8.お茶会に出席しましょう(3)
(もしかして、ここに攻略対象が揃ってたりするんじゃないかしら)
お茶会の席に戻って来たエレノアはふと思う。攻略対象は基本的にヒロインと同年代だ。確か、ヒロインが悪役令嬢と同級生なせいで、嫌がらせからの逃げ場がないと姉が言っていたのでエレノアと同い年であろう。
(身分が高くてイケメンな男達を把握しとけば大丈夫そうね)
とりあえず、今はキャロルと話すことに集中しよう。こんなに可愛らしい子とお茶を飲める機会はそうそうないだろうし、これを機会に仲良くなりたい。エレノアは友人が全くといっていいほどいないため、この機会を逃すわけにはいかない。
「ねぇ、キャロルの魔法属性は何なの?あ、私は水よ」
貴族の生まれである者は優劣には差があるが、必ず魔法を使う素質がある。持っている属性によってその人への扱いも変わってきて、どんなに位が低い家の出でも、非常に優秀な魔法の才を持っていれば優遇されるような仕組みとなっている。
「火と、氷です。まだ全然コントロールできてないんですけど」
「二属性持ち!?すごい、すごいわ…。可愛いだけじゃなくて魔法もすごいだなんて」
この世界では基本的に魔法属性は一人一つというのが一般的で、複数の属性を持つ者はあまり見られない。複数の属性を持つ者は、総じて秀でた魔法の才を持っているため、国家で重宝されることが多い。
「そんなことないですよ、まだまだ全然。でも、嬉しいです。ありがとうございます」
そう言ってキャロルは心底嬉しげに笑った。それは、見ているとこっちまで笑顔になってしまうような、心があたたかくなるような笑みで、頬が緩んだ。
「それより、このクッキー美味しいです!やっぱり王城で振る舞われるお菓子は違いますね」
「すごくわかるわ!甘すぎない感じがすごく美味しい。いくらでも食べられちゃう」
美味しそうにクッキーを食べる姿はとても可愛らしくて。何しても可愛いだなんて罪だわ、とエレノアはクッキーを頬張るという令嬢らしからぬ行動をしながら考える。それくらいこのクッキーも美味しく、お茶にすごく合っているわけで。このお茶会でしか食べられないのではと思うと、余計にクッキーを口に運んでしまう。
「お前、それは食べ過ぎだろう。今はお茶会の場だぞ、そんなにクッキーが美味しかったんなら、後でいくらでも食べさせてやるから」
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