表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

未完結のコメディ

「伴死」と宇宙のなかまたち!

「"渦水ばしら"」

「ゲッ。総員、退避~ッ!」


 タン、と「伴死(ばんし)」が、宇宙空間に浮かぶ小惑星に着地する。

 のたくったサイドテールがふわりと揺れて、ミニスカ着物の肘袖から長い袂が羽衣のように宙を泳ぐ。


 彼女のビームかんざしがカキツバタの形から、柱と尾ビレの模型に変形する。

 逆手に太刀を構えた手の前で水の真円が形成されて、円盤ラプトル達が慌てふためいて逃げ出した。


「濤たつまき」

「ダメだ、速すぎ──ぎゃあああ……!」


 真円から渦巻く水の柱が発射され、ラプトル円盤の軍団を貫く。

 多数の断末魔を飲み込んで、渦の柱は遠く遠くまで伸びてゆく。


「……ふうっ。便利ね、水は」

「うお~! 部下のカタキだ、裁断女!」


 バシュン、と音を立てて水の柱が撃ち終わり、反動で伴死は反転しながら起立する。

 その背後、凍てついた岩と氷の小惑星に、山のような巨大蟹の化け物が着地した。


「オレは宇宙ラプトル連合、黒鉄のヤミガザミ! オレの暗闇装甲は、太陽だろうと貫けん!」

「あら。それなら狙うわね、太陽超え」

「ほざけ~!」


 ガザザッ、と蟹が巨体を揺らして接近する。

 握りしめたハサミは、当たればダイヤモンド恒星でも粉々に打ち砕くぞ。


 伴死はポロリと太刀を落とすと、消え薄れる太刀を蹴立てて、拳を握りしめて突進した。


「固定は硬さ、硬さは威力。"凍氷(こおりひ)もしばり"!」

「うぬ、このオレとボクシング対決をはかるだと!? 舐めるな~!」

「裁断のカミソリパンチは殻砕く。"硬さ"斬り! ワン・ツー!」


 ジャブ、ジャブ、ストレート。フック、フック、アッパーカット。

 互いに拳とハサミの激しい応酬を叩き込み、圧し合い圧され合い、素早く細かく動きながら、小惑星をリングにする。


「何が裁断だ~! キサマのハサミは、ヘナチョコパンチ! 紙キレひとつとて、断てるものかっ」

「確かに硬い。けど、終わりよ!」


 ボッコォオン! ついに蟹の振り下ろしに、放たれたアッパーカットが闇のハサミを撃ち砕いた。


「ヒギャァアアアッ!? な、なぜ……?」

「耐久力に怠けすぎたわね。あんたが無防備にハサミで受けた、わたくしの拳の一発一発に"硬さ"を斬る威力が込められていたのよ」

「ヒッ、イヒィイイ~ッ! ハギャァアア~!」

「待ちなさい!」


 バッと身を翻し、ガザザザと蟹が逃げ出そうとする。

 すかさず伴死は頭のかんざし、3本の輪鎖を激しくキラつかせた。


11と22(レクトルージョン)の馬(タリアトーレ)!」

「ぐわぁ~! ガキーン!」


 繰り出されたストレートパンチは氷の竜巻と化して、無数の氷柱と共に蟹を襲い、凍てつかせる。

 かんざしの形が激しい渦巻き形となって、伴死はビームの太刀を取り出した。


「"空風あなあけ"。吸引アトラクタースパウト」

「カチコチ、カチコチ……バギィイイイッ!」

「空間断裂。"氷ごと"斬り!」


 氷漬けの蟹の頭上に巨大な暗い穴が開き、でかチルド蟹が凄い音を立てて穴へと吸い込まれる。

 穴へと伴死が太刀を振るうと、冷凍蟹は風穴ごと真っ二つに砕けてキラ消えた。


「"ふし鳥炎"。ふう……」


 かんざしがまたもや変形し、長銃と菓子袋の模型をとる。再生の炎が伴死の体内を駆け巡り、戦いの消耗をかき消した。

 その直後、


「……んっ? えっ、はっ?」

「恐竜装甲戦車ディラナファガナス見参! ジュラバグ核弾頭、ファイヤー!」

「で~っ!? ひええええ!」


 伴死が慌てて小惑星を蹴って飛び立ち、氷と岩の足場が恐ろしい爆発にチリと化す。

 なびく袂に挟まれながら、宙を立ち泳ぐ伴死の前に、天体サイズのオバケ戦車が無限軌道で現れた。


「よく今のをかわしたな、褒めてやろう! だが、次は上手くいかんぞ!」

「や、山が喋ってる……鋼鉄の山が喋ってるわ」

「放て! 200mmマシンガン機銃!」


 ズガガガガガガ……! 巨大口径砲から、彗星の雨が撃ち出され、次から次へとハテノ銀河の美しい星々を砕いていく。

 伴死は雷となって必死に避けたが、機銃の発射速度は凄く速い。少し疲れたら、ミンチ肉と化して消滅するだろう。


