なんのへんてつもない石
ある日、僕は学校帰りに公園に行った。
公園で石を拾った。
なんのへんつもない普通の石だったけど、僕はなんだかその石の形や、色が好きだったから、家に持ち帰った。
公園から帰ると、お母さんはいつものように僕の学校でどんなことがあったか聞いてくれて、一緒にケタケタ笑ったり、お父さんは石を見て僕に話しかけてきてくれた。
お父さんは、裕太がそんなにその石を気に入ったなら、もしかしたら、特別な石かも知れないぞ。なんて言いながら、次の日には石の図鑑を買ってきてくれてみんなで図鑑を見ながら、楽しく話していた。
次の日の夕方、お父さんとお母さんが買い物に行っている間に僕の家のチャイムが鳴って、リビングのインターホンを除いてみると、変な格好をした男の子がドアの前に立っていた。
僕が、どちらさまですか?
と尋ねると、その男の子は僕はマーベス星のプリンスだ。石を貰いにきた。という。
変な人が来たら、ドアを開けちゃだめよとお父さんお母さんから、言われていたので、お父さんてお母さんはいません、と言ってインターホンを置いた。
すると、なんとリビングにその男の子が立っている。
僕は、うわーー!っと叫んで腰を抜かした。
殺されると思って座りながら手で後退りする僕。
すると、変な格好の男の子は言った。
驚かせてすまない。さっきは瞬間移動と空間すり抜けを使わせてもらった。私はマーベス星のプリンス リロイだ。
君に危害を加えるつもりはない。
私はただ石がほしい。
僕は、あの石のことだとすぐにわかった。
リロイはさらに続けて言った。
もちろん、ただでとは言わない。
僕の星、マーベス星では地球で言うところのダイヤモンドという石がそこら中に落ちている。君の持っている石と、私がマーベス星から持ってきたダイヤモンドを交換してほしい。
頼む。
リロイは、跪いて、僕に頭を下げた。
僕は震えながら、あの、ちょっとよくわかんないんだけど、君は石がほしいの?どうやって家の中に入ってきたの? カギを持っていたの?と男の子に尋ねた。
男の子は、驚かせて本当にすまなかった。
さっきも言ったように、瞬間移動と、空間すり抜けを使った。マーベス星では誰でも出来る事だ。と言った。そうとも、石がほしい。
だからこうしてプリンスの私が跪いている。
石をくれないか?
僕は、殺されることはなさそうだな、となんとなくわかったから、石はあげたくない大切だから と答えた。
すると、リロイは、ただでとは言わない
ダイヤモンドと交換にと言っている
このダイヤモンドを売れば 地球ではかなりいいお金になる お願いだ 石をくれと言う
僕は、やだよー。今日またお父さんお母さんとこの石の事でたくさん話す約束をしてるんだと言うと、
リロイは 赤ちゃんみたいに 床に寝そべり手足をジタバタしだした。
石をくれー!どうしても石が欲しいんだい!石をくれなきゃ僕は帰らないぞ!
と泣きじゃくり始めた。
僕は呆気にとられてしまった。それにちょっぴり怖かった。
僕は、二階の自分の部屋に走って逃げた。
30分してリビングを覗いたら、男の子はまだ一人で泣いてる。
僕はなんだか、かわいそうになって、石をあげるよと男の子に言った。
男の子は、
本当かい!嬉しいよ ありがとう!
とさっきまで泣いていたのが嘘のように顔をくしゃくしゃにして笑って、石を受け取った。
次の瞬間 リロイは消えていた。
ダイヤモンドという石を残してー。
お父さんとお母さんが帰ってきて、僕は今さっきあったこと、ダイヤモンドという石を男の子が置いて行ったことを話した。
お父さんもお母さんはパニックになり、警察に電話しようと言っていた。
警察という言葉を聞いて、警察が来るの?怖いよ〜と今後は僕が泣いてしまった。
お父さん、お母さんは、何か話していたけど、警察は呼ばないことになって、でもはてさて このダイヤモンドをどうしたらいいものやら、、、と話していた。
裕太も怖かったわよね 石も無くなっちゃったし、悲しかったよね。と お母さんが僕を抱きしめてくれて、僕は怖かったし、石もなくなって悲しいしで、母さんの腕の中でたくさんたくさん泣いた。
結局、ダイヤモンドは、家に置いておくけど
売らないこと、あとリロイがまた来たら、ダイヤモンドを返すこと、僕が一人になると危ないから、しばらくの間は出来るだけ僕は一人にならないこと。
をみんなで決めた。
それから、しばらく経った ある日
僕は学校帰りに、道に落ちていた空き缶を蹴りながら歩いて家に帰っていた。
すると、目の前に、あの男の子がまた現れた
僕は、びっくり仰天した。
君!また来たな!
警察を呼ぶぞ!
と僕が言うと、
男の子は、私の姿は他の人には見えていない
と言ってきた。
すると、そこへ近所のおばさんが通りすがったので、おばさん、助けてください!
と僕はおばさんに駆け寄った。
あらあら裕太くん どうしたの?
と落ちつきはらったおばさんに、僕は、変な男の子が僕の石を!ダイヤモンドが!
お父さんとお母さんが警察を呼ぶって!
