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立ち上がれガイ(前編)


 ガイは固い布と棒で作られた担架に乗せられ運ばれていた。彼の巨体を運んでいるのは二人の獣人戦士だった。ガイは体を起こそうとしたが彼の全身は幅広の布でしっかりと固定されており、ふとした瞬間に転げ落ちないようにされていた。


 ガイの目覚めに気づいたのは横を歩いていた、大鷲の獣人だった。巨大な翼を除けば、彼の顔といい背格好といい、人間とあまり変わらないが、猛禽類特有の無感情な黄金色の瞳は、人間のそれとは大きな違いがあった。


「動かないように。重傷です」


 大鷲の獣人は落ち着いた声で言った。ガイは素直に従った。仰臥した状態で目だけを獣人に向ける。


「俺は、いったい……」


「採掘業者のアジトで倒れているのを発見しました。これからフドまで運び、保護します」


「ああ……」


 ガイは自分の記憶を探った。いったい何が起こったのか思い出そうとした。そして雷のような衝動に駆られた。


「メトちゃんは!? 全身に火傷を負った少女がいたはずだ! 無事なのか!?」


「落ち着いて」


 獣人はガイの混乱も想定内だと言わんばかりの冷静ぶりだった。ガイはそんな彼の威厳のある佇まいを見て、落ち着きを取り戻した。


「失礼。……連れの少女がいたはずだ。彼女も保護してくれたか?」


「該当する人物がいるかどうかは分かりません。というのも、400名以上の人々を保護して、手分けして輸送中ですからね。衰弱が激しい者、妊娠している者、子ども、それからあなたのような重傷者を優先して運んでいます」


 ああ……。この人たちは現場に立ち入ったわけではないのか。分担して効率的に怪我人を運んでいるのだろう。ガイは大きく息を吐いた。大丈夫だ、メトは頑丈な少女だ。死ぬはずがない。ガイはそう自分に言い聞かせた。


「……順序があべこべになって申し訳ない。俺はガイという者だ。貴方がたはいったい?」


 ここで獣人は少し驚いた顔になった。それからすっと表情を戻して、


「我々はフドの騎士隊です。周辺の魔物討伐や治安維持に努めていましたが、ここ数年、フド周辺の鉱山地帯で行方不明者が続出する事件が起こっており、その調査を行っておりました。昨日、鉱山地帯を年中覆っていた霧が晴れ、見たことのない地形が現れたので、早速部隊を送ったところ、貴方たちを発見、保護した次第で」


 幻術遣いのグゥラが死んだことで、奴隷採掘場の存在が明らかになったのか。それにしてもグゥラの幻術は凄まじい威力だった。個人でここまで大規模な幻術を扱うなんて桁外れの所業だった。


「前々から、フド周辺の闇市で魔法鉱石を大量に売りさばく業者がいたことは確認されていました。未知の採掘場にしてはその規模が大きく、我々としてもその所在を探していたところだったのですが……。これほど多くの奴隷を動員していたとは。ぞっとする思いです」


「ささやかな花畑の傍に派手に破壊された建物がある。その近くに首を失った中年の男の死体が転がっているはずだ。そいつが今回の件の首謀者……。グゥラと呼ばれていた」


 ガイの言葉に獣人は全く動じなかった。それどころかガイに顔を近づけ、まじまじと見つめてきた。


「グゥラ……。その名前には覚えがあります。十年以上前に失踪したフドの議員だったはず。詳しく調べる必要があるようですね。ところで」


 大鷲の獣人は、担架を運んでいる他の獣人に目配せした。獣人たちは担架を道の上に置くと、近くの岩場に腰かけた。小休止を取るようだ。


 大鷲の獣人がガイを拘束している布を外す。やっとまともに息ができる心地がして、ガイはほっとした。


「失礼ながら、“魔遣りの火”のガイ様でしょうか」


「ああ……、そうだよ」


 担架の上で体を起こしたガイに、獣人は深く頭を下げた。


「お噂はかねがね……。ドゥラ街道での活躍、ガンヴィでの数々の戦功、そして今回のグゥラ討伐。飛ぶ鳥を落とす勢いの魔物退治屋でいらっしゃいますね」


「いや。大したことはない……」


 ガイは複雑な心境でその言葉を受け止めた。真に称賛の言葉を浴びるべき少女の無事が分からない。今すぐ駆け出してメトを探し出したいが、全身がバラバラになりそうなほどの激痛が、絶えず襲ってきていた。


