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第47話 思わぬ来客

「リルル、おはよう!」


「グゥッ!」


 ボクが居間に入ると、今日もリルルとグゥが元気に挨拶をしてくれる。


「おはよう、リルル、グゥも元気だね」


 この一年の間に、グゥはかなり大きく……なっていないんだよなぁ、これが。


 生まれたばかりの頃よりはさすがにちょっと大きくなっているんだけど、元の世界の常識からしたら、動物の成長ってもっと早いはずで、犬とか猫だったら一年も経ったらもう大人になっているだろう。


 まぁ、それは人より寿命が短いが故の成長速度なんだろうけど。


 そういう意味では、この聖獣グリフォンの寿命は人より多分とんでもなく長いんだろう。だから大人になるまでの期間が長いのかもしれない。知らんけど。


 とにかく、グゥはまだ小さいままだ。


 正直に言うと、小さいままで助かるのはある。だって、グリフォンの成獣っていったら、アレでしょ? 一年前に襲ってきたあのサイズになるわけでしょ? 象くらいの大きさだったよ? あんなのになってしまえば、村の中で飼う事も難しくなってくる。


 ルークさんからこのアトラハン子爵領を治める子爵さんに取りなしてもらって、今は様子を見て一緒にいてもいい事になっているので、周辺で話題になってしまえば一緒にはいられないかもしれない。


 成長という意味では、グゥよりもリルルの成長が目覚ましい。一年でこんなにも変わるのか、と驚くぐらいだ。


 6歳になって、身体も成長してきたが、何より精神的に強くなった。これまでは極度の人見知りで、外ではいつもボクの陰に隠れる様な感じだったのが、全くそういう事はしなくなり、堂々と人と話せるようになっていた。


 もしこれがボクと一緒にいる影響だったとしたら嬉しいが、一番大きいのはグゥの保護者となった事かもしれないなぁ。



 居間には村長さんがすでに席についていて、台所ではメディさんが朝食の準備をしている。


 メディさんを手伝って朝食を準備して、みんなで食卓についた。


 前の家よりずっと広くなったリビングダイニングには、木こりのゴルスさんに採って来てもらった木材を村の大工さんが加工した大きなダイニングテーブルセットが置かれている。


 台所もかなり広めに作り、二人で作業をしていても邪魔にならない。メディさんやお手伝いさんにも大好評だ。


 間取りについては現代の住宅に近い様式にしていて、以前は居間などから各自の部屋に直接出入りする形だったけど、十分な広さを確保している事から、廊下などの共用部を介して各室へのアクセスを設定している。


 村長さんの家だけでなく、以前の村の家々を見ていて思ったのは、居住性よりも経済性が最優先されていて、ボクからしたら何ともバランスの悪い、暮らすには不便な家がほとんどだった。土地はあっても、それに見合う広い家など、とても建てられなかったのだろう。


 それがこの一年でかなり様変わりし、村のほとんどの家が竹筋RC造の家へと建て替え、一般村民としてはかなり贅沢な家に住めるようになっている。


 ボクとリルルにグゥ、それからスグルはこの一年かなり忙しかった。


 それに加えてリニーさんを中心とする守備隊の人達、ボクの専属護衛としてついてくれているププンさんやテムさん、それからもちろん村の大工さん達や材料を採取してきてくれる人達が総出で工事に取り掛かって来た。


 ブラックな労働環境にならないように注意しながら仕事のスケジュールを組んでいると、むしろ「こんなに休みがあって大丈夫か?」という心配をされるぐらいで、皆本当に働き者だなぁと思った。


 しかし裏を返せばそうやって必死に働いて行かないと生きていけないという事でもあったんだろう。



 ちなみに建て替え費用については、施工者である自分が言っては何だけど、信じられない事にほとんど無料となっている。


 それもこれも村長さんのおかげだ。


 前代官のモブドンのせいで大きな迷惑をこうむって来た補償として、子爵様からかなりの賠償金が支給され、さらに今後数年間の税が5割免除されている。


 これらを村長さんがルークさんを通じて陳情し、それが認められた事で、村は今かなり余裕がある。


 そのお金を大工さんや木こり、その他再開発に必要な材料、労働力の確保のために使っているので、希望者には全ての家を無料で提供することができた。


 さらには余ったお金をほとんど使い、村全体の整備にも乗り出した。


 今では高さ3mの頑丈な塀が村を守り、村の主な交通網となっていたガタガタの村道も石畳で整備し、安全性と交通事情が大幅に改善された。


 村の中心部には教会や商業エリアなどがあるが、それもより便利に利用できるように、複合商業ビルの様に、一つの大きな建物に複数の商店を入れる事にした。……いや、平屋建てだからビルとは言わんので、元の世界の都市計画で言う近隣商業地区という物に近いかな。


 ちなみに教会はまだ建て替えていない。


 ボクの余計なこだわりかもしれないが、今の僕の建築・施工・材料加工技術では、元の世界の中世教会建築が実現できない。


 せめてガラスを製造できるようにならないと、取り掛かるつもりはない。


 神父さんにとっても、一応聖統教会という組織に属している以上、勝手に建て替えるわけに行かないし、古くから信仰の場として使用されてきた建物をそう簡単には変えられないだろう。


 ……ただ、村がどんどん新しく変わって行くのを見ているだけの神父さんがちょっと寂しそうだったので、教会自体は建て替えないけれど、神父さんの住居を教会に併設させて建ててあげたら、すごく喜んでくれた。



