第14話 魔導書
家に帰ると、村長さんはまだ帰宅していなかったが、みんなで昼食を摂った後は、ボクとリルルはメディさんのお手伝いで家の周りの雑草抜きをした。
それが終わると、さすがにリルルは疲れたのか、昼寝をすると言ってベッドに潜っていった。
これは丁度いいチャンス!
実はボクも祠での出来事で疲れてはいたが、それよりも好奇心の方が勝っていたので、ちょっとでも考察を進めたかった。
自室に戻り、ベッドに腰かけて先ほどの本の検証を再開する。
この部屋はボクが草原から救助された際に寝かされていた部屋で、村長さんがボクを預かってくれた際に、そのままボクの自室として使わせてもらっている。
さて。
まずはあの本をもう一度出さないと。
多分、これで出るんじゃないかと思う。
「【権能蒐集】!!」
魔法だか、スキルだかの名前を唱えると、祠の前で現れた時と同じように、金色に輝きながら本が出現した。
どれどれ。
重厚で繊細な装丁が施された表紙をめくると、最初のページにはさっき確認した、自分の能力の情報が記載されている。
その次をめくると、これは……目次……?
――――――――――
【権能蒐集 魔導書目次】
はじめに ……… 3
習得魔法一覧 ……… 4
習得英技一覧 ……… 42
加入者一覧 ……… 44
人物一覧 ……… 46
魔物一覧 ……… 48
自由記帳欄 ……… 50
――――――――――
魔導書……と書いてあるな。
ではこれからは魔導書と呼ぼう。
気になる内容が盛りだくさんだが、とりあえずまずは「はじめに」を読んでみる。
――――――――――
はじめに
この魔導書は、ナシロさんのために作成された特別なアイテムです。
ぜひこれからの旅にご活用ください。
(追記)
この度は、ご連絡が遅れて申し訳ありません。
本来であれば、転生時にお伝えすべき諸々の情報ですが、諸事情により、貴殿に伝達ができませんでした。どうかご了承ください。
――――――――――
はわっ……!?
まるでメッセージのような、どいうよりそのまんま、ボク宛のメッセージじゃないか。
一体全体誰から……って、今更だけどやっぱり転生してたんだな……。
これはやっぱり、カミサマ的なアレだろうか……?
一説によると人は死ぬと女神様やら老神の前に召喚されて、チートな能力を与えられたり与えられなかったり、異世界に転生したりしなかったりするらしいが。
でもボクは死んだ時、カミサマには会わなかったからなぁ……そういうのないと思ってたな。
珍しい才能はあると言われたけど最強ってほどの能力じゃなかったし。
本当は説明が与えられるはずだったけど何かの事情でできなかったと。
まあそれならしょうがない……のか?
しかしこの魔導書が手に入ったことで、一気にチート度合いが高まってきた。
祠で祈りをささげたことがきっかけで開放された能力だと思うけど……それがなぜボクに起こったのかはまったくわからない。
この文章だけじゃわからないことだらけだし、もっと説明して欲しい事が山のようにあるが、これも諸事情とやらで説明が受けられないんだろうか。
ただ、こんな短い文章でもわかることはある。
何者かはわからないが、ボクを観察している者がいて、恐らく何かの目的があってボクを転生させ、才能を与え、さらに魔導書を用意した。
さらにはボクの才能色ランクを引き上げ、リルルの才能色ランクまでも引き上げた。
二人とも名前の前に『加入ナンバー』とか書いてあるってことは、ボクに仲間を集めるように言っているのか。
あと、どうせランクを上げるならもうちょっと上げて欲しかったな。
ボクは『青1 黄1』、リルルは『黄1』しか上がっていないし………ん? 待てよ……。
『加入ナンバー』と『スキルコレクション』……?
これはもしかすると……。
もしこれがボクの推測通りならこれはとんでもない可能性を秘めた能力だが、これは現状では検証できないから後回しだ。
次ページからは、『習得魔法一覧』が載っているということで、ボクが今使える【土球】と【土壁】が記載されているだけだろう。
そう思いながらページをめくろうとすると、なんとページが勝手にめくれていった。
考えるだけで思ったページに行けるのか。こりゃ便利だ。
そうして魔法一覧を見た。
さて、ここはもう予想できるし次へと読み飛ばそうとした瞬間、チラッととんでもない内容が見えて、それはもう見事な二度見をかましてしまった!
慌ててページをどんどんめくっていく……!
――――――――――
【習得魔法】
ランク1
赤1:【火球】【火波】
橙1:【土球】【土壁】
青1:【水球】【水霧】
緑1:【風球】【風香】
黄1:【光矢】【光散】
紫1:【闇矢】【暗転】
――――――――――
既に習得している【土球】【土壁】が書かれているのはわかる。
しかしなんと、まだ覚えていない魔法で、保持している才能色ランクによって使えるはずの魔法の一覧まで書かれている!?
