第37話 三人目の加入者(本)
リニーさんにこれまでの出来事をひと通り話した所で、ついに望んでいた事が起きた。
彼女の頭上にずっと輝いていた加入者の証である数字が消えたのだ。
という事は。
パァァアアアアーーー
魔導書がまた勝手に現れ、パラパラと捲れていく。
や、やった……!
リニーさんが正式に加入者になった!?
慌てて加入者一覧のページを見ると、確かに四人目の加入者として登録されているのが確認できた。
内容は既に人物一覧に記載されていたのと同じだな。ただページが移動しただけだ。
「な……!? なんだ、コレは!?」
突然目の前に現れた魔導書に、リニーさんが驚く。
「これが、さっき話した魔導書です。どうでしょう? こういう能力の話とか、思い当たる事とか、ありませんか?」
「………」
黄金色に輝く魔導書に目を奪われていて、ボクの質問は耳に入らなかったようだ。
「リニーさん?」
「あ、ああ、すまない。余りにも不可思議な光景でな……」
改めて聞いてみたけど、やはり、リニーさんにも心当たりは無いようだ。
「では、ボクの能力を見てください」
そう言ってボクのステータスページを見てもらった。
――――――――――
【加入No.】 001
【名前】 ナシロ
【年齢】 5
【性別】 女
【所属】 スルナ村
【状態】 良好
【称号】 風の覇者
【基本レベル】 4/10
【魔法レベル】 9
【魔法色ランク】 赤:2 橙:2 青:2 緑:1 黄:1 紫:1
【習得魔法】 ランク1…【火球】【火波】【土球】【土壁】
【水球】【水霧】【風球】【風香】
【光矢】【光散】【闇矢】【暗転】
ランク2…【火炎】【水壁】【土檻】【熱風】
【火花】【痛火】【人形】【風走】
【毒蛇】【風影】【癒水】【氷結】
【清浄】【麻痺】
【習得英技】 ランク6…【権能蒐集】
【武術流派】 ――
【魔技クラス】 ――
【習得魔闘技】 ――
――――――――――
今のボクが使える魔法は、ランク1の魔法が12種類と、ランク2の魔法を14種類習得している状態だ。合わせると30種近くにもなる。
ちなみに、さっきルークさんのステータスを確認した時にわかった事だけど、ルークさんが習得している、おそらく【青1緑1】のランク2魔法【乱雲】は、ボクの魔導書には載っていない。
この事から、魔導書には世の中のすべての魔法が載っている訳じゃない、という事がわかった。
「こ、これは……本当にこんな事が……」
「…………」
リニーさんが絶句しているが、ボクも負けずに言葉を失っている。
………あれ?
リニーさんの加入で、彼女の持つ「橙1」の才能色が加えられて、「橙2」になり、合計の魔法レベルが9になったのは、予想通りで驚きはない。これでこの「仲間になった人の才能色が加算される」という法則はほぼ間違いがない。
それに、基本レベル上限がまた2つ上がって、10になった。これもまあ、スグルの時と同じで、予想してた。
……
でも……
なんで称号が増えてるんや!?
「風の覇者」ってなんぞ……あ、もしかして、風の聖獣倒したからか!?
ルークさんの「風の英雄」の称号が羨ましいなあと思ってたら、もう自分も持ってました! てへぺろ!
そう言や、聖獣倒してから魔導書を詳しく見ようと思ってたけど、リルルが卵抱えてたり、詰所に行ったり兵士に連行されたりと、ゆっくり見るヒマなかったんだよね。
どういう効果があるんだろう……名前からして、ルークさんの「風の英雄」と似た効果なんじゃないかと思うんだけど、今度ルークさんにそれとなく聞いてみよう。
「こんな魔法使いはありえない」とかブツブツ呟いていたリニーさんに、加入者一覧も見てもらって、自分のステータスを確認してもらった。
「私が……ナシロの仲間になったのか? そう言われてもあまり実感はないが、この魔導書が見えているという事が証なんだろうな……それで、私は何をすればいいんだ?」
「え? リニーお姉ちゃんもお友達になったの?」
リルルは先ほどから大人しく話を聞いていたが、リニーさんが仲間になったと聞いて、嬉しそうにしている。
「それは、ボクにもわかりません。仲間になったことに何の意味があるのか……とりあえずは、仲間が増えるとボクが強くなれるみたいなので、出来るだけ仲間は集めたいと思いますが……集めて何かをしようとか、そいういのはあんまり考えてないです」
「そうか」と一応は納得してくれたリニーさんだが、どこか腑に落ちない表情をしている。
そりゃそうだよなぁ、魔導書の持ち主であるボクだってよくわかってないんだから。
あ、そうだ。
して欲しい事というか、とりあえずやりたい事はある。
基本レベルをどうにかして上げたい!
