ついに進級試験6
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……
パーティ会場から気配を消して、開けっ放しのテラスへと出た私は、やっと一人になれたことで長いため息をついた。
「はー、疲れた……」
夜の静けさの中、フクロウの「ホーホー」という鳴き声が響く。
ふと空を見上げると、宙にフクロウがじっと止まっているように見えた。
一瞬、なんであんな所に!?
と驚いたけど、よくよく見ると、テラスを覆う透明な壁に月明かりが反射しているのがわかった。
「ああ、防寒壁か……」
あれは、時々講師たちが使う定番の魔法で、寒い季節の屋外でも暖かく過ごせるようにする仕掛けだ。
12月の夜だし、当然といえば当然か。扉も窓も全部開けっ放しだし。
それにしても、ラブは本当に人気ものだな。アランといい勝負になるくらい。
ルイーゼ達が、進級したら会いにくくなるからって、ずっとラブの面倒をみてくれている。
けど……食べ過ぎたりしてないか少し心配だ。最近太ってきてるし。
そんな事を考えていた時、私しか居なかったテラスに誰かが入って来る足音がした。
しばらく一人になりたかった私は、咄嗟に傍にあったテラスのドアの影に隠れた。
すると、すぐに女子の話し声が聞こえてきた。
「あーん、カミヅキ講師がいないの残念」
「今日は授業の日じゃないもんね。見たかったなぁ~カミヅキ様のスーツ姿!」
「でもカミヅキ講師ってこういうイベントに参加したことなくない?」
「えー、そうだっけ~?」
ディオンとは、あの日、ネックレスの話をして以来、一度も顔を合わせていない。
明日は終業式。
そして明後日からは冬休みに入るから、しばらく会うことはないんだろう。
けど、次に会ったとき、私は一体どんな顔をすればいいのだろうか。
目を閉じて、あの時交わした言葉をひとつひとつ思い出し始める――
6日前の講師室――
「もういい。特別に闇魔法について教えてやる」
「えっ!?いいの!?」
「闇魔法っていうのは、さっき言ったように禁忌魔法で、人の魂を力の源にするものだ」
「うん」
「闇魔法は、通常の魔法では不可能な魔法までも可能にしている。まぁ呪いとか色々あるが、一番代表的なものは……」
そう言うと、流し目で私を見てくる。
「お前、塔って知ってるか?」
「え?知ってるよ。魔力を持った罪人が入る所でしょ」
「ああ、そうだ。そこに入れられた罪人たちは魔法が使えんのに、どうして逃げないと思う?」
「え?考えた事ないけど……その人達より強い魔力の監視員がいるとかじゃないの?」
「それだと毎日、塔の中が戦場になるだろうな。そして、その監視員役が逃げ出そうとする奴に気を取られている隙にたくさんの罪人が逃げ出していくだろうし」
「確かに……。今思うと瞬間移動も使える人もいるし、それだと難しいよね」
「そうだ。お前も知っての通り、魔法が使えるのはほんの一部の人間だけだ。まず、そんな場所にそんな強い奴は配備されないし、下っ端の魔法使いでさえも配備されない。好き好んでやりてぇ奴が居たら別だけどな」
「え?じゃあその塔で働く人達は魔力の無い人達だけなの?」
「ああ、そうだ」
「その状況で逃げ出さないようにするなんて無理じゃない?……あっ、分かった!」
私は手をポンと叩いてから指を立てて続ける。
「外に出れないようなシールドが貼られてるから皆初めから脱走を諦めてる!」
「確かに、塔の周りには逃げれないようなシールドを張ってある。でも、魔法で作ったものは基本魔法で壊せてしまうから、シールドは逃走してしまった時のただの時間稼ぎでしかない」
「そっか……」
「脱走防止というよりは、抑止力になってる程度だな」
ディオン、詳しいな。まるでその目で見て来たかのよう。
学園外だとそういう情報も簡単に手に入るのかな?
「……じゃあなんだろう?もう!難しすぎるから答えを教えてよ。っていうか、なんで今そんな話をするの!?闇魔法と全然関係ないじゃん!」
「関係あるから話してんだろ。ってか、もうギブかよ」
ダサっと鼻で笑われて頬が膨らむ。
「だって……考えても出てこないんだもん!」
「まぁ答えを言うと、罪人たちはある物を使われてるせいで、逃げ出せねぇんだ」
「ある物……?逃げ出せない?魔力のない人たちしか居ないのに?」
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