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不気味な顔のクマ

作者: みくた

 家にはクマのぬいぐるみがある。私が小さい頃におじいちゃんが買ってくれた物だ。

 ただ、このクマはピエロのようなちょっと不気味な顔をしている。でも、そこがまた可愛かったりもする。

 貰ったときからずっと一緒にいたクマだが、今では幼稚園の息子のお気に入りだ。


 そして、私はある日夢を見た。

 そこはどこかの花畑で、目の前には小さな木の椅子にちょこんと座るクマ。

「今まで一緒にいてくれてありがとう。」

 突然、クマが子供の声で喋り出す。

 私は驚くことなく当然の事のように受け止める。

「でも僕はもう行かなきゃ。」

「どこに行くの?」

 寂しそうに言うクマに私は聞いた。

「僕を必要としてくれる人の所だよ。もうすぐ迎えがくるから、その時は笑って見送って欲しいな。」

 クマの不気味な顔が笑ったような気がしたところで目が覚めた。


 そして数日後、遊びに来た三歳の姪がクマをエラく気に入り、家にいる間中片時も離さず持っており、帰る時間になると離れたくないとついに泣き出してしまった。

 姪を迎えに来た弟は、私がこのクマを大事にしていることをよく知っているため困り果てている。

 しかし、私は夢でクマが言っていたことを思い出していた。


 必要としてくれる人の所へ行く。


 ああ、この事か・・・

 そう悟った私はクマを姪に譲ることにした。

 息子も名残惜しそうではあったが了承してくれた。

 姪の顔がたちまち笑顔になり、腕の中にいたクマも心なしか笑っているような気がする。

 そして、玄関を出ていく姪の腕に抱かれた不気味な顔のクマを、私は笑顔で見送った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 共に過ごした日々の思い出を置き土産にして、自分の事を必要としてくれる人々の許を渡り歩いていく。 クマのぬいぐるみにも、歴史ありですね。 このクマのぬいぐるみも、いつかは姪っ子ちゃんの許を離…
[一言] クマさんたくさんの人に愛されてて良いですね!
[良い点] 小さいときからずっと大事にしていたクマくんとの別れはさみしいですね。 でも姪御さんもすごく大切にしてくれそうです。
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