と、しどろもどろでおばさんに話しかけ続けた。
おばさんは、どうしたの、裕太くん
警察を呼ぶって何か変な人がいたの?
変なことされたの?怪我はない?
と聞いてきたけど、
怪我はないです!ほら!僕の横に変な格好の男の子が!って僕は言っているのに、おばさんは、変な格好の男の子? 誰のことを言っているの?大丈夫? 裕太くん 疲れているのかな? 落ちついて。と僕に言って、僕を家まで送ってくれた。
その間、男の子は見えなくなったけど、家に帰ったら、たまたまお母さんが買い物に行っていて、家は留守だった。
僕は絶望的な気持ちになった。
今度こそ僕は殺されるんだーーー。
二階の自分の部屋に駆け上がって、布団をかぶって震えていると、
リロイは現れた。
君、裕太くんって言うんだね。
僕はマーベス星のプリンス リロイだ。
君を殺しにきた訳じゃない。
ただ、僕は怒っている。
君は嘘をついた! あの石を貰ったのに、僕はぜんぜん幸せにならないじゃないか!
うわ〜ん と 男の子は泣き出した。
僕は布団から、顔だけだし、恐る恐る リロイの方を覗き見た。
すると、リロイはうわん うわん 泣いている。
小さいな赤ちゃんみたいだった。
僕は、お父さん、お母さんは、警察を呼ぶって言っていたけど、どうにもこの男の子は悪い子じゃなさそうだ、と感じていた。
だから、男の子に どうしたの?と尋ねた。
すると、男の子は、石を貰ったのに幸せにならない、僕はプリンスなのにキングもクイーンも 僕に優しくない。
うう、うう、うう
男の子は嗚咽して泣いている。
僕まで悲しくなってきた。
いったい何があったんだろう?
男の子が泣き止むのを待って、事情を聞いてみた。
あの石を貰ったら、君はどうなると思ったの?
すると、リロイは、私は時々マーベス星から、地球を観察しているんだ。ある日、君の家を除いてみると、あの石を話題にして、みんなで仲良く話しているのを見た。あの石は特別に綺麗だから、君があの石を持っているから、君のお父さんお母さんは君に優しいんだと思った。
だから、あの石さえ持って帰ればキングとクイーンが私に優しくしてくれると思ったんだ。でも、石を持って帰ってキングとプリンセスに見せても、自分に見向きもしてくれない。国の仕事が出来る様になる為にもっと頑張りなさい としか 言ってくれない。
君が お父さん、お母さんに優しくされているように、自分も優しくされたいのに、、、。
リロイは、とても悲しそうだった。
キングとプリンスって、君のお父さんお母さんなの?と僕がリロイに尋ねると、リロイはコクリと頷いた。
僕がリロイの立場だったら、とても悲しいだろうな、と僕は思った。
だから、リロイに言った。
マーベス星ってどこにあるの?
僕がマーベス星に行って、君のお父さんとお母さん、つまりキングとクイーンにリロイに優しくしてくださいって言ってあげるよ!
学校は休めないけどもう少ししたら夏休みになるから、夏休みならいいよ!と僕が言うと、
リロイは、そんな事を私に言ってくれるのは君が初めてだよ。ありがとう。と言って。また少し泣いていた。
リロイは、マーベス星に行く方法を話し始めた。
マーベス星は 銀河星よりもっと先にあるらしい。
でも、リロイは、瞬間移動を使えるから、手を繋げば、僕たちはリロイの瞬間移動能力を使って、一瞬でマーベス星に行けるらしい。
マーベス星と、地球だと時間の流れ方も違うから、その日の夜には、僕は自分の家に帰ってこれるらしい。
時空とかなんとか、リロイは難しいことをたくさん話してくれたけど、僕にはさっぱりわからなかった。
だけど、その日の夜に家に帰ってこれるなら、今からマーベス星に行くよ、と僕が言うと、
リロイは、本当かい!じゃあ、僕の手を繋いでと言って、僕はリロイの手をとった。
次の瞬間、なんだか頭がぐるってするみたいな感覚がして、目を開けるとそこはもう僕の家のリビングではなかった。
マーベス星についたよ。ここは、この星のお城、つまり、キングと、クイーンと僕が住む家の僕の部屋だ。とリロイは言った。
僕が最初に見たのは、象だった。
え!ここは動物園なんじゃないの?僕が尋ねると、リロイは、あはははは と笑って、
ここは私の部屋だ。僕は部屋で象とライオンとフラミンゴを飼っているんだ。と言った。
象とライオンとフラミンゴの世話は、召使いがやってくれる。
僕は、なんだか少し羨ましかった。
こんな動物園みたいな部屋に住んで、召使いがいるなんて。
すると、リロイは続けて言った。
でも、動物は僕に話しかけてくれない。
召使いも、本当には僕のことは心配してないんだ。
召使いは、お父さんとお母さんに仕えているから、お父さんとお母さんには逆らわないし、僕にも、立派なキングになってくださいね、なんて言ってくる。
僕には友達もいなくて、いつも一人だ。
リロイは悲しそうに俯いた。
そうか、リロイは学校でみんなとサッカーをしたり、昨日見た面白いテレビの事をみんなで話したりすることがないんだな。寂しいだろうな。と僕は思った。
つづく