プロローグ
初投稿です。
「柚、早くしろ!今すぐ来なかったら置いてくぞ」
「え、湊ちょっと待って!今行くから置いてかないで!」
幼馴染に急かされ、急いで家の玄関を出て、外で待っている湊に合流する。遅刻しないようにとの湊なりの気遣いだろうが、置いていくと言ってくるのは流石に酷くはないだろうか。
「お前のせいで遅刻したらどうすんだよ、俺は無遅刻無欠席を目指してるっていうのに」
そんなに真面目な顔で言うことではないのではないかとも思うが、湊は真面目な顔でそんなことを言い出すような奴だったな、と思い直す。
「お姉ちゃんから話山ほど聞かされて寝るの遅くなったの!それに湊の事情なんて知らないわよ」
だけどあんたが遅刻する時って、私も遅刻するってことだよね?それは嫌だわ、と頬を膨らませる。
「んで、どういう話聞かされたんだ?お前は勝手に遅刻してろ」
「うーんと。なんかね、乙女ゲームで第二王子を攻略しようとしたら悪役令嬢にことごとく邪魔されるんだって。それの愚痴とか聞かされたの。ってひっど!遅刻する時は一緒に!ね?」
「ふーん。はいはい、遅刻する時は一緒に遅刻してやるよ」
聞いてきた割に興味がなさそうな返事をしたのは少しむっとしたが、一緒に遅刻してくれるのは仲間ができたようでなんだか心強い。
「やった!やっぱり持つべきものは良き幼馴染だね」
「お前、ほんっと調子いいよな」
(まぁ、湊ってなんだかんだ遅刻しそうになっても私のこと置いていかないのよね)
湊はどんなに遅刻しそうになっても柚のことを置いて行ったことがない。口は悪いが案外優しいところがあるのだ。
それからは今日の卵焼きは砂糖を入れ過ぎて甘かっただの、星座占いの順位が良かっただのいつもの他愛ない会話を続けながらいつものコンビニを通り過ぎ、角を曲がり交差点に出る。
「湊、あの信号渡ろう!今なら間に合う!」
「おう、どっちが早いか競争な!」
点滅し始めた信号を全速力で駆け抜けようとする。二人同時に走り始め、中間地点に辿り着こうとした瞬間。
ものすごいスピードで走ってきたトラックを避けられず、柚は意識を失った。