「フドを長い間苦しめていたグゥラ討伐の功績は言葉では言い表せないほどです。丁重にフドまで送り届けます。恐らく報奨金が出るでしょう……。ひょっとしたら名誉市民の称号さえ授与されるかも。それほどの活躍です」


「大袈裟だな……。そんなことより、俺には連れがいたんだ。メトって名前の少女なんだが、彼女の安否が知りたい。相当な怪我を負っているはずなんだ。どうにかならないか」


「ガイ様より重傷なのであれば、一足先にフドまで運ばれているはずです。フドには腕の良い治癒術師がいますから、無事にフドまで着きさえすれば、命は助かるでしょう」


 メトが魔物の肉しか食べられないことが気がかりだった。意識もまともに戻らない中、普通の食事を与えられたら、死にかけの彼女にトドメを刺しかねない。それだけは避けたかった。ガイ以外にそれを知っている者はいない。つまりガイが何とかしなければならない。


「報奨金も、名誉市民の称号もいらない。その代わり、一刻も早く彼女に会いたい。それだけが俺の願いだ」


 ガイの言葉に獣人は深く頷いた。


「承知いたしました。フドに到着したら、メト様の安否確認を最優先に行いましょう。すぐにお知らせします」


「ワガママを言ってすまない。救出してもらっておきながら……。本当にありがとう」


 ガイはここで全身の力が抜けた。少し安堵したら緊張の糸が切れて、強烈な眠気が襲ってきた。ガイは担架に横になり、瞼を閉じた。そこから沼に沈むかのような深い眠りに就き、全身の痛みとメトを失うことの恐怖とほんの少しの安堵感が影響し合った、不気味な夢を幾つも見た。


 



   ※



 夢から覚めるとそこは病室だった。寝台に寝かされているガイは包帯でぐるぐる巻きにされていた。全身の痛みがあまりにひどいので体を少し動かしただけで呻き声が出た。今まで自分が見ていた夢の内容を思い出そうとしたがうまくいかなかった。ずっと寝ていたはずなのに疲れている気がする。悪夢を見ていたのだろうか。


 病室には他に7名の負傷者が寝かされていて、看護者が一人、食事の世話をしていた。ガイが目覚めたことに気づき、駆け寄ってきた。明るい表情の女性で、


「ガイさん! 目覚めたんですね! ルシドさんを呼んでこないと!」


 と、嬉しそうに言った。あまりにも明るく言われたのでガイの気分までつられて明るくなり、笑みを返す余裕さえあった。全身の痛みは尋常ではなかったが、女性の笑顔はそれをも覆す威力があった。


 看護の女性は部屋を出て行って、すぐに戻ってきた。例の大鷲の獣人がぬっと姿を現した。彼がルシドという名前なのだろう。


「ガイ様。お目覚めになられましたか。ひとまず安心いたしました」


「どうも……。メトちゃんは?」


 開口一番がそれだったので、ルシドは驚いたようだった。しかしすぐに頷き、


「保護しております。発見当初は全身に火傷を負い、脈がなく呼吸も止まっていた状況だったそうですが、驚異的な生命力で息を吹き返し、なんとか命を繋いでおります。火傷の具合は良好だそうですが、衰弱が酷く、食事も受け付けないとか」


