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『過ち』

「神の名を持って命じる。消えよ」


 そんな声が聞こえ、俺の身を焼こうとしていた黒い炎が消える。


「間に合って良かった」


 金髪のポニーテールに、赤い目の女が言う。


「貴様っ、何者だ!」


 トイロモスが言うと、女は振り返って言った。


「【破壊神】アリシア、この名を脳に刻みなさい」


 破壊神....破壊の捕食者は、悪魔エルサエムが破壊神に手を借り送ったスキル....この女がその破壊神なのだろうか。


「破壊神が一体何をしにきたのだ」


 トイロモスが言う。


「貴方たちの邪魔をする気はないわ。私はただ、【破壊神】の名が私から次の神へ変わるから、その前に、この子に会いにきただけ」


 破壊神が俺を見て言う。


「ごめんねシカリオ、いいえフレイ。突然現れて消えることになってしまって。それにしても、大きくなったわね」


 昔、俺を見た事があるようなことを言う。


「最後にほんの少し貴方に会いたくなってね」


 すると、トイロモスが此方に手を向けて言う。


「禁断の捕食者 〜破壊の守護神〜」


 トイロモスの手に魔法陣が展開され、そこから鎌を持った1人の神が現れる。


「神の名を持って命じる。天界へ帰れ」


 破壊神が鎌を持った神に命じる。


「断る。天界に帰るのは貴様の方だ」

「仕方ないわね」


 破壊神はそう言い目を赤く光らせた。


「じゃあね、フレイ。またいつか会えると良いわね」


 そう言うと、破壊神は破壊の守護神の腕を掴み、共に消えていった。


「破壊の捕食者、そろそろ水龍の捕食者の魂が保たなくなるぞ」


 フランメが言う。

 俺は、トイロモスだけを滅ぼし、エイルさんを助ける為に出来ることを必死に考える。


「フレ....イ....人間....に....憑依....した....悪魔は....」


 トイロモスの手にエイルさんの剣、波浪剣ウェレントが握られている。

 そして、その剣から青い水の龍が現れる。

 エイルさんの水龍の捕食者による物だ。つまり今、目の前にいるのはトイロモスではなく、エイルさんだ。


「こう....やって....倒す....の....よっ」


 エイルさんが、自分の腹部に波浪剣を突き刺す。


「エイル....さん....」


 すると、エイルさんからトイロモスの本体が出てくる。


「貴様っ、まさか己ごと我を殺すつもりかぁっ!」

「ふふっ....破壊神様のお陰で....ようやく....目覚められたもの....」

「くっ、あの破壊神め!邪魔をしないと言っておきながら」

「『水龍の捕食者 〜波浪神滅(ウェレン・ベレンテ)〜』」


 再び、波浪剣から水龍が現れ、エイルさんごとトイロモスを貫く。


「おのれっ....これ如きで....俺を殺せると思うなよ....」


 そう言いながら、トイロモスは姿を消した。


「エイルさん!」


 俺はエイルさんのもとへと走る。


「ごめんね....フレイ....」


 エイルさんはそう言い、波浪剣を俺の手に握らせる。


「この剣を....貴方に....」

「今助けるから....」

「もう無駄よ....」


 何かある筈だ、エイルさんを助ける手段が何か....。


「何度も言うけど....復讐は....駄目....よ」

「でも....」


 約束はできない。


「今まで....私の........が........う」


 エイルさんは、もう声を出す気力すら残っていないようだ。

 

「本当に....ありがとう....シカリオ....出来ることなら....」

 

 最後にそう言い残し、エイルさんは息絶えた。

 まただ、また大切な人を失ってしまった。


 今度こそ、失わない為に戦ったのに。


「破壊の捕食者、お前の気持ちはよく分かる」


 フランメが言う。


「しかし今回の事は、お前の力不足が起こした事だ。まだソロモスは生きている。いつまでそう嘆いているつもりだ」


 分かっている、そんな事。俺が弱かったがために....。


「立て人間!あの女が言っていたように復讐の事は考えるなよ」

「だが、ソロモスは生きているんだろ?ならこの手で」

「お前の大切な人間の最後の言葉だ。それぐらい聞いてやれ」


 そんな事言ったて、あいつは....。


「復讐は考えるな、だがソロモスは倒せ」

「どう言う意味だ?」

「ソロモスを放っておいたらどうなる?大勢の人間が死ぬだろう。それを阻止する事だけを、貴様は考えていれば良い」


 フランメの口調が出会った時とは違う。

 それだけ真面目に言っているのだろう。


「まぁその為にまず修行をしろ。お前はまだ、スキルを使いこなせていない」


 フランメが言う。


「お前も悪魔だろう?何故俺にそんな事を....」


 フランメもソロモスと同じ悪魔、なのに彼はソロモスと戦うのを手助けしてくれた。更に、これからどうすれば良いのかを教えてくれているのだ。


「フェネクス様は争い事を嫌っている」


 そう言えば、出会った時もそんなことを言っていた。


「人間、魔族、悪魔、神、精霊たちが行なっている戦争を、我が君は止めたいのだ。その為には、お前のその力が必要だ」


 人間と悪魔が戦争をしているのは知っていたが、他の種族も戦争をしているのは知らなかった。


「強くなったら、【不死鳥】フェネクス様に会いに来い。共に戦おうぜぇ」


 そう言い残すと、フランメは消えて行った。

 

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