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種が消える日

作者: 柵 日花

「2点で760円です。お弁当は温めますか?・・・・ありがとうございました」


何もない人生、何の取り柄もない自分、普通に高校に行って大学に進学して、みんなと同じように恋人もできた。もちろん、友達もいた。昔は。

でもどこに行っても私には居心地が悪かった。

欲しいものもないし、なりたい夢ももちろんあるわけがない。

おいしいものを食べても何も思わない、好きなアニメも好きなアイドルもいない。

そもそも好きとはなんだ。愛とはなんだ。

欲求というものを私は知らない。


「ただいまー。」

誰もいない部屋に消える私の声。

飲みかけのペットボトル、食べ終わったカップ麺の容器、脱ぎっぱなしの服、私にはこの部屋があってるし、初めて居心地がいいと思える場所だ。

昔は社員として仕事をしていたが、今はフリーターとしてコンビニで働いている。

周りからは、いい年して何をしているだの、ハローワークにいけなどうるさい。

どうして仕事をしないといけないのか。

私の1日のほとんどを仕事で潰すことに意味が果たしてあるのだろうか。

私には仕事をする意味の答えが何年たっても見当たらなかった。

だから答えを探すのを辞めただけだ。それの何が悪い。

深夜に入って効率よく働いて生活に困らない程度稼いでいる。

しかもコンビニだと賞味期限切れの物ももらう事ができるから食には困らない。

一人で生活できているのだから、むしろ褒めらるべきだとも思う。


何のために生きているのだろうそんなことを考えるのもいつしかやめた。

考えても見つからない。だからといって人生を終わらせたくもない。

そうやって意味もなく毎日を過ごしていた。なんの目的もないまま。


いつもどうり仕事が終わり、慣れない日光を浴びて新しい1日の訪れを感じる。

私からすれば、今日は終わったようなものだ。

仕事に行くサラリーマン、学校に向う高校生その逆を歩む私と少年。

少年は小学5年生ぐらいで、私の少し前を歩いている。

小学生に見えるが、ランドセルはしていない。

今日は平日だし、ずる休みでもしているのだろうか。

まあ、私には関係のない話だ。


・・・その少年は私の部屋の前で立っている。

知り合いだろうか、でも私には小学生の知り合いなんていない。


「何か用ですか?」

少年は私を見ては目を丸くして固まった。

「なんかついてる?どうしたの?」

少年は表情を変えずにこちらを見続けてくる。

「なに?なんか変?それとも、そこ私の部屋なんだけど部屋間違えちゃったのかな?」

だんだんイラつく私に少年が口を開いた。

「・・・ここに住みたい」

「え?何言ってるの?話聞いてなかった?ここ私の部屋なの。親御さんはどこにいるの?学校は?」

「ここがいいの!!」

少年が何を言っているのか私には理解が出来なかった。

「私の話理解してる?親御さんはどこ?」

「うるさい!!なんでそんなこと聞くの?もういいよ!バカ!!!!」

少年は目を赤くして走っていった。


「・・・なんで私が怒られなきゃいけないのよ」

あーー気分悪い。せっかく仕事が終わってのんびりしようと思ってたのに。








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