ついに進級試験9
「努力ならしてるよ。君らよりはね」
その声にドアの影から顔を半分だけ出して覗く。
すると、そこには真っ白のスーツを着た、ローレンらしき姿があった。
「サ……サオトメ様っ!?いつからそこに……」
「違うんですっ!私たちは……」
「違うって、どう違うの?是非教え欲しいな」
ローレンの声から怒りが滲み出しているように感じた。
「えっと……それは……」
おどおどとする女子達。
「サオトメ様はおかしいと思いませんか?あんなに魔力が無かった底辺の女が、急に飛び級だなんて……
そんなの、絶対裏があるに決まってるじゃないですか!サオトメ様だって出してないのに!」
「……その証拠はあるの?」
「そ……それは……、無いですけど。でも、私たちだけじゃなくてみんな思ってますよ!ジョウガサキさんはまともな結果だけど、タチバナさんは裏で何かしたんじゃないかって!」
「みんなって、誰?」
「え……っ」
「良かったら今すぐここに連れてきてよ。じっくり言い分を聞きたいなぁ。そんなくだらない話を広めるくらいなんだから、大した証拠でもあるんだろうし、ね?」
横顔しか見えないけど、ローレンのこんな顔、初めて見た。
笑っているのに目が全然笑ってない。
腹の底で凄く怒ってる事が分かるその横顔に、驚いた。
「どうしたの?黙ってちゃ分からないよ?」
「……ご、ごめんなさい」
弱々しく謝る女子達をのぞき込む。
「どうして謝ってるの?」
「みんなって言うのは……その……、う、嘘……で……」
「へぇ。……じゃあ君たちは、証拠もないのに想像だけであんな物騒な話をしてたって事かな?」
ローレンの言葉に、ついに一人の女子が泣き出した。
「うっ……。ごめんなさい……サオトメ様、怒らないで……」
「君たちは何も知らないんだろうね。あの子が陰ながら、どれだけ努力をしているのか……」
ローレン……
「なのに嫉妬でそんな変な想像するのはやめてくれるかな?空想上であっても本当に不愉快だ!」
「わ、私たちがあんな女に嫉妬なんて……」
「じゃあ、これが何なのか教えてくれるかな」
「えっと……」
「僕には、ただの嫉妬にしか見えなかったけど?」
ピシャリと言ってのけたローレンに、もう何も言い返せないもう一人の女子も泣きそうに俯いた。
「そ……それは……」
「もうこれ以上、僕の大事な人を侮辱するのは許さないよ」
そう言うと、もう1人の女子も泣き出してしまい、2人して逃げるようにこのテラスから立ち去って行った。
凄い……やり取りを見てしまった……
立ち聞きしてしまってよかったんだろうか?
私の知らないローレンに、呆気にとられる。
……僕の大事な人……
私を守る為に言ったんだろうけど、そんな風に言われるのって、なんだか……凄く嬉しい。
でも、ローレンはとても心優しい人だから、女子を泣かしてしまったことに今頃心が痛んでいるんじゃないかと凄く心配になる。
そんな時――不意にドアに肘が当たり、ギッと小さな音が鳴った。
ドキッとした私は、慌ててローレンの方を見る。
すると、振り向いたローレンとバチっと目が合ってしまった。
「あっ……」
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