始まりの街
クロに放り出された私はレンガ造りの街の中央にいた。多分ここが通称始まりの街と言われる場所なんだろう。そう思い辺りを見渡しているとひとりの男の子が私のところにやってくる。
「はじめまして、異邦者さん。ここは始まりの街ゼロです」
「はじめまして、赤名です。ギルドの場所教えてもらっていいかな?」
「はい、ギルドはこの大通りを真っ直ぐ行ったところに龍をモチーフにした看板が出ているのですぐ解ると思います」
「ありがとう」
それだけ告げると男の子は私のあとに出てきたプレイヤーの下へと走っていった。
私は、男の子に教えてもらったギルドを目指しつつ、周囲を観察してみるといくつかわかったことがある。まず人の上にあるカーソルだけど白がNPC、緑がプレイヤーとなっているようだ。
そして、さっきのNPCの男の子の話によると私たちはNPCの中では異邦者とくくられているみたい。
名前は相手に名乗らないと見ることはできないのか、誰の名前も知ることはできなかった。それでも周囲のプレイヤーのみんなは私を見て誰かわかったようで、一定の距離を取られている。まぁ、私の見た目は基本的にどのゲームでも同じだから、どこかのゲームで会ってたらわかるはずだよね。
そう考えているとギルドに到着したので木製の扉を開けて中に入る。
「お邪魔します」
中に入るとそこは地獄とかしていた。今回のベータテストプレイヤ-未成年者だけで100名ということは、成人も同じだけと考えると少なくともその半数はいまこのギルドに来ているということになる。それを5個の受付だけで捌いているのだから仕方のない状況なのかもしれない。
そう思案しつつ気持ち列の短い列に並びながら確認していた。その中でメールの項目が光っていたので確認してみると、ミオさんとクロちゃんからのメールだった。
内容を確認してみるとミオさんからはゲームスタート特典としてとして、1000Gと初心者回復ポーションが配布されたようだ。もう片方のクロさんからはチュートリアルがグダグダになったことによる謝罪とチュートリアル終了特典として、ステータスポイント5ポイントと2000Gが付与された。
(これチュートリアルやっといてよかったというやつかな)
そう思っていると列が進み私の番となった。
「こんにちは、ギルド登録したいのですが」
「はい、それではこちらに手をかざしてください」
「はいはい」
私は受付の人に言われたとおり水晶に手をかざした。するとガチャコンと水晶の前の部分からカードがひとつ出てくる。そのカードを受け取り登録料1000Gを支払う。
「本来はこのあとギルドの説明をするのですが、いまは非常に混み合っております。なのでこちらで確認してください」
「まぁ、仕方ないね。わかりました」
そう答えてギルドの人から冊子を受け取る。すると冊子は光となって消えてしまい「ポン」という音が聞こえてきた。私はこれで終了と考え列から離れる。さっきの情報を得るためにログを確認する。
ログには「ヘルプにギルドが追加されました」と短的に書かれていたのでヘルプを見てみるとギルドの横に「new」と表示されていた。
ギルドのヘルプを確認すると掲示板でクエストを受注し、受付で報告することでクリア扱いとなる。そのため近くにある掲示板に行きクエストを確認することにした。
するとスキルを選んだ時と同じように、クエスト欄の上の方には私のランクにあったクエスト。下の方にはグレーアウトされたクエストがあるから上の方の依頼を受けるのが一番のようだ。
「それじゃ、簡単に南の草原にいるラビットの狩猟とかやってみるかな」
「よう、嬢ちゃん武器も持たずにクエストに行くのは舐めすぎてるんじゃないのか」
「何か用ですかおじさん」
「おじ・・・。まぁそれはいいそれでパッと見た感じ武器は持っていないようだけど大丈夫なのか」
「あぁ、それなら構いませんよ。人間やろうと思えば拳でなんとかなるので」
私はNPCのおじさんに伝えた。おじさんは親切心で言ってくれていると思うので争いの種は作りたくない。おじさんも気になったから聞いてきただけのようで、拳で何とかなると伝えるとそうかと言ってギルドから去っていってしまった。
「さて、外に出る前に武器屋探さないとな」
私は考えつつギルドから外に出て南門へ向けて移動を開始した。ギルドを出て少し南に行ったところで運がいいことに武器屋を見つけた。まだ始まってまもなくということと、チュートリアルをしていない人はお金がなく最初の支給である初心者シリーズで闘うしかない。そういうこともあり武器屋は人が少なかった。
「こんにちは」
「おう、さっきの嬢ちゃんじゃねえか。やっぱり武器が欲しくなったのか」
「おじゃましま・・・」
武器屋に入るとさっきギルドで声をかけてきてくれたおじさんがいたので、そのままUターンしようとしたところでおじさんに腕を掴まれた。それで私は観念しておじさんに正直に話すことにする。その前に確認は重要だ。
「おじさんって武器屋の人だったんですね」
「そうだ、だから嬢ちゃんが武器を持っていなかったからな」
「嬢ちゃんじゃなくて赤名です」
「お、そうか悪かったな。俺はテツだ。見ての通りここで武器を売っている」
テツさんが自己紹介してくれたのでマーカーの隣にテツという名前が表示された。そこまで話したところで今の状況を説明する。
「さっきは嘘つきましたけど武器は装備していますよ」
「そうは言ってもパッと見持ってねぇじゃねぇか」
「職業柄武器を見せびらかしたくないのでここにつけています」
私はテツさんに説明するとスカートを少しあげ剣の先を見せた。するとテツさんも納得したようで話が私の欲しいモノがわかったようだ。
「なるほどな、そういう装備の仕方だとその長さは使いにくいだろう」
「そうなんですよね。武器が長いということもあって抜きにくいんです」
「まぁ、当たり前だわな。それならだ、こういうのはどうだ」
そう言ってテツさんはカウンターの下から柄の短い短剣を1本取り出してくれた。それを手に持って振ってみて感触を確認し、テツさんに了承をとってから太ももに付けみた。その結果、動きの阻害もなく武器の出し入れも断然しやすくなっている。
「テツさん、これほしい。いくら?」
「そうだな、そのサイズはあまり人気がないから1本500Gでどうだ」
「それなら2本買いで。でもなんで人気ないの?」
「毎度有り。基本このサイズだと魔法使いとかの護身用にしか使えないからな。その関係で買う人はそう多くないんだよ」
「そうなんだ。どうりで刃渡りとか色々と小さいわけだね」
「そういうこった。それと今の剣1本は腰にさしとけ。そうしないと門のところでまたつかまるぞ。あとな、武器と防具には耐久値があるから気をつけてな。最初から持ってる剣とかにはそういうのなさそうだけど買った武器とかならあるからな」
「はーい、それじゃ。ありがとうございます。また来ますね」
そう言ってテツさんの店を出て再び南門を目指すことにした。テツさんの助言通り剣を2本とも腰に挿していたので門で無駄に時間を使うことがなかった。
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名前:赤名 Lv:1
装備
武器:護身用ナイフ×2
頭:
胴:初心者の服
腕:
足:初心者のスカート
靴:
アクセサリ:
★STR:11
VIT:11
INT:11
MND:11
★AGI:11
DEX:11
LUC:11
★RES:11
★3D:11
スキル
双剣:Lv1、双剣術:Lv1、STR強化:Lv1、AGI強化:Lv1、3D強化:Lv1
投擲:Lv2、罠:Lv1、危険察知:Lv1、認識阻害:Lv1、収納ボックス:Lv1
残りスキルポイント(0)
残りステータスポイント(5)
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