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第19話 三人目の加入者(仮)

 村長さんは誤魔化すことができなかったので、家に戻ってから、事の子細をほとんど全て話した。


 ただし祠で得た【権能蒐集(スキルコレクション)】の事以外だ。


 これはリルルにも関係することだし、もう少し慎重に考えてからにしようと思う。


 まだリルル本人にも、才能色が増えた事を話していないし。


 だからボアは【土球】だけで倒したことにした。


 リニーさんに教わってない【風香(ウインドセント)】や【火球(ファイアボール)】なんて使えないはずだからね。


「なるほどのぅ。にわかには信じられんが、ナシロの才能色を見た身としては、信じるしかないのう」


 まだ全てを話していない事を悟られているのは、村長さんの態度でわかるけど。


 とりあえずは納得してくれた感じだ。


「そういう事なら、ボアはもういないと守備隊に伝えたい所じゃが、守備隊には悪いがしばらく警戒は続けてもらう事にしようかの。ナシロの秘密をおいそれと話すわけにはいかん」


 それにボアが一頭だけしかいないとは限らんしの、と笑う村長さん。


ボクが言うのも何だけど、いいのかそれで。身内びいき……とは限らないか。


実際魔物が他にもいるかもしれないし。


「今日は朝から大変じゃったな。もう昼もだいぶ過ぎておるし、昼食にするかの。それから今日はもう、外には出ずに、家で休んでいるんじゃぞ」


「はーい、おじいちゃん」


 確かになんだか疲れたし、お腹空いたし、今日はもう家でのんびりしたい気分だ。


 でもお手伝いだけはちゃんとやろう、うん。



 ◇◇



 その後数日間は、のんびりした日々が続いた。


 グレイトボアが出た森を中心に、村の周囲を毎日巡回していた守備隊も、すでに通常の警戒状態まで戻ったようだ。


 隊長さんが一度来て村長さんに報告していた。



 そんなある日、家にリニーさんが訪れた。


 ボクは丁度リルルと一緒に、食事の支度を手伝っていた所で、居間で村長さんとリニーさんが話しているのが、台所で少し聞こえてきた。


「……そうか、とりあえず、森の奥から魔物が他に来ていないということがわかっただけでも良かったの」


 ゴルスさん達が襲われた日から、周辺を調査していた守備隊の報告を受けているようだ。


 話がひと段落したタイミングを見計らって、ボクも居間に顔を出さないとな。リニーさんの弟子としては。


「こんにちは、リニーさん。このあいだ魔法を教えてもらったおか――」


 居間に入り、リニーさんに挨拶とお礼をしようとして、ボクは固まってしまった。




≪008≫




 なんと、リニーさんの頭上に、黄金色に輝くの数字が見えたのだ!


 リニーさんも『加入者(ナンバーズ)』だった!?


 あれ、でも魔法を教えてもらった時には数字は見えなかったはず……と思ったけど、あの時はまだ【権能蒐集(スキルコレクション)】を覚えてなかった。


「……? どうかしたか、ナシロ? 私の顏――というより頭? をずっと見つめて……?」


 挨拶の途中で固まってしまったボクの様子を怪訝な表情で見るリニーさん。


「あ、いえ、何でもないです。こんにちは、リニーさん」


 頭上に輝く数字を見るのも、もう3人目とあって、そこまで動揺することなく、ボクはすぐに我に返って挨拶をした。


「ああ、こんにちは、ナシロ。相変わらずしっかりした子だな」


「ありがとうございます。リニーさん、少しお話したいことがあるんだけど、いいでしょうか?」


 リニーさんにグレイトボアを魔法で倒したことを話してもよいかと、村長さんに相談して、許可はもらってある。


「ああ、もちろんかまわない。もしかすると、ボアをナシロが倒したという話か?」


「えっ?」


 なんと、村長さんだけでなく、リニーさんにも悟られてしまっていたようだ。


 さすがボクの魔法の先生だ。


「あの……はい。実はそうなんです」


 元々話すつもりでもあったし、ボクは素直にうなずく。


「やはりそうか。実はあの日、ボアと何者かが戦ったような痕跡を見つけてな。そこで土魔法が使われたような跡があったからな。お前の魔法で倒したんじゃないかと思ったんだ」


 なるほど。


 やっぱりボアを埋めておいて正解だったな。こうも簡単に場所を特定されるとは思わなかったけど。


「余計なお世話かと思ったが、この事は守備隊には報告しなかった。村長やナシロに相談してからと思ってな」


 そこまで気を回してもらって、ありがとうございます。


 転生してすぐに家族が行方不明になって、異世界生活のスタートとしては最悪だったが、周りの人達はすごく良くしてくれるし、良い人ばかりだ。


 村人じゃない人で一部めちゃくちゃなヤツもいるけど。


「リニーさんに魔法を教えてもらっていなければ、ゴルスさんを助けられなかったかもしれません。本当にありがとうございました」


「なに、気にすることはない。人助けの為になったのなら、私も嬉しい限りだ。助けられて良かったな、ナシロ」


「はい!リニー先生!」


 嬉しくて、つい勢いで先生と呼んでしまったが、リニーさんは苦笑してスルーしてくれた。



 その後、村長さんとリニーさんで話し合って、とりあえずボクの魔法の事、ボアを倒したことは内密にする事になった。


 どちらかというと、村長さんの意思のように感じた。


「すまんの。今ちと、やっかいな問題が持ち上がっておってな……ナシロの話は広めとうはないのじゃ」


 んん……?


