進級試験前3
と聞いてみたけど、無反応のまま。
なんだか凄く眠そうだわ。
もしかして、昨日の私のせいであんまり眠れてないのかな?と、罪悪感が顔を出す。
「……夢にまで出てくんな」
ディオンが呟いた言葉に驚いてしまう。
「えっ!?」
私の声を聞いた瞬間、半分しか開いていなかった目が完全に見開いた。
「あれ……本物か……?」
寝ぼけた様子で目を擦るディオンはどこか可愛く見える。
「え?何?夢だと思ったの?」
ディオンの発言にふと笑みをこぼすと、口を歪めて一気に機嫌が悪くなる。
「……なんでお前がここに居んだよ」
「え?昨日のお礼が言いたくて……って、いたら駄目なの?」
「勝手に入ってくんな」
「なんでよ。一応ノックはしたわよ。あ、そうだ!今日、廊下でディオンを見つけて声をかけたのに、無視したでしょ!」
「知らねぇよ」
「目が合ったんだし、知らないわけないじゃん!」
「気のせいだろ?」
そう言いながらグルリと背中を向けられて、胸の奥から淋しさが湧く。
ん?なんか……機嫌が悪い?もしかして寝起き悪いタイプ?
それとも昨日、途中から何も覚えてないけど展望台で私が何かやらかしてしまった……?
そんな予感に、心の波が乱れる。
「なぁ」
「何?」
「お前、俺が部屋に連れて帰ってやった時の記憶って、あるか?」
「え……?ないけど」
あれ?昨日、自分で帰ったんじゃなかったんだ。
なんで私、そんな事まで忘れてるんだろう?
「……そうか」
「何?」
「ならいい。もう出てけ」
「え?なんで!?」
「寝るんだよ!横でギャーギャー騒がれたら寝れねぇだろうが!気の利かねぇ奴だな」
「うっ……」
ム、ムカつく!!
そんな言い方しなくていいのに!
でも……眠いのはきっと私のせいだもんね。
「分かった。でも1つだけ教えて。今ディオンが機嫌悪いのは、私がディオンに何かしたとかじゃないよね?」
「は?」
「私、昨日のことあんまり覚えてなくて……」
「別に。途中からお前、ほとんど寝てたし」
「そっか……私、寝て……」
……ん?
んん!?
ね、寝てた!?
「……えっ!?」
まままま、待って!?
ディオンが、私が寝ている間に部屋まで運んでくれたってこと?
でも、起きたら普通にパジャマ着てたんだけど!?
それって、それって…………どういう事ーー!?
途中で起きて自分で寝ぼけながら着替えた!?そんな事ある!?絶対ないよね!
ああーー!
聞きたい!!
けど、そんな事を聞いたら、貧相な体のくせに自信過剰だとか言われて馬鹿にされそうで聞けない!
私はどうしたらーー!
良からぬ想像に、脳内の私が頭を抱えて空に叫んでいると、ディオンは白銀の髪をかきあげながら起き上がった。
その行動に不思議な気持ちで見ると、そのままソファから立ち上がった。
「あれ、どこ行くの?」
今さっき寝るって言ってたのに。
「どっか」
「え?」
ここから立ち去ろうとするディオンを、シャツ掴んで引き止める。
「待って」
でも、ずっと私に背を向けたまま。
「んだよ」
やっぱり……避けられてる。
ディオンが言えないだけで、私、絶対何かしたんだ。




