ついに進級試験11
なんかおかしいと思ったら……そういう事!?
「飲んだよ。だから何?」
悪びれもなく言われて、さらに驚く。
「どうしてですか!?もう飲まないって言っていたのに……」
ローレンはとてもお酒に弱く、何度か記憶を失った経験があると本人から聞いた。
気付けば外で寝ていたり、暴言を吐く事もあったそうだ。
ちなみに、この世界での飲酒は18歳からで、ローレンが飲むことに関しては法律上の問題はない。
「はは……。飲まずになんて、いられるわけないでしょ」
ふら付く頭を押さえながら、私から数歩下がったローレンは苦笑いを浮かべた。
「何か、あったんですか?」
私の言葉に、ローレンは顔を持ち上げてるなり、目を吊り上がらせた。
「……あんな奴と……仲良く手なんて繋いで入場してくるのを見た僕が、どれだけ不愉快だったか、分かるでしょ!?」
私は怒鳴るように言われたローレンの言葉の意味がよく理解出来ず、ただ驚く。
「不愉快……って?」
アランと手を繋いで入場した事だよね?
「あいつ……いくら脅しても引くどころか、むしろ積極的になりやがって……っ!」
えっ……脅し!?あいつ!?
というか、さっきから思っていたけど、口調がっ!
いつもの穏やかで紳士なローレンはどこー!?
「なんなんだよ!今までは……ずっと邪魔者を排除してきたのに……。なんであいつだけは……」
よく見ると目も少し据わってるし、耳まで真っ赤だ。
本当にお酒に弱いんだ……
「ローレン。とりあえず保健室行こう。まだ夕方だから開いてると思うし」
っていうか、アルコールって魔法で抜けるのかな?
外傷は治せるけど、病気は魔法で治せないんだよね。
……アルコールはどっちになるんだろう?
据わった目をしたローレンがふらっと近付いて来る。
「シエルちゃん……いいの?今のこんな僕と保健室なんかに行って……」
「えっ?」
屈み姿勢のローレンは、私を覗き込むようにして言う。
「もし保健室に、誰も居なかったらどうするつもりなの?今は誰も居ない可能性の方が高いと思うよ?」
「居なかったら?誰か呼んで来ますよ?」
何を言ってるんだろう。本当に急がないと駄目だわ。
「はは、そういう話してるんじゃないんだけどなぁ。……そういう考えをされているのって、実は結構悲しいんだよ……知ってた?」
ローレンはその言葉の通り、悲し気な瞳をして首を傾げた。
「悲しい?」
どういう考え?
「……あぁ、でもその……何も分かってなさそうな所も……きだよ」
声が小さくて、上手く聞き取れない。
「ごめんなさい。今の、声が小さくて聞こえな……」
ローレンは、私の髪に指を差しいれてくる。
「好きだよ。シエルちゃん……」
「……え…………っ」
愛おしそうな表情で告げられ、一瞬放心する私。
次の瞬間、遅れて頬がボッと熱くなった。
「えっ……!?」
「本当に……、いつもいつも、好き過ぎて……困るくらいだ……」
魅力的な瞳で見つめられ、ドキッとしてしまう。
そんな私は、ローレンから逃げるように一歩、二歩と後ずさる。
「……よ……、よ、酔いすぎですよ!」
「また僕の言葉を信じてくれないんだね……」
「よ……酔ってる人の言葉なんて、信じられるわけないです!」
「でも……普段でもそうだよね。僕って、そんなに魅力ないのかな……」
「えっ……」
駄目だ。本当にローレンがおかしい!
悠長にドキドキなんてしていられない!
「と……とりあえず保健室へ行きましょう!」
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