ついに進級試験15
ディオンは、顎に手を添えてジッと石を見下ろしている。
「……凄ぇな…………。お前、よくこんな大層な物を付けてて今まで気付かれずにいれたな……」
「取り上げないで!お願い!!」
そんな私の言葉を無視するディオンは、ネックレスに向けて手を伸ばしてくる。
私はその手からなんとか逃れようと、拘束されたまま必死で身をよじった。
「やっ……」
でも、私の胸元で石がむなしく揺れ動くだけだった。
「やめっ……」
そして次の瞬間、耳元でブチっとちぎれる音がした。
直後――
辺り一面が強烈な光に包まれる。
「……っ」
目も開けれない程の光に強く目を閉じた。
すると、すぐに体の中心が燃えるような熱に包まれ、その熱がじわじわと全身へ広がっていくのを感じた。
指先までビリビリとした正体不明の痺れが走り、まるで体全体が何かに反応しているかのようだった。
なのに、眩しさに圧倒されて、その原因を確かめることさえできない。
やっと瞼越しに光が弱まってきている事が分かった私は、そっと瞼を開けた。
「やっぱな……」
するとさっきと同じ体勢のディオンが映る。
「悪くねぇな。その姿」
その言葉にハテナマークを浮かべた瞬間、ディオンの手からゆらゆらと揺れる、私のネックレスが目に飛び込んで来た。
「あっ!私のネックレス!!」
飛び起きようとした瞬間、ピンと張ったネクタイに両手首が引っ張られ、体を起こすことができない事を思い出す。
手をあらゆる方向に動かしてみるけど、動けば動くほどネクタイが食い込んでいく感覚がする。
「これ、外してよ!」
「誰が外すかよ」
「くっ……!」
このままじゃ、ネックレスが取り上げられちゃう!!
外れてよ……っ!!
結び目を見上げてそう願った時、突然ネクタイがふわりと緩んだ感覚がした。
驚いて目を見開くと、視界に映っていたネクタイが嘘みたいに一人でにスルリと外れ、シーツの上に落ちた。
ディオンがネックレスを外したのかと思い、彼に目をやった。
でも、ディオンは私には目もくれず、私の上で真剣な表情でネックレスを覗き込んでいた。
たまたま緩んだ?そんな事ある?
でも……今はそんな事はどうでもいい。
そう思って、ディオンの隙をつくように勢いよく起き上がり、すかさずネックレスに手を伸ばした。
でも、あと一歩というところでディオンに気付かれてしまい、手を上に上げられてしまう。
「……は?ネクタイはどうしたんだよ」
豆鉄砲でも食らったような顔をするディオンは、私から離れるようにベッドからひょいっと降りた。
やっぱりディオンが外したんじゃなかったんだ。
「分からないけど、勝手に外れたわよ!」
追いかけながら言う私の言葉に、なぜかディオンの目が生き生きとしてくる。
「ふぅん……へぇ……。外したんだ」
「聞いてた!?外したんじゃなくて、外れたのよ!それより私のネックレス返してよ!」
「嫌だ」
「約束を守れなかった事は謝る。でも、本当に守ろうとはしてたの!」
「だから、言い訳は聞かねぇって」
夢中になってこの狭い部屋の中で追いかけっこしている間に、壁際に立ったディオンを勢いよく両手で挟み込んだ。
「捕まえた!」
すぐに、逃がさないとばかりにネックレスを持っている方の手首を掴む。
その時、ディオンは私の顔からすっと視線を下げた。
「ってかさー。お前……さっきから今の自分の恰好、分かっててやってんのか?」
「自分の、恰好……?」
眉を寄せてすっと視線を落とすと、自分のむき出しの胸元が映っていて、声にならない声を上げた。