魔導書の【魔法一覧】には、才能色の条件は満たしているのに、基本レベルが足りないために使えない魔法が山ほどある。
これらが使えるようになったら、文字通り、今の比ではない強さをゲット出来るはずなんだよ! たぶん!
そうやって強くなっておけば。
誰にも負けない力があれば。
いつか家族を探しに行く時に、必ず役に立つ。
その思いは胸に秘めながら、今は日々を精いっぱい生きるんだ。
それがいつか家族を助ける道に通じていると信じて。
それはさておき。
基本レベルを上げるための条件が完全に理解できたわけではないが、とりあえず今のところ、魔物を倒すと上がる事がわかった。
しかし村長さんやメディさん、木こりのゴルスさんなど、魔物を倒したことなんてないはずの人達の基本レベルも、ある程度上昇しているのが、魔導書の人物一覧で確認できる。
恐らく、戦闘だけじゃなく、生きる上での様々な経験が蓄積されると、基本レベルが上がるという事なんじゃないかと想像している。
ただまぁ、一番手っ取り早いのはやっぱり魔物との戦闘だと思うし、何とか魔物と戦う機会がないかなぁ……?
――というような事をリニーさんに話す。
「なるほど……しかし【基本レベル】なんていう物がこの世界にあったなんて、私は初めて知ったぞ。まあ、私など、こんな田舎村の守備隊の一員に過ぎないからな、知らないことも沢山あって当然か……」
もし可能なら、リニーさんと一緒に魔物と戦いたいとそれとなく聞いてみたが、危ないからダメだと言われちゃった。
それに、この村は森のそばにある割には、あまり魔物に襲われないらしい。だからこの場所に村が出来たのだとか。
村が襲われないのはいいんだけど、魔物が少ないのかぁ……ちょっと残念。
その後は、リルルも交えて、リニーさんと三人で色んな話をした。
普段の守備隊の仕事の事とか、昔リニーさんが修行したっていう町の話や、子供の頃どんな事をして遊んでいたとか、他愛もない話をしていると、村長さんがルークさんとの話を終えたのか、詰所から出て来た。
今日は大変だったし、とりあえずゆっくり休んで、今後の事はまた後日話をしよう、ということらしい。
もうだいぶ日も傾いて、周りの家々も夕食の準備が始まる頃だ。
三人とも言葉は少なかったが、さっき兵士に連行されていた時のような不安な気持ちはなく、穏やかな気持ちで夕暮れの中を歩いて戻った。
◇◇
家に戻ってから、みんなでメディさんが用意してくれた夕食を取ったが、三人とも疲れているせいで、普段よりかなり静かな食卓になった。
それでも、みんな無事だった安心感から、表情には笑顔があり、とてもいい雰囲気だった。
食事を終えて自室に戻り、固い藁が敷かれたベッドに横たわる。
「はぁあああああ……っっ」
思い切り伸びをして、全身の力を抜いた。
ハッキリ言って、硬い藁がチクチクするし、長時間寝てると身体が痛くなるし、安らげないんだけど……
こんな日くらい柔らかなマットに、まっさらなシーツが敷かれたベッドで眠りたいが、この村にそんなモノは……モブドンの屋敷くらいしかないだろう。
今日は、この世界に転生してから一番長くて、大変な一日だった。
早朝にたたき起こされて、寝起きで聖獣グリフォンとの一騎打ち、その後も色んな事があった。
場合によっては、死んでいてもおかしくなかった。
明日からは何とか基本レベルを上げる方法を考えないとなぁ……
父さん、母さん、それにロニーはどうしてるんだろう……元気にしているだろうか。
ふとした時間に、よくそんな事を考えてしまう。
もちろん元の世界のじいちゃんの事も考えるんだけど、最近はもうあまり思い出さなくなってきたかもしれない。
身も心も、こちらの世界の住人になってきているって事かなぁ、などと、ボンヤリと考えている内に、ボクは眠ってしまった。
お読みいただき、ありがとうございます。
ブックマークなど頂けたら、とても嬉しいです(#^^#)