 ボク絡みで、やっかいな問題というと……もしかして……。


「そうでしたか。それでは、この件は村長にお任せします」


 そう言って、リニーさんは詰所に戻って行った。


 リニーさんが『加入者(ナンバーズ)』だとはわかったけれど、加入してもらう為の方法が今のところ不明だし、スグルの時みたいにすぐに加入条件がそろうわけではないかもしれない。


焦らずに、今は様子見だな。



 ◇◇



 メディさんとリルルが準備してくれた昼食を食べながら、村長さんが気になることを話し出した。


「ナシロ、それにリルル。前にも言っておいたが、人前で魔法を使うことは控えるようにの。今回の件は仕方ないが、しばらくは特に気を付けておいて欲しいんじゃ」


「はい、ごめんなさい。考えなしに魔法を使ってしまって」


 本当は『加入者(ナンバーズ)』であるスグルを仲間にする為に、考えた上での事だけど、ここは素直に言う通りにしよう。


「リルルも、誰にも言わないよ!」


 こないだドヤ顔でスグルに自慢していたけどね……大丈夫だろうか。


 ま、リルルに関しては、大体一緒にいるわけだし、ボクが目を光らせておこう。



 昼食後、ボクとリルルはいつもの祠に遊びに行くことにした。


 ここ数日、村では魔物への警戒で、なるべく外出を控えるように通達が出ていたので、ろくに外に行けなかったのだ。


 それがようやく解禁という事で、多分村の子供達も鬱憤を晴らすように、遊びに出かけているはずだ。


「ねえ早く早く!ナシロ!」


 リルルがいつになくテンションが高いね。気持ちはよくわかるよ。


 やっぱり外は気持ちいいよね。


 二人で村の道を駆けながら祠に向かっていると、他にも村の子供達が同じように走り回る中、一人だけ、大人がゆったりと歩いている姿が見えた。


「うーん、いいねぇ。元気な子供達を見るのは、やっぱりいいもんだ」


 何やら笑顔でり言をブツブツ言いながら歩いている。ちょっと近寄りがたいかも。


 他の子供たちはただその人の横を駆け抜けるだけだが、ボクだけがちょっと観察してしまっていたので、バッチリ目が合ってしまった。


 見た所、20代後半の優男風な出で立ちで、旅装から旅人かと思われる。


 ただ、その優しそうな笑顔とは裏腹に、全体的に線が細目だが引き締まったもの凄い筋肉が付いた体つきだ。いわゆるイケメン細マッチョだ。


 ニマァ、っと獲物を見つけたように笑いかけ、イケメン細マッチョが近づいて来る。


 いやいや、普通の5歳児にその笑顔で近づいてきたら逃げるでしょ。


 リルルなんて完全に不審者を見るような怖がり方だよ。


 本人としては子供を怖がらせないようにする為の配慮かもしれないけど、やめた方が良いと思う。完全に逆効果だよ、オジサン。



 はっ……!


 今ナチュラルに、元の世界の自分とあまり変わらない、20代の男性をオジサンと呼んでしまったぞ……!


 奈城としては認めたくない感覚だが今の自分にしてみたら十分オジサンだ。


 心置きなくオジサンと呼ぼう。


「ねえキミ、村の子だよね? ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」


「何でしょうか、オジサン?」


 ここは第一印象が大事だし、一発かましといてやろう。


「お、オジ……?」


 やはりショックを受けている。うん、わかるわかる。


 動揺からか、聞きたいこととやらを一向に切り出す気配がないので、こちらから尋ねてみる。


「聞きたい事というのは何ですか?」


「あ……あ、ああ、そうだった。いやね、この辺りに、村で祀られている祠っていうのがあると聞いたんだけど、場所わかるかなあ?」


 なんだ、祠に行きたかったのか。


 ……村の人ならわかるけど、あんな何もない林の祠に、旅人というか観光客が行くような場所じゃないように思うけどなあ。


「オジサン旅の人ですよね?」


「あ、ああ、そうなんだけど。……できれば私の事はお兄さんと呼んでくれないかなあ?」


 仕方ないな。


いちいち話が止まると面倒だし、オジサン呼びはとりあえずやめてあげようか。


「祠はわかりますけど、あそこは子供の遊び場になっていて、観光客が見るような物はありませんよ?」


「なるほど、そうなんだね。でも大丈夫、私は観光客ではないんだ、旅をしているのは間違いないんだけど」


 よくわからないけど、行きたいっていうなら連れて行ってあげてもいいかな。


 パッと見、ちょっと怪しいけど悪い人ではなさそうだし。


 リルルも怖がっているものの、あの代官のオッサンに対するような恐れ方はしていない。


「じゃあ、連れて行ってあげます。ボク達もそこに向かう途中なので」


「それは助かるね。ありがとう、頼むよ。ところでキミの名前は?」


「ナシロと言います。後ろの子はリルル。あなたは?」


「ルークだ。よろしくね、ナシロちゃん、リルルちゃん」


 ナシロちゃん……むず痒いが、5歳の少女だし、そう呼ばれるのも慣れないとな。



そうして、ボクとリルル、それに変な旅人さんと一緒に、祠のある遊び場に歩いて行った。




お読みいただき、ありがとうございます。


ブックマークなど頂けたら、とても嬉しいです(#^^#)

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