進級試験前7
「いいから」
「嫌だよっ!まさか、私から取り上げる気なの!?」
ネックレスを取られまいとグッと握りしめてディオンに背を向ける。
「結果次第ではそうなるかもしんねぇな」
「じゃあ絶対渡さない!」
「貸せ。じゃなきゃ取り上げるまでだ」
「なんで!?私物が駄目なのは分かってるけど……」
ディオンは規則を重んじるタイプじゃないのに、どうして!?
こんな事になるなら、話さなければよかった!
「そんな話をしてるんじゃねぇんだよ」
そう言うと、ディオンは静かにため息をついて口を開いた。
「それは……多分普通のネックレスじゃねぇ」
その言葉に、目を見開いた。
「……えっ?」
「それを調べてやるから貸せって言ってんだ」
「ふ、普通じゃないよ!だって両親がくれた大切なお守りなんだから!」
「ちげーよ!そういう事言ってんじゃねぇだろっ!馬鹿が!」
「バッ……っ!!ちゃんと分かるように説明してよ!」
片方だけ立膝をしたディオンは、「あークソッ!」と苛立つように言って、舌打ちをする。
「正直、お前に言っていいのか分かんねぇんだよ……」
ディオンのその言い方に、体に小さな緊張が走る。
「ど……どういう事?」
ディオンはすっと私のネックレスを指を差す。
「それ。ただのお守りにしちゃ、確実に変なんだよ」
「……変……、って?」
ディオンは私に向けていた指先を、自分の顔の前に持っていくと、指先をじっと見た。
「チェーンを少し触っただけだけど……」
ディオンのビー玉みたいな碧い目が動いて、今度は私の首元あたりに目を向けてくる。
そして静かに眉をしかめてから口を開いた。
「そこから……『闇』の匂いがした」
「……え……っ?」
闇って……何?
知らないけど、なんだか悪い感じのイメージしかない。
「闇、って……?」
「闇魔法だよ。あー……、学園じゃ習わねぇんだっけな。俺も卒業してから知ったんだっけ」
ディオンもここの学生だったことに驚いてしまう。
なんだか想像できない。
「闇魔法っていうのは……禁忌魔法だ」
「えっ……」
禁忌魔法……!?
お父さんがくれた、このネックレスから、そんな恐ろしいものが!?
「ま、まさか……そんな冗談……」
「こんな冗談言うかよ」
「えっ……じゃあ、ディオンはこれが、その闇魔法で作られた物だって言うの?」
ネックレスを握る手が小さく震え出す。
完全にディオンの勘違いに決まってる。
そう思うのに、どうしてこんなに胸がザワつくんだろう。
「だから、さっきからそう言ってんだろ!でも、一瞬だったから確信は無い。調べてやるから早く貸せ」
「待って、その前に……どうして闇魔法は禁忌なのか教えて」
私の質問に、ディオンはじっと鋭い目で見据え来てから口を開けた。
「……人の魂を代償にしてでしか、使えない魔法だからだ」
その言葉に全身が一気に寒くなって、そっと二の腕をさすった。
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