ついに進級試験14
その言葉にギョっとしてしまう。
まさか、アランと手を繋いでいた所を見られた!?
それとも、ローレンとの会話を聞かれた!?
どちらにしても、マズい!非常にマズい!
「忘れたとは言わさねぇぞ。約束を破ったらどうなるか」
……今度こそ泣きわめいても、お前を暴いてやる。
そんな過去のディオンの台詞が頭に浮かんで来る。
「まさか……俺が居ない日だけ約束を守っていただなんて思わなかった。……俺をなめるのもたいがいにしろよ」
凄みを利かせた声に、突然現れる恐怖心。
「ま、待って!あれは主役だったから仕方なく……」
「言い訳なんて聞かねぇ」
ディオンは、突然指をクイっと曲げた。
すると、落としたばかりのネクタイがふわっと宙に浮く。
「ど、努力ならしてたわ!でも……」
「往生際悪りぃ」
そう言い終わると同時に、ネクタイはまるで蛇のようにくねりながら、私の手首に飛びついてきた。
驚く間もなく、もう片方の手首にも素早く巻き付き、グッと強く両手首を束ねられた。
「え!?ちょっ……」
両手がグンと頭上側に引っ張られていくと、ネクタイはベッドフレームのパイプ部分に巻き付いた。
私の上に跨るディオン。そして固定される手。
手も足も出ないとは、まさにこの事を言うんだろう。
絶体絶命だ!
見下ろすディオンの目からは感情が読めない。
「ディ……ディオン……?」
自分の声からは不安が滲み出していた。
魔力が覚醒する直前、ディオンは『どうして魔力を隠してるんだ』と言って、私の正体を暴こうとしていた。
でも、その直後に『魔力の覚醒』と診断されたのはディオンも知っている事だ。
なのにこれ以上、何を暴こうというのだろう?
ま、まさかっ……!!
ディオンが私の胸元に手をかざした瞬間、私の予想は確信に変わった。
でも、ディオンの目的が分かったところで、今の私には何も出来ない。
次の瞬間――
私の胸元でパンッ!と何かが弾け飛ぶような音がした。
不思議な事に、全く痛みが感じない。
ぎゅっと閉じた目をゆっくり開ける。
すると、宙には白っぽい生地のようなものが飛んでいた。
胸元が異様に涼しくて、風が通り抜ける感覚に、そっと自分の姿を確かめる。
すぐに、鎖骨まで覆っていたドレスが、縦に裂かれるように腹部まで大きく破れている様子が映った。
胸の先端は、かろうじて隠れている状態で、動けば見えてしまいそうだ。
「……っ!!」
そんな光景に一瞬で吹き上がった羞恥心は、次に目に飛び込んで来たものに吹き消された。
それは、ディオンの視線の先にある――ネックレスだ。
「や……だ……!やめて!」
「ふぅん……」
撫でるような声が落ちてくる。




