第10話 ゲンさんの加入
リョウゲンさんの頭上に輝く黄金色の文字は、彼が【加入者】である証だ。
子爵家次女のアイナに続いて、この領都に来てから二人目の加入候補者を見つけられた。
アイナはまだ条件を満たすどころかお近づきになる事もできてないので、このリョウゲンさんとどちらが先に仲間になってくれるのかわからない。
そもそも、数字があれば必ず仲間になるって言う保証は何もないんだけど。
魔導書を出して、リョウゲンさんのステータスを確認してみる。
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【名前】 リョウゲン
【年齢】 62
【性別】 男
【所属】 大工ギルド アトラ支部長
【称号】 腕利き大工棟梁
【状態】 良好
【基本レベル】 19/19
【魔法レベル】 1
【魔法色ランク】 橙:1
【習得魔法】 【土球】【土壁】
【武術流派】 ――
【魔技クラス】 ――
【習得魔闘技】 ――
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大工さんなのに、魔法が使えるんだ? 『橙1』とは言え、加入してもらって、才能色が加算されるなら助かるってもんだ。
“腕利き大工棟梁”と称号にあるから、やっぱり腕は確かなんだろうなぁ。リョウゲンさんと大工の話をするのが楽しみだ。
「ふむ、そうだな。私の話だけで信じろと言っても難しいのはわかっていた。私とて、ルークの報告を聞いても半信半疑であったのだからな。ナシロの力を見せれば納得するだろう。私がスルナ村で実演して見せてもらった時の様にな」
子爵さんの提案で、館の中にあるボクとリルルの魔法訓練場で、リョウゲンさんとクラノさんに魔法で建物を造作するデモンストレーションを見せることになった。
館の中庭の一角に、子爵さんが用意してくれた訓練場に、皆でやってきた。
この一角には高い壁が設けられており、館の中から内部を見る事は出来なくなっている。
「さあて、んじゃあ早速見せてもらおうかい。オレ達もヒマって訳じゃないんでな」
クラノさんと違って、リョウゲンさんは疑いが強いみたいで、さっきから風当たりが強い。
気に入ってもらえるかわからないけど、とりあえずボクに出来る事をやってみよう。
「では、見ててください。【権能蒐集】!!」
魔導書を出して目を瞑り、フリーメモ欄に、これから建てようとする建物の図面をイメージして描いて行く。
竹筋やセメントの材料となる竹や石灰はもう既に用意してもらっていて、この訓練場に魔法で建てた倉庫に保管してあるが、デモンストレーションだし、今回はただのコンクリート造で建てる事にする。
スルナ村で子爵さんに見せた時は、小さな平屋建ての小屋を建てたけど……今回は大規模な建物をご所望の様だし、そのデモンストレーションとして少し大きめの建物を……そうだなぁ、2階建ての一般的な住宅サイズの建物辺りにしてみよう。
ただし、構造に不安があるので確認してもらった後はすぐに解体しないとな。
2階建ての住宅……どうせだったら、この世界の間取りの基本からちょっと逸脱して、前世の現代住宅の間取りを再現してみようかな。電気もガスも水道もないんだし、ほとんど外見のみの機能しか持たせられないが、“何か新しいモノ”を演出するには良いかもしれない。
図面が完成し、目を見開く。
「では、行きます! 【土匠】!!!」
訓練場の一角に積み上げてある砂、それから倉庫に保管してある石灰が、うねりながらボクの周囲に舞い上がり、それらがそれぞれ混ざり合って結合し、骨材やセメントへと変化していく。
「なあっ……!? な、なんだ、まさか魔法か!? お、おい、今詠唱したか!?」
リョウゲンさんが驚いて周囲に確認するが、子爵さんやトマスさんはそれにはあえて答えず、クラノさんも驚き固まっていて、誰もその問いには答えない。
魔導書に描いた図面の通りに、どんどん合成したコンクリートを流し込んでいく。
完成したコンクリートの化学反応を促進させ、ものの数分で2階建てのコンクリート打ち放し住宅が完成した。
といっても建具は入っていないし、家具も何も入っていない状態なので、完成……とは言えないんだけど。
しかしまあ、二人へのインパクトは上々の様で、二人共アゴが外れんばかりに驚いている。
「な、なんと……ここまでのモノだとは……ゲンさん、どうですか、この建物は?」
クラノさんは建築の事には疎いようで、隣に立つリョウゲンさんに感想を聞く。
しかし、リョウゲンさんの感情は驚きから、建物への興味へと移り、建築のプロとしての目でじっくりと建物を観察している。
