プロローグ『復讐』
「フレイ、早く逃げなさい!」
母さんが言う。
「どうして?」
僕は尋ねてみた。
「今ね、外では怖ーい悪魔が国を襲ってるんだ」
父さんが言う。
「ファフニール、コイツを頼んだ」
「了解だ。ディアヴォロス気を付けろよ」
赤い仮面、黒いローブを羽織った人が、お父さんに言う。
「ひひひひひっっっ」
家の窓から見える、青いツノ、青い瞳の.......。
「もうこんな所まで来たか」
父さんが立ち上がる。
「フレイ、元気でね」
「母さん!」
「行こうか........」
赤い仮面の人に、抱えられる。
「逃すと思うかぁ?」
青いツノの悪魔が剣を投げて来た。
「なっ」
赤い仮面の人が声を上げる。
「痛い....」
剣は僕の腕をかすると、黒い何かに消えていった。
「ふふ、やっと会えた。状況は最悪だけどね」
赤い仮面の人が言う。
「なにっ、、、私の剣が滅びたのかっ」
「おっと、ここから先には通さないぜ」
父さんが剣を持って、悪魔のもとへ走った。
そこまでしか記憶にない。
しかし、ひとつだけ........悪魔ではない何者かが俺に言ったことがある。
『フレイ・ディストルツィオーネ、否特異点。お前の両親はこいつらのせいで、死んだのだ。復讐に燃えろ、復讐のために生きろ。そして、悪魔を滅ぼせ。特異点、お前に世界は........救えない』
世界を救う気などない。
ただ、誰かが言った通り、悪魔が俺の両親を殺したのだ。
俺は悪魔を滅ぼす。何があっても、命を捨ててでも。
「こらっ、集中しなさい!」
「ぐっ」
「また、稽古中に復讐のことでも考えてたんでしょ」
バレてる。
「良い、復讐は何も生まない。昔から、シカリオは........」
シカリオ?誰のことだろうか。
「よし、もう一回!」
俺は木剣に意識を集中させる。
「開放ー斬滅ー」
俺が剣を扱う時に使えるのは、開放。
武器の本来の力を最大限に引き出す力。
この世界では、1人1つ自分だけの剣技を持って生まれる。
俺は解放だったのだ。
「旋律ー激流深海ー」
ビシッと大きな音が鳴り、剣が折れた。