ついに進級試験13
…………えっ!?
その瞬間、世界が一瞬止まったような気がした。
驚きと混乱の中、唇はそっと用が済んだかのように離れていく。
「宣戦布告なんか必要ねぇ」
ディオンはローレンを見下すように顎を上げて言った。
「こいつはもう俺のものだ。勝手に手ぇ出すな!クソ餓鬼が!」
ローレンは、抜け殻のように真っ白になっていた。
…………
……
「何キスぐれぇで放心してんだよ。初めてじゃねぇのに」
放心している私は、まるで電車の窓から見える景色のように、ディオンの姿がただぼんやりと目に映っていた。
「いい加減戻ってこい」
そんな声が聞こえたと思うと、突然動き始めた自分の胸に視線を落とす。
すると、ディオンの手に揉まれる自分の胸が目に飛び込んで来て、さっきまでの自分が嘘みたいに細胞ごと意識が目覚めた。
「き……きゃぁーーーー!!」
パチンと乾いた音が響いた瞬間、自分の手のひらにジンジンとした熱が走った。
「痛……てぇな!」
頬を押さえるディオンが視界に飛び込んできた後、視野が一気に広がって、私は目を丸くした。
「……あれ?私の部屋!?なんで?」
さっきまでパーティ会場のテラスにいたはずなのに……
そして今、私……ディオンを叩いた?
驚いて自分の手の平をじっと見る。
「マジで暴力女だな。出会った頃の俺だったら、今ので殺してたぞ」
そう言いながら、不機嫌な顔をして氷枕を出すディオン。
確かに……最初の頃ならあんな平手打ちなんてしたら絶対に本当に殺されていたに違いない。
「あ、あんたが変な所触ってくるからでしょ!」
「どうせ減るもんじゃねぇだろうが」
「そういう問題じゃなくて、デリカシ―の問題でしょ!?」
「んだよ。じゃあ、さっきの野郎だったら良かったのかよ!」
突然出て来た『さっきの野郎』という言葉に、数秒固まる。
「……へ?ローレンの事?」
「他に誰がいんだよ」
「そんなの、誰でも駄目に決まってるでしょ!?だってこういうのはお互い好き同士でする事なんだから……」
「はー、マジでお子ちゃまだな」
「お子ちゃま!?っていうか、なんでローレンの前でキッ……キスなんてしたのよ!しかも、あんな誤解するような事を言って……どういうつもりよ!!」
こいつは俺のだ、って何!?
「別にいいじゃねえか。誤解されたって」
「全然よくないわよ!」
「なんだよ。誤解されて困る事でもあんのかよ。もしかしてお前、あんなヘタレが好きなのか?」
ディオンの言葉に心底イラっとした。
「ヘタレ!?ローレンはそんなんじゃない!ローレンの事を何も知らないくせに、悪く言うの止めてよ!!」
「何ムキになってんだよ。まさかマジかよ」
「ローレンは大事な友達なんだからムキにもなるわよ!」
私の言葉を聞いたディオンは、一瞬止まってからで笑った。
「はっ。そうだよな。……でも、何も知らないのはどっちなんだよ」
「どういう事よ」
「お子ちゃまには難しいよな」
手を横に出して、馬鹿にするような顔で肩をすくめるディオン。
「だから!私はお子ちゃまじゃない!」
「ま。でも、俺とお前が付き合ってるって事にした方が、お前にとっちゃ楽だと思うけどな」
「なにそれ」
よく分かんないけど、そんな事のためにみんなを騙したくない。
「それより……」
低く落とした声と共に、ディオンが突然私に顔を近づけてきた。
ベッドに腰掛けていた私は、慌てて上半身を反らすように引いた。
「な、何!?」
見透かすような鋭い目をしたディオンが、無言で手を伸ばしてきたかと思うと――肩を掴まれた。
「きゃっ!」
次の瞬間、私はベッドに押し倒されていた。
すぐに私の上に跨るディオンに、私は驚きで目を見開いた。
「え……っ!?」
今度は何!?
混乱している間に、ディオンは自分のネクタイをスルリと外し始めた。
「な……何してるの?」
ディオンは静かに首を傾げて言った。
「よくも、俺との約束を破ってくれたな?」
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