 魔物の肉じゃないと栄養にならない。普通の食事は毒になると話していた。衰弱するのも当然だ。ガイはいてもたってもいられなくなって、寝台から立ち上がろうとした。慌てて看護の女性が押し戻す。


「安静にしてください!」


「世話をしてくれてありがとう。でも、俺が行かないとメトちゃんが死ぬ」


 ガイは確信していた。ルシドはしばらく黙っていたが、やがて二本の杖を持ってきて渡した。看護の女性に睨まれて気まずそうにしていたが、もちろんガイは彼に感謝した。


 二本の杖に寄りかかるようにして何とか進んだ。メトが寝かされている部屋はそう遠くはなかった。それでも移動するのに相当時間がかかった。メトの病室は個室であり、他の病人はいなかった。しかし白衣を着た女性がメトの傍らに立ち、手を翳して淡い光を放っていた。


「先生。ガイ様がお目覚めになられました」


 先生と呼ばれた女性は振り返らずに治癒を続けていた。


「そうか。良かった、良かった。この子はガイさんの連れなんだっけ?」


「そうです」


 ガイが返事をすると、先生はぎょっとして振り向き、それからルシドをこれでもかというほど睨みつけた。


「絶対安静! 傷が開くどころじゃない、死にますよ!」


「その子――メトちゃんのほうが危険な状況です。そうなんでしょう?」


「ええ。しかしあなたに何ができるというんです?」


「メトちゃんが食事を受け付けずに困っているんでしょう? 俺なら解決できる」


 ガイは部屋の隅に置いてあったメトの荷物に目をつけた。なんとか杖を使って近づく。そして倒れ込むようにして荷物の近くに座り込み、彼女がいつも携行していた鞄の中を漁った。


 金属製の容器を幾つか見つけた。中を開けると魔物の肉があった。黒ずんだ肉が糸を引いていてぞっとする。しかしこれしかない。ガイは立ち上がって容器の中を指し示した。


「これを磨り潰して、メトちゃんに食べさせてください」


 ルシドと先生は顔を見合わせた。そして信じられない、という表情になった。


「正気ですか? これ腐ってますよ。それに凄い臭い……」


 ガイは必死に考えを巡らせた。


「ただの肉ではなく、多種多様な香草や薬草を組み合わせて彼女用に調味した、特性の料理です。騙されたと思ってこれを与えてみてください。これまで受け付けなかった食事がすんなり進むはずです」


 先生はそれでも疑っているようだったが、ルシドが受け取った。


「分かりました。あなたほどの方がそこまで言われるのなら、従いましょう。先生、よろしいですね」


 先生は渋々頷いた。


「私も治癒方法に行き詰まっていたし、仕方ないね。やってみるか」


 そして間もなく魔物の肉とは知らせずにメトに食事が与えられた。先生が言うには普通の食事を食べさせてもすぐに吐き戻すか、強烈な下痢で体が全く受け付けなかったそうだ。今度の肉を飲み下させると、拒絶反応は全くなく、一同を驚愕させた。


 先生はすぐさま荷物の中の金属容器の数を数えて、中身を検分した。


「三日分はあるか……。ガイさん、追加の食事を用意できますか」


 ガイはすぐには頷けなかった。魔物の肉の調達? メトと一緒に旅をしていた頃は強く意識していなかったが、いざ自分がやるとなると、これほど困難なことはなかった。協力者がいれば何とかなるだろうが、メトの躰の秘密を勝手に打ち明けることになりかねない。彼女の意識が全くない今、それをするのは最終手段だった。


 なんとかガイが一人で魔物の肉を調達しなければならない。市場に出回っているものでもなし、魔物を討伐しなければならない。健康状態でも一苦労しそうなのに、今のガイは満身創痍だった。まともに魔法を撃てるかどうか……。撃てたとしても、一発で仕留められるとは思えない。


 ふと、ガイは気づいた。メトの荷物に紛れて置いてある小刀。こんなもの、彼女は持っていたか?