 もっと開発を進めようと思ったらキリがないので、ひとまず最初に計画していた分と、途中でどうしてもこれだけはやっておかないといけないと判明した部分だけを仕上げて、第一回スルナ村再開発事業は無事に完了した。


 北の国境付近に位置し、辺境の村であるスルナ村には外部からの人の流れはほとんどない。しかし行商人など、定期的に訪ねてくる人たちはいるので、その人達がこの新しくなったスルナ村を見て仰天し、中には道を間違えて違う町に来てしまったと勘違いする人もいた。


 その中には、色んな噂を聞きつけてボクの所に商機を求めて訪ねてくる人もいたんだけど、申し訳ないけど今はそういう事をするつもりがないので全てお断りしている。



 今は、一年前の生活に戻っていて、皆で遊んだり、魔法の練習をしたり、村長さんの授業を受けたり……一応は村の子供らしく大人しく過ごしている。


 ちなみに、この一年で魔法を使いまくって建物を建てていたおかげで、基本レベルがかなり上がり、今ではボクは基本レベル8、リルルとスグルは4に、グゥは2に上がっていた。たまに魔物が村周辺に出没することもあって、守備隊に同行して魔物を倒すこともあったので、その経験も助けになっているだろう。


 基本レベルが8に上がったことで、魔導書に載っているランク3の複合魔法の全てが開放されて使用可能になり、さらに大幅に戦闘力が増している。


 そして戦闘力だけでなく、【鑑定(アナライズ)】や【収納(ボックス)】といった色々便利な魔法が使えるようになった事で、もっと色んな事が出来るようになるだろう。


 今専ら研究しているのは、『赤1橙1黄1』の複合魔法【力昇(パワーゲイン)】や、『赤1青1緑1』の【魔昇(マジックアップ)】みたいなバフ魔法をパッシブスキルの様に常時発動状態にできるのかとか、【収納】にはどれぐらいの物を収容できるのかとか、新しく覚えた複合魔法の運用についてだ。


 まあ、この辺りの成果についてはいずれ披露できる機会もあるだろう。



 さて、今日は何をしようかなぁ。


 珍しく、何も予定がない日で、村長さんも今日は来客があるという事で授業もないし、リルルと遊びにでも行こうかなぁ。


「ねぇリルル、今日はどうしようか? また祠の遊び場に行く?」


「うーん、そうだねぇ……そうしよっか! 久しぶりだもんね!」


「グゥも行くでしょ?」


「グゥグゥ!」


 というわけで、朝食を済ませた後、みんなで歩いて祠まで出かけることにした。




 自分達で整備した歩きやすい石畳を踏みしめ、目的地の遊び場までわいわいおしゃべりしながら歩いて行く。


 周囲にも、同じように元気に走り回って、遊び場に向かっている子供たちがいる。


 すると、前方から見覚えのある人が近づいて来た。


「うーん、やはり子供達が元気に騒いでいるのを見ると、気分がいいねぇ」


 ……なんだろう、ものすごく見たことがある気がしてならないけど、多分気のせいだろう。


 前回はうっかり目を合わせてしまったけれど、今日はさっくりと無視して先を急ごう。下手に相手してしまうと、また何か面倒な話をされるかもしれないし。



「いや、ちょっと、ナシロ君……!? それはないんじゃないかなぁ!?」


 目の前を通り過ぎようとすると、ちょっと情けない声でルークさんが呼び止める。


 はぁ……。


 しょうがない、これでも色々助けてもらっているのは確かだし、ちょっとぐらい相手してあげよう。


「おはようございます、ルークさん。お久しぶりですね?」


 アトラハン子爵領騎士団副団長、『風の英雄』ルークさんがさわやかな笑顔で挨拶を返す。


「おはよう、ナシロ君にリルル君、それにグゥ君も元気そうで何よりだね」


「おはようございます、ルークさん!」


 おぉ……あのリルルが、ちゃんと相手と目を合わせて、堂々と挨拶を返している。ものスゴイ成長だなぁ。ちょっと感動しちゃうよ。


「今日はどうかしましたか? おじいちゃんに用事ですか?」


「うーん、今日はちょっと、キミ達に用事があって来たんだよ。悪いね、朝早くから。遊びに行くところだったんだろう?」


 うわぁ……。


「そうあからさまにイヤだっていう顔をしないで欲しいんだけど……いやまぁ……これが普通かぁ、子供なんだし……」


「それで、今日は何ですか? こないだの話ならお断りしたはずですが?」


「いや、それはわかってるよ。今日は別件……でもないか? ちょっと特別なゲストが村に来る事になっていてね。その方と会って欲しいんだよ」


 実はちょっと前に、ルークさんから打診されて、一度領都に来て竹筋コンクリートの建物を一つ、建てて見せて欲しいと言われたんだけど、丁重にお断りしたことがあった。


 もしかしたら領の上層部からの命令とかだったのかもしれないが、ボクがイヤがっているのを見たルークさんが副団長の権限でも使って誤魔化してくれていたのかもしれないな。


 今日はその絡みで、お偉いさんでも来るんだろうか?……だとしたらかなり面倒だなぁ。


「へぇ、そうなんですか、ちなみにどんな方なんですか?」


「うん? ああ、アトラハン子爵領の領主、バルク・ブル・アトラハン子爵様だよ」



 ……は? ししゃくさま?



 こうしてボクは、領主様に拝謁する事になった。


お読みいただき、ありがとうございます。


ブックマークなど頂けたら、とても嬉しいです(#^^#)

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