 伴死はかんざしに手をかざし、開いた本と草葉の冠形に変えた。

 ふっ、と頬を膨らませて、太刀から離した手を唇に添える。


「"草惑(くさまど)みわざ"っ。くらまし花粉(はなご)!」

「わ~!? 何も見えない、レーダーが壊れた! おのれ、ビーム粒子のチャフか!」

「無敵神話よ、いざさらば。"岩絹ごろも"、太刀まとい」


 ビーム粒子の煙幕に包まれて、滅茶苦茶に核弾頭を乱射する装甲戦車。

 取り出した二振りの小太刀から帯状の斬撃を繰り出して、伴死は流れ弾に対処する。


 彼女が戦車に背中を向けると、かんざしカキツバタが、いっそう激しく瞬いた。


「終わりにします。詠みなさい、戦車。辞世の俳句を」

「こ、こんなハズはない! オレは戦車、宇宙の戦車! 星を踏み砕く無限軌道は、オレは無敵のはずなのだァアアアアッ!」

「最強数字。11と22の(レクトルージョン)午馬骨(タリアーレ)!」

「字ィ、余りまくり~っ! ウギャアアアアアアッ!」


 振り向きざまに繰り出された、岩色の巨大帯状、斬撃。周囲へと広がる帯は、戦車を砕き、星を砕き、また宇宙の空間さえ砕き散らした。


 巨大な戦車が弾けて消えて、伴死は一瞬、目が眩む。

 そんなわけで、彼女は遥か彼方から迫り来る客に、対応するのが遅れてしまった。


「うっ……。へえっ?」

「ヒャッハァーッ! 死ね死ね死ねぇ~っ!」

「ぐぅうううううっ!? ゲホ」


 ドッゴォオオオン! もの凄い音を立てて、刃を備えた魚雷が伴死へ激突して、跳ねとばす。

 宇宙規模の交通事故に、伴死は人間なら体が引き千切れる程に、頭と爪先を限界まで伸ばして「く」の字になる。


 ブバッ! と、吐血が撒き散らされて、伴死は宇宙規模でクソデカい亀が背負う惑星ブリオッシュへと墜落していく。

 そして炎の隕石が発生して、宇宙アークケロンが目を見開くが、すぐにまた眠そうな顔に戻った。


「んっ? ……おやすみなさ~い」

「ンン~? 何かヒイちまったかな……まあ、いいっ。この宇宙上忍、鮫ニンジャーグ! 触れるものは皆、死あるのみ!」


 魚雷が突撃形態を解いて、その恐るべき正体を現した。辺りを見回し開き直ると、再び彼は絶叫のように笑い立て、それから遥かな宇宙へラムジェット機構で飛び出した。


「ヒャ~ハハハハ! みな殺しだあっ。ヒィヤハハハハ……!」


 狂ったように喚き立てて、ハテノ銀河を通過するサメ忍者。彼の暴走が止められるのは、また別の話だ。


「──あ~っ! 熱い、熱イ、熱熱熱っ! ハッチャッチャッチャ~ッ!」


 さて、マドレーヌ通りの上空。オシャレな西洋都市の空に、隕石が落ちてきて爆発した。


「ぎゃああああ~っ!? 熱いィイイイイ!」


 ひゅ~っ、ぼとっ。

 とても主人公とは思えない情けない着地音で、燃え残った焦げゴミがカフェテラスの席に転がり込む。


 即座に良く訓練されたウェイトレスが駆けつけて、メニュー表を差し出した。


「ご注文は?」

「あっ。えっと……抹茶ラテを3つ。それと、ツナときゅうりのサンドイッチ。たまごと、タルタルエビフライのもお願い」

「抹茶3、ツナ、たまご、エビフライサンド1つずつ。少々、お待ちください。5分ほど」


 そこで、席に座って人心地ついた伴死の耳に、聞いた声が飛び込んでくる。

 声の主は無限軌道を器用に動かして、カフェの座席でメニューを開いた。


「おうっ。オレは今のやつの注文に、足してくれ。ソーダフロートとパストラミサンド、ショートケーキとカレーライス。それからナポリタンとピラフにラテマキアート、マカロンにバニラアイスにチョコレートパフェに……」

「かしこまりました。15分ほど、お待ちください」


 装甲戦車がパイプをくゆらせ、蒸気鳥新聞を広げてリラックスする。

 そして、横目で伴死を見ると、互いにすっとんきょうな驚愕の声を、あんぐり口から間抜けに発した。


「あっ!」

「あんっ!?」

「ああ~っ!?」


 世界全体が暗転し、伴死の驚き顔だけが、切り取られたようにぽつんと残る。

 数秒後に彼女は、別の事柄に焦りだした。


「あっ……ヤバ。財布もってないわ、わたくし」

「ここはマクロフのカフェ7127号店で、ワタシはウェイトレス型マクロフです。大丈夫ですよ」

「ならいいか~」


 暗転。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