しかもそれぞれの魔法名の下に詠唱や魔法の効果まで載ってるがな!!マジかよ!? もう全部覚えてるの!?
だがよく見ると、【土球】【土壁】だけが濃い色の文字で書かれていて、それ以外の文字は薄くなっている。
ということは、この薄い字の魔法は、まだ未修得という意味なんだろう。
それにしてもなんという有能。これで昨日まで悩んで考えていたことがだいぶ解消されてしまったぞ。
……ということはまさか……?
期待を込めて、さらにページをめくっていく。
お、お……
おおおおッ!!!???
こ、これは―――
――――――――――
【習得魔法】
ランク2
青1 黄1:【癒水】
詠唱: 青き水、黄の光よ、かの者に癒しを与え賜え!
効果: 回復魔法(小)。ある程度のケガを癒し、体力を回復することができる。
必要基本レベル: 2
――――――――――
―――キタで!?
複色魔法ついに来たよ!
もちろん今は未習得状態の薄字だけど、ちゃんと、詠唱と効果も載ってるぅ!!
ヒャッホーーーイ!!
しかもこれは回復魔法だ……!
(小)とあるから重いケガなどは治せないかもしれないが、これは超心強い。
冒険には回復魔法は必須だよね、何があるかわからないし。
ただ、最後に書いてある『必要基本レベル:2』という文言がある以上、今のボクには恐らく使用不可ということだろう。
そもそも、この世界に基本レベルというシステムが存在することは聞いたことがない。
先日リニーさんに話を聞いたときも、魔法レベル以外のパラメータの事を聞いても、何の事かわからないようだった。
実は隠しパラメータとして設定されていて、あまり知られていないということかもしれない。
そしてランクが上の魔法を使うためには、基本レベルの上昇が必要と。
どうやったら基礎レベルが上がるのかはわからないが、普通に考えれば魔物を倒すと経験値を得てレベルが上がりそうだよな。
さらにページをめくって確認していく。
単色の魔法ランク2の魔法や、複色の魔法ランク2の魔法が色々掲載されているが、やはり基本レベル1のボクには使えない魔法ばかりだ。
続いて魔法ランク3のページを確認していく。
『赤1橙1青1:【鉄槌】』から始まって、今の才能色で行使可能な魔法がたくさん記載されている。
中でもこれはと思った魔法が、
『赤1橙1黄1:【力昇】……発動中は常時力が上昇(小)』
『赤1橙1黄1:【魔昇】……発動中は常時魔法威力が上昇(小)』
『青1黄1紫1:【収納】……亜空間にアイテム収納(小)』
辺りだろうか。
使いこなせれば戦力が大幅にアップするだろう。
ただ魔法ランク3の魔法を覚えるには基本レベルが最低でも5以上が必要で、【力昇】などは基本レベル8が必要だ。
……でもボクって基本レベルの上限はレベル5なんだけど……これって上限レベルを上げる方法が何かあるってことだよね? じゃないと才能色で使用可能でも基本レベル不足で使えないなんてマヌケなことになっちゃうよ……? 大丈夫だよね?
【習得魔法一覧】はザっと確認したので、次に【習得英技一覧】を見ていく。
載っているのは1ページだけだ。
――――――――――
【習得英技】
ランク6
赤1 橙1 青1 緑1 黄1 紫1:【権能蒐集】
詠唱: なし
効果: 魔法・英技大全へのアクセス(限定)、詠唱代行
※ナシロ専用能力付加済【加入者】
必要基本レベル: 1
――――――――――
また何だかよくわからないが、何となく予想はできる。
魔法のランク数からして、英技は魔法の上位スキルという所だろうと思う。
ここまでで、後で試してみたいことリストが山ほどできてしまったが、中でも一番最初に試したいのが出てきた。
『詠唱代行』が予想通りなら、もしかしたらこの世界の常識を超える能力を得てしまいそうだ。
あと、ナシロ専用能力ってなんだよ……。
もう情報量多すぎて消化しきれてないが、追々把握していけるだろう。
とりあえず、仲間として加わる者は『加入者』と呼ぶらしいからそうしよう。
あと残っている【加入者一覧】にはリルルの情報のみ、【人物一覧】【魔物一覧】は白紙だった。
自由記帳欄は、名前通り言ってみればメモ帳で、便利なのは頭で考えたことが直接書き込めるということだ。
文字はもちろん、絵図なんかも再現されているのがスゴイ。
詳細な描写さえ思い描ければ、写真レベルの画も描けるし、建物の設計図だって書ける。ボクに取っては一番ウレシイオマケだ!
魔導書の検証に夢中になっていたせいで、いつの間にか夕食の時間になってしまっていたので、一先ずここまでにしておいて、続きは明日にすることにした。
お読みいただき、ありがとうございます。
ブックマークなど頂けたら、とても嬉しいです(#^^#)




