進級試験前5
混乱する頭の中で状況を整理しようとするけど、ディオンの顔がどんどん近づいてきて視界を埋めていく。
「えっ……」
焦ってディオンの口元に手を置くと、「邪魔だ」と低く言いながら手首を掴まれる。
「な、何っ……」
じりじりと顔を近づけてくるディオンに、心臓が爆発しそうになる。
「待っ……!」
慌てて顔を背けようとした瞬間、ぐいっと向き直され――
次の瞬間、私の唇は奪われてしまった。
「んん!?」
驚きの声が漏れる私。
ディオンは容赦なく唇を割り開き、さらに深く侵入してこようとする。
「ふっ……」
必死に舌で押し返そうとするけど、ディオンの動きは1枚も2枚も上手で、追い出すどころか逆に絡め取られてしまう。
「んっ!」
厚い胸板を両手で押し返そうとしても、びくともしない。
どうしていいか分からず、私はディオンの胸や肩をポカポカと叩いた。
すると、その効果があったのか、ディオンは少しずつ唇を離していった。
「うざいな」
呟いたディオンは、指をクイっと曲げる。
「え、なな何!?」
すると次の瞬間、自分の両手が意志に反して頭上に持ち上がり、布が擦れるような音が聞こえた。
見上げようとした時、視界が突然真っ暗になる。
万歳をしたような状態になった私の手に、何かが巻き付けられる感覚が伝わった。
「な……何してるの!?やだ!外してよ!」
手首に感じる拘束感。
試しに手に力を込めてみても、全く緩む気配がない。
動かせば動かすほど、何かが食い込むような感覚がして、ますます不安になる。
視界まで奪われた暗闇の中で、全身が異様に敏感になっているように感じた。
その時、首筋をすっと撫でられた感覚に、体が反射的に跳ねた。
「あっ……」
いつもなら笑ってしまいそうな場所なのに、声が自分でも驚くほど上ずっていた。
こんな声、聞いたことがない。なんか変だ。
何も見えないせいで、触れられる感覚がやけに強調される。
暗闇に包まれた不安感の中、微かにディオンがフッと笑う音が耳に届いた。
「やっ、やだ……、なんなの?何がしたいの……んっ!」
首元から滑るような手の感覚に、ビクっと震える。
シャツのボタンをプチプチと外していく音が聞こえ、いつの間にかローブが脱がされていたことに気付く。
「や……めてよっ!な、なんでこんな事するのよ!?」
「さっき言っただろ」
つーっと伝う感覚が、鎖骨の山を通り過ぎて胸の膨らみに到達する。
その瞬間――
「んっ……」
体が勝手に跳ねた。
「……ディ、ディオン……っ」
そう言うと、ディオンの手が突然ピタリと止まったのが分かった。
「……なんだ、これ」
低い声が聞こえた直後、目の前の暗闇が一気に晴れて光が差し込んだ。
さっきまで見ていたはずの景色は異様に眩しく真っ白で、ギュっと眉が寄ってしまう。
気付いたら手首の拘束感も消えていて、頭の上にハテナマークを浮かべながら徐々に瞼を上げていく。
だんだん明るさになれてきた私の視界には、顔をしかめ、私の胸元あたりをのぞき込むディオンが映った。
さっきディオンが言った『これ』とは何のことかと思っていると、私の首元あたりからチャリっと、金属が擦れるような音が耳に入って来た。
「……ネックレス?」
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