 博士。メトに改造を施し、そして彼女の肉体を乗っ取ろうとした邪悪な男。意識を失った彼女の傍に、ずっとこの男がいた。はらわたが煮えくり返る思いだった。ガイはそれを叩き割ろうと思った。それ以外の選択肢はないはずだ。


 しかし。


 今のメトを救えるとしたら、この邪悪な男しかいないのではないか。ガイは悩んだ。協力者を募ってメトに魔物の肉を食わせるのか、博士の力を借りてこっそり魔物の肉を調達するのか。前者ならメトは異常体質者として周知されることになる。後者なら彼女の秘密は守られるが博士がまた彼女に毒牙を向けるかもしれない。


 どちらが正しいのか。ガイは脂汗をかいた。考えても答えは出なかった。もし、メトが同じ決断を迫られたら、彼女は博士の力を借りる気がした。そうやって彼女はこれまで旅を続けてきた。それなら彼女の意思を尊重すべきか? しかしその考えが今回の危機を招いた。


 いや、そもそも博士の力がなければ、グゥラを相手に全滅していたかもしれない。結局、博士は諸刃の剣となって、メトとガイに力と苦しみを与えてきた。そこを区別することはできない。


「ガイ様、そろそろ病室に戻りませんと……」


 ルシドが呼びかける。ガイは頷いた。そして先生に向き直った。


「メトちゃんの食事の件は俺がなんとかします。どうか、彼女をよろしくお願いします」


 ガイは頭を下げた。そして荷物の中から小刀を拾い上げた。ルシドに支えられながら自分の病室に戻る。寝台に横たわると、どっと疲れが押し寄せてきた。そのまま眠りそうになったが、小刀を握りながら頭の中で呼びかけた。


(おい、博士……。聞こえるか、博士)


 しばらく返事はなかった。しかしずっとしつこいくらいに呼びかけ続けると、


《黙れ。貴様のような凡愚と話をするつもりはない》


 返事があった。ガイは深く息をついて自分を落ち着かせた。


(俺はお前を許さない。絶対にお前の思う通りにはさせないからな)


 返事はなかった。しかし辛抱強く同じ言葉を繰り返した。やがて観念したのか、博士は話し始めた。


《そう思うならさっさと叩き割ればいい。所詮私は自らの意思で動くこともできない、呪われた武器だ。お前のような男でも簡単に壊せるだろう》


(……メトちゃんが死にかけている。彼女を救いたい。協力しろ)


《ふん。もうメトには興味が失せた。お前が余計なことを吹き込んだおかげで、メトはもう二度と私に肉体の主導権を握らせるようなことにならないだろう。彼女の頑丈な肉体は私にとってこれ以上ないほど魅力的だったのだが》


(お前にとって、メトちゃんは単なる道具でしかないのか?)


《それ以外に何がある》


(そうか……。それなら俺も、心置きなくお前を道具として扱える。お前を使って魔物の肉を調達して、彼女を生かす。協力しろ)


《協力なんてすると思うか? そもそもお前には私を扱えない。三流魔法使いが》


 ガイは小刀を自分の胸の前に持ってきた。


(昔から、俺は勉強だけは得意だった……。こんなナリで、実践より理論派だった。だからお前がどうやって形状や質量を自在に変化させているのか、見当はつく。要は魔法を応用した物質配置転換技術だろう。瞬間的に形を変えていることから、恐らく簡単な魔法で命令コマンドを組んでいるはずだ。つまり魔法使いの俺が本気になれば、お前の協力なんてなくとも、お前の形状を変化させることができる)


