『誕生日』
ドッカーンと大きく鳴り響いた爆発音で目が覚めた。
俺は、寝巻きから着替え、エイルさんがいるであろう爆発音の発生源である台所へと向かう。
「あっ、おはようフレイ」
「おはようエイルさん、さっきの爆発音は何?」
「ばくはつおん?あぁ、フレイの誕生日だからケーキを焼こうと思ってね!」
エイルさんは、普段とても美味しいご飯を作ってくれる。
しかし....不思議とケーキは必ず失敗してしまうのだ。
「一応聞くけど....今日は何を入れたの?」
「生地を膨らませるために火薬を少々....」
「普通、ケーキに火薬とか入れないから....」
「え?でもそれだと膨らまないじゃん!」
火薬を入れなくても生地は膨らむ。
因みに去年までも、ケーキを火炎魔術で爆発させたり、ケーキを冷やすために氷結魔術で凍らせたりと不思議なことを必ずしていた....。
厄介なことに、正しいケーキの作り方を教えても必ず『そんな手抜きをしたら、美味しいケーキは作れないんだよ!』と難癖をつけてくる。
「今日はもう諦めて、店に買いに行こう」
そう言うとエイルさんは、少し困ったような顔をして言った。
「せっかくの16歳の誕生日だし....これが最後に....」
そう言いかけて、すぐに首を横に振った。
「そうだね、買いに行こうか。じゃあ早く朝ご飯を食べて、一緒に買いに行こう!」
ー数分後ー
朝食を食べてから暫くして、俺がそろそろ出掛けようとエイルさんを誘ったところ、『後で行くから先に行ってて』と言われたので集合場所に来たわけだが......。
「おいおい、フレイ・ディストルツィオーネじゃないか」
「嫌ねぇ....あの悪魔を引き連れてきた奴の子供でしょう」
「今度はあいつのせいで悪魔がこの地に来てしまうかもしれぬな....」
そんな声が聞こえてきた。
これはいつものことだ。父さんと母さんがこの国を襲った悪魔に立ち向かったのを見た人々は、2人のせいで悪魔がこの地へやって来て、この国を火の海にしたと思っているのだ。
エイルさんには悪いが、俺はここから立ち去ろう。
そう思い、一方踏み出したその時だった。
「どこに行くのフレイ」
さっきまでいなかったエイルさんが突然現れた。
「せっかく来たんだから帰ろうとしたら、私のスキルで八つ裂きにするよ」
そう言うエイルさんの方向を見ると、いつも以上にお洒落をしている彼女がいた。
「どうしたのその格好?」
そう問うと、エイルさんは『秘密だよー』と答えた。
その時だった。
視界がいきなり漆黒に染まる。
『思い出せ....思い出せ....思い出せ!』
そんな声が頭に響く。
辺りを見渡すと、漆黒の世界に1人、黒いローブを着ており顔が影で隠れている男が立ちずさんでいた。
「思い出す....?何のことだ」
黒いローブの男に俺は問う。
「貴様の愚行を思い出せ!思い出せ....思い出せ....思い出せ!」
「愚行と言われても何のことかさっぱりだ」
「思い出せ....思い出せ!味合わせてやる....味合わせてやる....貴様に屈辱を....味合わせてやる!」
そうローブの男が言う。
「必ず....味合わせてやる....覚悟しておけ....覚悟しておけ」
ローブの男はそう言うと姿を消し、それと同時に視界が元に戻った。
暗闇に閉じ込められていた筈なのに、周りは皆、何事もなかったかのように普通にしている。
結局ローブの男は、どういった目的で俺の目の前に現れたのか分からない。
その後ケーキ屋による前に色々な店によって、夕方ごろに家へ帰った。
結局あの男は何をしたかったのか、俺がしたという愚行とは一体何なのか、屈辱を味合わせると言っていたが何をするつもりなのか。そんな事を考えながら、俺は深い眠りについた。
フレイは一体、何を思い出さなければならないのか....
お読み頂きありがとうございましたm(_ _)m
感想等頂けると励みになります