ついに進級試験7
「ああ。塔に入る奴らは皆、闇魔法で作った魔道具を付けさせられているから逃げられないんだ」
「えっ……?」
「魔法使いの魔力を封じ込める魔道具を作り、魔法使いを塔に閉じ込めている。
よほど膨大な魔力を持っている奴以外は、その魔道具を付けられると魔法が一切使えねぇんだ。これが答えだ」
「そんな事……」
出来るの!?
「それがさっき言った、国が唯一認めている闇魔法の使い道だ」
なんだろう。
なんか……これ以上、ディオンの話を聞きたくない気がする。
お父さんがくれたこのネックレスが、そんな恐ろしい物と関係あるわけない。
「その話は、このネックレスは……関係ない、よね……?」
いつも心が乱れたとき、いつも握っていた胸元のネックレスの石。
だけど、はじめて一瞬手にするのをためらってしまった。
すぐに心を落ち着かそうと、シャツごと握りつぶすようにして強く握りしめる。
「どうだろうな。でも、まぁほぼ黒だろうな」
ディオンが再び手を差し出すと、「んっ」と人差し指をクイっと曲げて催促してくる。
でも私は、石を握ったまま、絶対取られまいとディオンに背を向けた。
「これは違う……」
「だから、それを調べるんだろ」
「だって、もしそうだとしたらおかしいよ!私はこのネックレスを付けていてもずっと魔法を使えているんだから!」
「だから……」
ディオンの顔に鬱陶しさがにじみ出ている。
「渡さない!」
矛盾があるし、違うって思うけど、やっぱりこれ以上は知りたくない……っ!
「お前……ここまで話したのに渡さねぇのかよ。気のせいだったらすぐに返してやっから」
「や、やだ!」
もし…………気のせいじゃなかったら?
どうするの?
私からこのネックレスを取り上げるの?
唯一、愛してくれている両親がくれた、この大切なお守りを……?
それに……
お父さんとお母さんが誰かの命を代償に、このネックレスを作らせたかもしれない、なんて……そんな恐ろしいことがあるわけない、そう頭では思っているのに、全否定できない。
怖い……
本当の事を知るのが……
「おい、俺がキレる前に貸せ」
「嫌っ!」
その時、ディオンが目を吊り上げて勢いよくソファから立ち上がった。
「いい加減にしろよ!」
いつもなら少し怯んでしまいそうな所だ。
でも、今回だけは怯んでなんかいられない。
「嫌、嫌!!絶対駄目!!私からこのお守りを取らないで!お願い!」
「こんの……こうなったら無理にでも……」
怒りのこもった声を出したディオンが、こちらに指先を向けてきた。
その瞬間、魔法で取り上げられるという予感が走り、私は体をギュッと硬直させた。