《マヌケが。そんな簡単なことではない。お前のような凡骨では不可能――》


 ガイは博士を小刀から小さなハンマーへと変化させた。博士はしばらく絶句していた。


(マヌケはどっちだ。お前は所詮道具だ。自ら進んでそうなったのかは知らんが、自覚はあったのだろう。でなければわざわざあんな切羽詰まった状況で肉体を手に入れようとするかね。便宜上、簡単な魔法詠唱で自分の形状を変化させる仕組みを構築する必要があった。しかしそうなると他者に利用されかねない。その点、メトちゃんはお前にとって都合のいい使い手だった。彼女の怪力ならどんな重さ、形状の武器でも軽々と扱えるだろうし、彼女に魔法教育を施したのは他ならないお前――。余計な知識を与えていないとなれば、安心して彼女の手の中に収まっていられる)


《貴様……。私を使えると本気で思っているのか? 今すぐ大剣に変化して、お前を圧し潰してやることもできるんだぞ》


(抑え込んでやるさ。俺には魔法の才能はなかった……。でも必死に知識を蓄えて、理論だけならいっぱしの魔法使いになれたと自負している。お前の形状を変化させるのに強い魔法はいらない。となれば俺の得意分野だ)


《……まともな死に方を選べると思うな》


(そっくりそのままお返しする。メトちゃんが目を覚ましたら、彼女にお前の扱い方を伝授してやる。本当に俺が彼女の師匠のようになれるとは思っていなかったが……。もう彼女はお前に振り回されることはない。覚悟しておけ)


 博士は沈黙した。その後、いくら挑発しても返事はなかった。眠気が消し飛んでいた。ガイは寝台に横たわって天井を睨んでいる間、静かに決意を固めていた。手には再び小刀に戻した博士が握られている。微塵も油断しない。隙を見せない。殺意を漲らせている博士を傍に置いておくのは恐怖だったが、ここが正念場だと承知していた。


 夜になり、朝になり、昼になった。ガイは立ち上がった。全身の痛みは薄らいでいた。恐らく気分が高揚しているせいだ。ガイが着替えて病室を出ようとすると、たまたま通りかかった看護の女性が凄い剣幕で怒鳴りながら押し戻そうとした。


「世話になった。ありがとう」


 ガイは女性を押しのけた。尻餅をついた女性を申し訳なく思いつつも、手加減できるほど繊細な躰の使い方ができなかった。痛みで全身が悲鳴を上げている。


「ガイ様! どちらへ!?」


 病院を出たところで、ルシドが追いかけてくる。ガイは振り向いた。


「フドに魔物討伐ギルドはあるかい?」


「ありますが……。いったい何用で」


「魔物の情報が欲しい。今から魔物の討伐に行ってくる」


「なっ……。その躰で!?」


「もう平気だよ。躰がなまって仕方ない」


「そんなわけが……。メト様の食事の調達に行くのでしょう? 何か特別なものが必要なら我々が調達してきます」


「ありがとう。フドの人には感謝している。命の恩人だ。だが、ここまでだ」


「ガイ様……」


「せめてこの近辺の魔物討伐を果たして恩を返したい。それだけの話だ。本当だ」


 ルシドは首を振った。


「……ギルドまで案内します。ガイ様の英名はフドにまで轟いていますから、きっと無下にはされないでしょう。商売敵として敵視される可能性もありますが」


「報酬は要らない。と言えば歓迎してくれるんじゃないかな?」


 ガイの言葉に、ルシドは心底当惑しているようだった。しかしギルドまで案内してくれた。ガイは全身の痛みと戦いながら歩いた。手にはしっかりと小刀が握られている。色々と試して、ある程度自在に変形できるようになっていた。しかし実戦で通用するかは未知数。メトとは違い、ガイには頑強な肉体がない。


 しかしやるしかない。メトを救うには戦うしかない。懐には彼女の秘密が書かれた紙を忍ばせていた。自分が死んだとき、遺体を回収した人間がきちんとメトに魔物の肉が必要だということが伝わるように、昨晩したためていた。もちろんこんなものは誰にも見せたくはない。最後の保険というやつだった。


 必ずメトを助ける。この決意が揺らぐことはない。包帯で痛々しい体を抱えながら、ガイの心は燃えていた。





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