進級試験前8
「魔法を使う時、自然界の力を借りるというのは覚えてるな?」
ディオンの言葉に、冷や汗をかきながら静かに頷く。
「闇魔法はその力の源を、自然界ではなく人間の魂に置き換えて行う」
それって――
人殺しってこと!?
「闇魔法は、誰かの命を犠牲にしてでしか使えない。それも1人や2人程度じゃない。だから闇魔法はこの国だけじゃなく、世界的にも禁止されているんだ。……でも、例外を作って国の中枢の奴らは使う事もあるんだけどな」
「例外?人の命が犠牲になるのに?」
「大義名分らしい?他に代わりになる魔法もねぇから、まぁ分からなくもないんだが……」
理解ができずに、眉が寄ってしまう。
「あぁー。なんか説明ばっかで面倒くさくなって来たな。もう十分だろ」
「えっ……?」
「闇の話はもう終わりだ。とりあえず、そのネックレスを貸せ」
「えぇーー!?ここで終わり!?教えるなら最後までちゃんと教えてよ!授業の時はちゃんと教えてくれるのに!」
私の言葉に、どこかを遠い目で耳をほじくるディオン。
「ちょっと!聞いてるの!?」
「今は時間外だ。それにめんどくせぇんだよ。お前質問ばっかだし」
「うっ……」
そうかな!?私、そんなに質問ばっかしてる?
「だって……気になる、し……」
私にとって、最重要な内容なんだから!
「じゃあ……、教えたらお前は俺に何してくれるんだ?」
「えっ?」
窓の外を見ていた視線が私に戻り、じっと見つめてくる。
その瞳の奥に、どこか期待するような光が宿っている気がした。
「何って……」
確かに、私はディオンに何を返せるんだろう。
昨日だって、寒い中、長い時間付き合ってくれた。
それに、ごく一部の人間しか入れない書庫に、入らせてくれた。
出会ったころのディオンの行動が酷すぎて、そんな行動が霞んでいたけど……
そんな事を考えていると、突然ディオンの端正な顔が私の視界を占めた。
ソファの肘置きに背を預けたままの私を、至近距離でじっと覗き込むディオンが、驚くような言葉を口にした。
「じゃあ、さっきの続きで手を打ってやる」
「えっ」
「貧相な体だけど我慢してやる」
そう言いながらディオンは手を伸ばし、私の背中に手を回してきた。
「……ちょっ!」
そのまま抱き込むようにして、お尻の位置を肘置き側からディオン側にズラされる。
次の瞬間、乱暴に肩をドンと押された。
「ひゃっ……!」
すると、視界が一瞬でディオンから天井に変わった。
「わっ……」
「言っとっけど、後払いだからな」
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