ついに進級試験3
…………
……
「シエルゥゥーー!!」
親友のメイがFクラスの教室に飛んで入って来たと思うと、そのままの勢いで私に抱き着いてきた。
「うわっ!」
「凄いじゃん!凄いじゃん!まさか飛び級を出すなんて!」
メイの言葉に、もう上級クラス棟にまで噂が回ったんだと知る。
まだ試験が終わって1時間も経ってないのに。なんて速さなんだろうか。
「本当におめでとう!」
「ありがとう。で、メイは……どうだった?」
メイはサバサバしていて、悩みが少なそうに見えるけど、実は意外と繊細なところがある。
そのせいで、魔力も知識もあるのに、試験当日に実力を発揮できないことが多かった。
「ふふっ」
メイの笑い声が耳をかすめる。
すると、私の肩に手を置いてそっと身を引き剥がした。
「合格したよ」
私はその言葉を聞いた瞬間、ぶわっと喜びが溢れて来て思いっきり抱きついた。
「よかった~!おめでとう!」
本当に良かった……
「ありがとう~。でも、ちょっと残念」
「なんで?」
「だって、今回私が進級しなかったらシエルと久しぶりに同じクラスになれたのに」
「あ!そうだね」
私はDクラスで、メイがCクラスになるんだもんね、と考えながら私は続けた。
「メイの合格は嬉しいけど、一緒のクラスになりたかったね」
メイとはIクラスとHクラスでしか一緒になっていない。
それ以降はずっとバラバラだ。私がずっと進級できなかったせいで。
「じゃあさ、次の試験でシエルがもう1回飛び級出したらいいじゃん。私も合格前提だけど」
ふふっと笑うメイに「さすがに無理でしょ。今回はたまたま起きた奇跡なんだから」と困ったように返した。
「でもまぁ、クラスは違うけど、来年からはやっと同じ棟だね」
「ん?」
「ほら、SクラスからDクラスが上級クラス棟、それ以下がこの下級クラス棟じゃん」
「あっ!そっか!私、来年から上級クラス棟なんだ」
信じられない。
上級クラス棟なんて、まだまだ先だと思っていたのに!
上級クラス棟と下級クラス棟は廊下を見ただけでも全然雰囲気が違う。
下級クラス棟は、小学校みたいに丸めたノートを野球のバッド替わりにして遊びぶ子供が居たりして、常に誰かが走り回っている状態だ。
それに対し……上級クラス棟は落ち着いた雰囲気だ。
単純に年齢層が違うからそうなるんだろうけど。
「下級棟と上級棟の間に多目的室棟や講師棟が挟まってて、こっちまで来るのに地味に距離あったんだよね~。小休憩では来れない距離だったし」
「だよね」
「来年からはクラスは違っても近くなった分、会いやすくなるね!」
「そうだね!」
メイと近くなるの楽しみだな。
「なぁ。俺にもおめでとうって言ってや~、メイちゃん」
その声に振り返ったメイは、微かに目が大きくなった。
「ア、アランさん!」
メイは、すぐに頬を染めて照れたように言う。
「アランさんも……おめでとうございますっ!」
「ありがとう、メイちゃん」
「凄いです!アランさんも飛び級だなんて!」
「せやろ。褒めて褒めて」
アランは満更でもない感じで鼻の下をこすっった。
実は、信じられない事に、アランも飛び級する事に決まった。
だから、またアランと同じクラスになる。これは非常に困った。
「2人同時に飛び級が出たのなんて、学園が始まって以来の事らしいじゃん?学園の歴史に残るんじゃない?」
そんなメイの言葉に、「大袈裟だよ」と笑った。
私達の飛び級とは関係ないとは思うけど、今年はSクラス以外のクラスで、過去の例と比べてもかなり進級者が多かったらしい。
そのせいで、『今年の審査は甘かったんじゃないか』なんて噂も耳にした。
けど、ローレンが飛び級じゃなかったと知って、その噂はデマだとすぐに分かった。
ちなみに、ローレンも進級試験に合格したらしい。
その時、ピンポンパンポーンと教室のスピーカーからアナウンス音が鳴った。
「日本魔法学園の生徒諸君、学園長だ」




