進級試験前2
これは、全部両親からの手紙。
ある程度たまると、定期的にファイリングしてベッド下の収納にしまっている。
頻繁に来る手紙。
それだけで、たくさんの愛を感じる。
なのに……
クラスメイトと比べて送金が全くないという理由だけで、疑ってしまった。
心の中で両親に謝りながら、最近届いた手紙を手に取り、鼻に近づけて息を吸い込む。
すると驚く事に、微かに果物のような匂いがした。
次々と過去の手紙の封を開けて香りを確かめていくと、最近の手紙はすべて香り付きだということが分かった。
どうして今まで気づかなかったんだろう?
古い手紙はどれも匂いが感じられなかったけど、もしかして時間が経ち過ぎて消えてしまったのかもしれない。
手紙についた香りは、ほとんどがリンゴで、時々みかんのようだ。
ふと手にしていたリンゴの香りがする手紙の日付を確認する。
すると4月の物だった。
「……春でもリンゴ?」
季節感を感じさせたいわけじゃないんだ、と気づいたその時、寮内放送が流れた。
「間もなく朝食の時間が終わります。まだの方はすぐに食堂まで来てください」
「あっ……ラブ!急ごう!」
私はラブを抱き上げ、急いで食堂へ向かった。
…………
……
5歳の時にディオンと初めて会った『特別講師室』のドアをノックする。
でも何も反応がなくてガラリと開けると、ソファに横たわるディオンの姿が目に入った。
「あ!いた!」
ディオンが今日は授業日じゃないのに講師会議があるとかで学園に来ていると聞き、ずっと探していた。
早く、昨夜のお礼を言いたくて。
部屋に足を踏み入れると、すぐに小さな寝息が聞こえて来た。
「えっ……、寝てる?」
私は忍び足でディオンが横になっているソファのそばまで近づき、そっとしゃがみ込む。
そして、寝息を立てるディオンの顔をじっくりと覗き込んだ。
本当に寝てる……!
まつ毛、長っ!
しかも寝ている姿まで国宝級の美しさだなんて、と思わず感動してしていると、ディオンのまつ毛がスッと持ち上がった。
サファイヤのような碧い瞳が現れると、その瞳がじっと私を見つめる。
「お、起こしちゃった?」




