ひら、ひらり 舞い落ちる花の意
木漏れ日が私を照らす。大きな木の下で心地よい春の陽気を感じながら、私は地面に腰を下ろし、一冊の本を読んでいる。文庫と呼ばれるその本は、どこかへ行き、少し休憩がてら読むのには最適な、それくらいの厚さ。一枚一枚めくるたびに、物語が一つ、また一つと進んでいくのは、どこか、人生の過去を振り返っているようでもある。
ふぅ、とため息が漏れた。人生にも休憩が必要な様に、私の読書の時間にも休憩が必要な様だ。
掛けていたメガネを外して、本は開いたまま、空を見上げた。
今年はなぜか、もう夏が来るぞと言わんばかりの暑さ、気が早い誰かさんの様で、少し笑ってしまった。でも、今日は、春らしく、心地いい風と穏やかな陽の光。
ふわっと一瞬、時が止まった様な風が舞い上がる。
止まってしまった、心の様なそんな......。
それから時を待たずして、すぅーーーっと、心が健やかになる様な涼しげな風が通った。
私の固く結んだリボンが、ゆるり、解け、地面に落ちる。視線が落ちた私を呼び掛ける様に、また風が通る。
ひら、ひらり
呼び掛けに応じる様に、空を見上げた私。風に舞って、何かがゆっくりと落ちてくるのが見えた。気になって、それを目で追う。
時が解放された後の様に、一枚の花びらが私に落ちて本の上に落ちた。
白と黒だけの世界に、桃色が映え、彩った。
私の心、そのもの。
そう思うと、じっとしていられなくなった。そのまま本を閉じた私は少し鈍った体を伸ばし、にこっと笑った。
進むべき道は、過去にあらず、先にあるのだと。
だから、私はまた、先へと進んだ。
そこには「」
そこには......。