日常 〜中編〜
「ごめん、本当にごめんね優也·····」
何度も平謝りしてくる夏鈴を宥めるな言葉を繰り返しながら
僕達は·····見事に学校を遅刻した。
それは、嘔吐物塗れの俺も
長い髪にそれがかかってしまった僕も
一時帰宅してもう一度身支度をする必要性があった。
夏鈴は学級委員長を勤めているのもあり
周りは相当心配され、質問攻めで、あたふたしている様子が
夏鈴は更に容姿もいい、らしく
俺は男共に冷たい視線と嫌味を言われ放題だ。
全く、別々に登校したらこうはならなかっただろう。
溜息が盛れたその時、担任の加藤が僕の前の席に仁王立ちをし、僕を蔑むかの様な視線を向けていた。
「·····っと、遅刻してしまい申し訳なかったです。それも、理由があり·····」その言葉に耳を傾けようともせず、生徒指導室に来い!と一喝されてしまった。
その時また、笑い声や中傷的な言葉がさっきより盛り上がっている中
夏鈴が大声で「やめて!」から注意を促す言葉で周りは沈黙したが舌打ちや冷たい目線も気にせず
僕は生徒指導室に足を運んだ。
あ、夏鈴にさっきのは『ありがとう』と言うべきだったか·····と、ぼうっとしながら歩いていた先に加藤の視線がこちらに威圧感を与えていた。
加藤は徐ろに怒った態度で生徒指導室の戸を乱暴に空け、僕を中へと突き飛ばした。
膝が·····痛てぇ。
何処かにぶつけたか?と、確認する隙すら与えず僕は加藤にぐん、と、胸ぐらを掴み上げられていた。
「てめぇ!!霧崎に何をした!!」
·····うるせぇなぁ、唾飛ぶし、こいつ·····
「優等生の霧崎がテメェみたいな劣等生と遅刻だぁ!?··········ふざけるな!!!」
その理不尽な言葉と、更なる大声と共に俺は壁に叩きつけられた。
「ーーいっ、」
「痛いか?痛いか?お前みたいな劣等生の存在のお陰で俺たちはもっと心痛めてるんだよ。俺が今まで持ってきた中で上玉の優等生と·····てめぇ!!」
大きく加藤が拳をを振りかぶった時に
あぁ、今日はこういう日常のパターンか。と、呆れたように抵抗せず受け入れようとした時
「ちーす!お、加藤今すげぇ音して!!·····何して·····やべぇ、職員室!!校長せんせー!!!」
扉の先には高校入って直ぐ仲良くなった僕のしょうもない話を聞いてくれる隣のクラスの·····友達·····の
佐藤 太陽が居た。
「あ!?·····佐藤·····貴様·····。そんなことしたら退学にするぞ!!?」
少々動揺している加藤に向かい太陽は頭を掻きながら半笑いで
「別にいいっすけど、加藤のがやばくね?証拠にほら、·····優也·····怪我してるじゃねぇか」
流石元ヤン!(?)
威嚇の仕方怖ぇ·····。
加藤はスクッと体勢を整え僕達を睨めつけ
口パクで何かを言って去っていった。
はっとした太陽が僕の傍に駆け寄り『大丈夫か!?』と、体をめちゃくちゃ揺すってきたが·····それされる方が今痛いなんて言えないなぁ·····。
呼吸を整え、俺は太陽に感謝の気持ちを伝えた·····が、太陽は何やら思い詰めた表情で口を開いた。
「なぁ、優也。今日霧崎と遅刻して登校して来たんだろ?·····なんかあったか?」
と、真顔で質問され、遅刻した経緯を話すと太陽は深刻そうな顔で俺の目を見た。
優しく、強く、心配感を持ってくれているようなそんな目で。
「あー!居た!優也!!」
夏鈴の声だ。
探しに来てくれていたのか?
だが、まるで、僕を隠すかのように太陽は夏鈴の目の前に立ち塞がった。
どういうことだ?
「霧崎さん、何がしたいワケ?優也のストーカー?ヤンデレとかそういう奴?」
「えっ·····そんなワケ·····」
「だろうな。じゃあ、優也は俺が面倒みますんで、教室戻ってなよ」
「えっ、でも·····」
「はっきり言う、俺はお前が嫌いだ。心から嫌いだ。失せろ」
涙を堪えて生徒指導室を飛び出す夏鈴を追いかけようとしたが、膝の痛みで瞬時に立ち上がれなかった。
それに、太陽はこんな事を言う奴じゃ·····。
妹思いで優しいコイツが自分より弱いと明確な子にこんな態度を取るなんて·····。
「悪ぃ、えっと、優也と霧崎さん、幼馴染みだっけ·····。その、わりぃな、俺ちょっとあの子苦手でさ·····。取り敢えず保健室行こうぜ、な!」
僕の肩を抱え、運んでくれている太陽の横顔は
いつもニコニコとから茶化した笑顔でなく
唇を噛み締め、今まで見たことの無い怒りの表情を浮かべていた。
それは、僕にあんなことをした加藤のせいなのか
嫌いだと断言した夏鈴へ対してなのかわからない。
だがどうしてここまでしてくれ
高校に入って直ぐに僕の名前を知っていたり·····ましては夏鈴の事まで。
それに、夏鈴は大声が苦手だ。
たまに過呼吸にもなる、が
生徒指導室を出る時の夏鈴の顔は涙を流しながら真顔が一瞬見えた気が·····。
加藤も加藤だ。
どうして、僕にそこまで目を付ける?
·····確かに僕は劣等生かもしれないが·····。
また、僕の心の中の訳の分からない感情が沸々と込み上げる感じがした。
いつもの日常の筈だが、なんだこの違和感は·····。
ーーー許さないから。
ーーー許さないよ。
ーーー許せねぇ。
ーーー許してたまるか。
そして
決して許さないで下さい。