「……これは……見た事もねぇ素材……? 石……砂から石を造り出したのか……? いや、石にしては……」
ブツブツと独り言を言いながら、建物に近づいて外壁をぺたぺたと触りながら考察を続けている。
「よろしければ、内部もご覧になってください。一応、人が住めるような形にしてあります。窓やドアが無いので、ちょっと不格好ですが」
そう聞くや否や、こちらには見向きもせずに内部に入って行った。
中を見て回っているリョウゲンさんを余所に、他の人達は外で待機していて、時折クラノさんからの質問に答えたりしていた。
やがて、ひと通り調べ終わったリョウゲンさんが出て来た。
「どうであろうか? リョウゲン。お前の期待に応えられそうか?」
子爵さんが声をかけるが、リョウゲンさんは俯いてしまって反応がない。
……余り期待には沿えなかっただろうか? うーん、となるとコンクリートではなくこの時代で主に使用されている石材で造るか―――
「期待に応えられるかって? ……コイツは、コイツはそんなもんじゃねぇ!!!」
突然顔を上げ、大声で叫ぶリョウゲンさん。
「こりゃあ……この街、いやこの国の建築技術を根本から覆しちまうかもしれねぇ、それだけとんでもねぇ代物だぞ!?」
興奮した様子で、もの凄い形相でボクの方にドシドシとやってくるので、ボクはちょっと腰がひけてしまった。
「こいつの構造的な強度はどの程度なんだ!? 何階建てまで建てられるんだ! ちょっと見た所じゃ梁に負荷がかかりすぎてるんじゃねぇのか!?」
リョウゲンさんに矢継ぎ早に質問を浴びせられて、ボクは一つ一つ丁寧に答えていった。
「―――とまあ、この様な構造になっていまして、中に竹筋が入っていませんので、おっしゃる通り構造的な強度が足りておりません。このままでは危険な建物ですので、これはすぐに解体します」
「なるほどなぁ! 恐ろしく緻密に考えられた構造をしていやがる……確かに、これなら可能かもしれねぇ……よし、決めたぜ! 子爵様よ、このリョウゲン、出来る事は何でも協力させてもらうぜ! オレもこの嬢ちゃんを信じることに決めたぞ!」
「うむ、お前ならそう言うと思っておったぞ! よろしく頼むぞ、リョウゲン!」
「ありがとうございます! これからよろしくお願いしますね、リョウゲンさん!」
「へっ、任しときな! それとなぁ、オレの事はゲンと呼んでくれや!」
リョウゲン、もといゲンさんがそう言った瞬間、ゲンさんの頭上に輝く数字が消えた。
これは―――!!
魔導書がパラパラとめくれて、【加入者】のページが開かれた。
――――――――――
【加入No.】 022
【名前】 リョウゲン
【年齢】 62
【性別】 男
【所属】 大工ギルド アトラ支部長
【称号】 腕利き大工棟梁
【状態】 良好
【基本レベル】 19/19
【魔法レベル】 1
【魔法色ランク】 橙:1
【習得魔法】 【土球】【土壁】
【武術流派】 ――
【魔技クラス】 ――
【習得魔闘技】 ――
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おおっ!? やった!
ゲンさんが正式に【加入者】になってくれた!?
まさか、こんなに早く仲間になってくれるとは思わなかったけど、これは嬉しいね!
という事は、ボクのステータスも―――
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【加入No.】 001
【名前】 ナシロ
【年齢】 6
【性別】 女
【所属】 スルナ村
【状態】 良好
【称号】 風の覇者
【基本レベル】 10/12
【魔法レベル】 10
【魔法色ランク】 赤:2 橙:3 青:2 緑:1 黄:1 紫:1
【習得魔法】 ランク1…【火球】【火波】【土球】【土壁】
【水球】【水霧】【風球】【風香】
【光矢】【光散】【闇矢】【暗転】
ランク2…【火炎】【水壁】【土檻】【熱風】
【火花】【痛火】【人形】【風走】
【毒蛇】【風影】【癒水】【氷結】
【清浄】【麻痺】
ランク3…【炎弾】【火旋】【聖火】【呪焔】
~~~~~~中略~~~~~~~
【習得英技】 ランク6…【権能蒐集】
ランク7…【土工母】
【武術流派】 ――
【魔技クラス】 ――
【習得魔闘技】 ――
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「お、おおっ!?」
これは予想外! なんと、このタイミングで二つ目の英技【土工母】を覚えた!?
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