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銀の硝子  作者: みあ
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Entrance exam

ファンタジーをあまり読まない人が書いたファンタジー小説です。誰かに気に入っていただけますように!

 19世紀イギリス


 あるところに世界でも希少な魔女の一族がいた。彼女らは硝子を操り、その硝子の中に他の魔法を閉じ込めて使う。比較的新しいが適応能力の低さから絶滅寸前である。銀髪の、蒼い目を持っていた。


———彼女らの名を硝子喰いと言った。



 ただの人間の居住区域とは区別された地域があった。そこは所謂、魔法使いの居住区域。そこに大きな学校が一つ。国内では最高峰の学院である。名家の子供達がそこへ通い、将来的には国内を動かす存在となる。大体、10歳くらいから厳しい入学試験を受ける。二人に一人が落ちるという。


 そんな学院の入学試験の日、幼い少女がその門をくぐった。銀髪の、蒼い目の少女だった。職員に年齢を聞かれて答えたよりも背が小さく、もう少し幼く見えた。


 どうせ落ちるだろう、と皆がみくびっていた。こんな魔力量も少なく、頭脳も未発達の状態で受けても一次試験で落ちるに決まっている。……一次試験は筆記だった。二次試験は実戦。……そう、実戦なのだ。受験生同士で己の魔法をぶつけ合って戦うのだ。怪我人は毎年当たり前のように出る。


ところが、その少女はなんと一次試験を一番で合格してしまう。……満点だったということだ。ただ、一次試験は何人も満点が出るので、順位が決まるのは二次試験からだった。



そして二次試験当日。二次試験の内容は実技…実戦だが、何を基準に判定するかというと、受験生は競技場のそれぞれの持ち場につき、一対一で対戦する。自分たちの後ろにはそれぞれ15×15cm×1mほどの石柱に10cmの旗を立てる。この相手側の旗を折れれば勝ちだ。


 競技場に並べられた106人の受験生たちは箱の中から棒を一本引き、書いてあった番号と同じ番号を相手とする。(随分原始的な方法だが、一番不正が少ないという。)


 彼女の受験番号は106番だった。ギリギリに受験応募したのだ。くじを引くと、引いたのは15番だった。相手は、受験番号38番の中級の家の次男坊だった。


「なんだ、ガキか。これなら楽勝だな!」


「…… 」


「なんだ?ビビってんのか?辞退するなら今だぞ。」


「そういうわけじゃないです。……あんまり馬鹿にしないでください。私は明日がかかっているので。」


彼女はここに来てから初めて小声で喋った。


「家が貧乏なのか?可哀想になぁ。でも悪いな、勝たせてもらうぜ。」



『全員持ち場についたようなので、第一次実戦、開始とする!』


相手側は火を主として使う魔法だった。杖を懐から取り出して、幾つかの火の玉のようなものを空中に浮かべる。


「エクスプロージョン !」


その火の玉は彼女の目の前で爆発した。多少のダメージを与えているはずである。


しかし、煙がすぐに切れたかと思うと、彼女は手に何かを持っていた。太陽の光で輝いて見えるそれは、硝子の杖と、それで作った硝子の結晶。胸の辺りにできたそれを杖を持った反対側の手で掴むと、口の中に放り込んでしまった。


「……このくらいなら。大丈夫でしょう。」


彼女は相手側に聞こえるか聞こえないかくらいでそんな独り言を呟く。


「シェイプ ディフォーメーション 」


すると、彼女の周囲に同じ大きさの硝子の結晶が五つ、それよりも少し小さな結晶が一つ。


「スロー 」


その結晶は相手の方へと向かい、飛ぶ。彼は、結晶を壊すように火分子をいくつも繰り出して応戦する。が、結晶が火に当たった瞬間、物凄い勢いで爆ぜた。倍ほどだろうか。


 パキッ


爆ぜた結晶とは別に小さな結晶が相手側の旗を折った。審判が判定を下す。


『勝者、106番!』


相手側は何が起こったのか理解できない、というようだった。


 その後もこれと同様に勝ち進み、最終戦まで残ってしまった。彼女としては、予想外のことでもなんでもなく、かといって自信が満ち溢れているわけでもなかった。


 最終戦は、魔法使いの家の中では超がつくほどの名家、メイアースト家の分家筋の子供だった。自信満々の自尊心の高そうな少年だった。


「後ろ盾もないどころか、受験するための服もまともに用意されないようなガキが俺に勝てるわけないだろう!今までのはまぐれなんだからな。負ける準備をしておいた方がいいぞ。」


そんな挑発に乗せられるわけでもなく、全く表情を変えることなく、埃っぽくて彼女の身長には大きいローブの袖を捲った。


『最終戦、開始!』


アナウンスが聞こえると、少年は杖を構えて、魔法を出していく。流石に名家筋の魔法となると、さまざまな種類の魔法が使える。


「ドロップ ライトニング !」


雷だ。だが、これは彼女にとっては都合がいい。ただの煙幕代わりにしかならない。


「ウォール !」


硝子の壁をいくつも作り、箱のようにする。硝子は電気を通さない。全くもって無意味だったわけだ。


「シェイプ ディフォーメーション 」


先ほどと同じように硝子の結晶を合わせて六つ作る。だが、相手も相手でこれで終わりではなかった。


「フラッディング !」


洪水のような水が押し寄せてきた。これをこの閉鎖的な空間でまともに受けたらたまったものではない。先ほどの壁の箱よりも強度を高めないといけない。


「ウォール ストロング 」


今度は四方をより強化した魔法硝子箱を作り出し、これを防いだ。


「スロー 」


箱の中から結晶を動かす。反転攻撃してくる結晶に気を取られているうちに、小さな結晶が旗を折る。


審査員が、固まってしまい、この結果が信じられないというようだった。それは最終戦相手や、審査員だけではない。会場にいた全員がだった。


『…最終戦、勝者、106番!』


我に返った審査員が震える声でそう言う。


しん…と会場は静まり返ってしまった。何処の馬の骨かもわからないような少女が、名家の首席候補を破り、史上最年少の合格者となったのだから。

ど、どうだったでしょうか…?

主人公の名前が出てこない一話をまたやってしまいました…

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