2、親友に奪われた婚約者
実家の豪邸を叩き出されると金髪のイケメンと幼馴染の女が俺を待っていた。リスカ。俺の従姉妹で優しい性格の美少女だ。そして俺の婚約者でもある。
「リスカはお前と婚約破棄するそうだ」
金髪の男がニヤニヤ笑いながら話しかけてきた。嫌な予感がする。
「な、なぜだ……」
「ごめんなさい。クラッド。でも今のクラッドは冒険者でも公爵家の嫡男でもない。ただの無一文よね? そんなので生活できるわけないじゃない。結婚しても生活できないわよ……」
「と、いうことだ」
「てめえ! ランドルフ! お前、リスカに変なことを吹き込んだな?」
「おっと暴力は良くないなぁー。落ち着けよ。君はビアンカにも御父上にも見捨てられた。ま、この町にもいられんだろうさ。クックック。無能な君に公爵家の跡取りなどふさわしくない。早くこの町を出ていきたまえ!」
俺は握りこぶしを握る。ランドルフはいい奴だ。親友だと思っていたのに……。
「もういい。出ていく」
「ああ、出ていきまえ。リスカは僕が幸せにするよ」
ランドルフの意地の悪い声が聞こえる。俺は足を速めた。
その頃の王城。第四王女ユーフェミリは玉座の間で怒りを露にしていた。
「お父様。クラッドは貴族の均衡を保っていた象徴でした。クラッドがいなければ、貴族の均衡が保てませんわ!」
美しい王女は大声で力説する。王は黒い顎髭をしごいた。
「そうだな……クラッドの父親も何を考えているのだ……クラッドは貴族たちに、貴族の令嬢たちにも人望の厚い男だ。ユーフェミリもクラッドを信用している……」
「はい。彼こそは大賢者の再来と思っています。クラッドの薬草調合は素晴らしいですわ。私も政務での疲れを癒してもらいました」
「ブラッドストーン公爵……余の弟でありながら時勢の見えぬ男だ。やはりあの悪女の息子であるせいか……」
王は呆れたように溜め息を吐く。クラッドの実家は早くも没落の兆しを見せていた。