5、意外な敵
私は神父。マイナル教に忠誠を誓う者です。私の手元にはエリスという敬虔な修道女がいます。エリスは両手に手錠をかけられ、天井から吊るされています。ここは王都の郊外にある教会です。私はエリスを連れ出すとこの教会に誘いました。そこで待ち構えていた女勇者ビアンカ様がエリスを捕えました。エリスは聖女候補で高い魔力を持ちます。私はビアンカ様にエリスを引き渡すように誘われ、女と金で懐柔を受けました。ビアンカ様には散々遊ばしてもらったのです。
「勇者様、神父様、このようなことやめてくださいませんか? まだ後戻りできるはずです」
エリスが生意気にも私たちを説得してきます。ビアンカ様が肩をすくめます。
「神父さぁ~~ん、呪い発動させてぇ~~~」
ビアンカ様が甘えた声を出します。私はエリスにかけた呪いを発動させます。
「キャアアあああああああああッ」
エリスが絶叫しながら苦しみます。フフフ、いい気味です。私の娘を差し置いて聖女候補になっているのですからね。調子に乗った小娘にはいい罰です。
「エリス、幼馴染のアンタが聖女候補とは出世したわよねー。どう? 私たちの仲間にならない? 魔王様もきっと喜ぶと思うわよ」
「魔王……まさかあなた……」
「私は魔王様の女よッ。オホホ。今更気づいたの。相変わらずトロくて鈍い子ね。アンタは」
ビアンカ様は胸を張ります。そう、ビアンカ様は魔王様の愛人です。
「フフフ。まあ、頭の良いクラッドはうまいこと追放できたし、もう私の邪魔をする者は誰もいない。さあ、エリス。私に屈服しなさい。王国を乗っ取って遊び暮らしましょう」
「幼い頃からあなたは強欲だった……でもここまでとは。悪魔に魂を売ったのですね。この人でなし!」
「フン、せっかく仲間に加えてあげようってのに何よ、その言い方。まあいいわ。仲間にならなければアンタの父親を殺すだけだけど」
「なッ」
「そして母親は奴隷として売り飛ばす。どう? エリス」
「……うう、卑怯者……」
「フフフ。仲間になってくれて嬉しいわ。エリス」
手錠が外れ、エリスは光の輪に包まれました。エリスを手駒にできるとは。幸先がいいですね。
俺たちは王都に到着した。とっくに日が暮れている。
「レイカ。教会には誰もいないぞ」
「まさか……もう手遅れだったのかも……」
稲光がする。俺たちは教会の外に出た。王城の真上に城が浮かんでいる。王都の人々が外に出て騒いでいた。
そして漆黒のドレスを着た女性が妖艶な笑みを浮かべて上空に浮かんでいた。
「ようこそいらっしゃいましたわ。クラッド様ぁ。ウフフ。ワタクシ、エリス・ラルクシュ・ブライデルと申しますの。そうそう、あなたの幼馴染のエリスですわぁ。クラッド様、魔王様に屈服し、配下となってくださいませ。でないと王族の皆さんを皆殺しにしますわよ?」
毒々しい口紅をつけたエリスは悪魔のように黒い翼を広げ、歪んだ笑みを浮かべて俺たちを見下ろしていた。