1000~2000人に1人の存在3
「遅れてすみませんでした」
空で私を抱えていたクリフという男は、私を降ろすと、深いため息をついた丸い眼鏡の男に頭を下げた。
「あ、そうだ。チビスケ」
クリフという男に呼ばれて振り返ると、目の前でパパッと手を振られる。
すると、突然どこからともなく大きなバケツが現れて目が点になった。
「吐くならここに吐けよ。慣れないうちはキツいからな」
さっきの事といい、このバケツといい、情報処理が全く追いつかない。
手品、なんだろうか?
でもそうだったとして、何のために?タネは?
全然分からないけど、これだけは分かる。
こいつらは人さらいで、両親の言う『悪い人』だって。
何を言われても、何を見せられても騙されないように気を引き締めて行かないと!
そんな事を考えていると、クリフという男はパチクリとした目で聞いてくる。
「……気持ち悪くないのか?」
訳が分からず、ゆっくりと首を横に倒す。
「へぇ、それは凄いな。ずいぶん魔力が少ないと思っていたけど、意外と適応能力だけは高いのかもしれないな」
……は?魔力?
今この人、魔力って言った?
魔力発言に驚いて他の人達の顔色に目を向ける。
でも、誰も驚いている様子ではなかった。
ヤバイ、この人たち。
人さらいという時点で既にかなりヤバイのに、更には大の大人が揃ってコスプレ姿で魔力発言なんて……
両親は、こういう人達から私を守りたかったんだ。
こうなったのも全部、両親の言う事を守らなかった私のせいだ。
私は服越しにお守りのネックレスを握りしめて、遅い後悔をした。
「鼻血、もう乾いてるけど一応拭いておくぞ」
まだ付いてたんだ、と思っているとゴシゴシとタオルのような物で鼻を拭かれる。
人さらいのくせに、優しいふりなんてして……こんな事で騙されないんだから!!この中二病の人さらい集団め!!
「ん、綺麗になったな。ってか本当に気持ち悪くないのか?」
私は再び差し出されたバケツを叩き落とし、キッと睨んだ。
バケツが床にガンッと落ちて床に小さな円を描く。
「私を、今すぐママとパパの所に返して!!」
私の様子を見た丸い眼鏡の男は、呆れたように口を開ける。
「それは出来ない。国の決まりだからな」
「国の……決まり?」
「調べ通りだな。君は世間の事は何も知らないのだろう?」
子供相手だからって、なんて適当な事を……
親から子供を攫って家に帰さない国のきまりなんて、聞いた事ないわ!
ん?でも、調べ通りって……?
前々から私の事を調べていたの?
じゃあ、たまたま偶然家を出たから攫われたんじゃない?
いやいや、何信じてんの!?こいつらの言う事なんて、1ミリも信じちゃ駄目だ!
「入園の前に簡単に説明しよう」
入園!?いま入園って言った!?
って事は、まさかここは保育園!?いやいや、そんな馬鹿な!
どう見ても、目の前の人達は保育士さんとは程遠い人相にしか見えない。
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