の髪は、眩しいほどに輝く白に近い黄金色へと変わっている。
よく見ると、眼の色もディオンによく似た深い碧色に変わっていた。
「……な…………、なに……これ、は……」
一瞬目の錯覚か何かかと思ったけど、そうじゃないようだ。
自分の目を疑いながらも、映し出されているのは紛れもなく自分自身だという現実。
信じられない気持ちで鏡に手を伸ばし、指先で表面をそっとなぞる。
すると、背後に立ったディオンが鏡越しに口を開いた。
「これは……本来のお前の姿だ」
「……え?」
本来の、私……?




